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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第一章・第二話 魔法使いは迂闊でちょろいんだけど、目的のためには勇者が四天王を倒さなきゃならない
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15 ターシャがおしゃべりになったんだけど、言い方がいちいち怪しくて仕方ない

 そんなわけで、ここからはゲーム的な対応をして行こう。

 改めて気配察知を意識。おそらくスキルは発動しているが、近くに我々3人以外の気配は感じない。

 地図は……ゲーム画面だと左上にミニマップが表示されているんだが、マップ表示スキル、なんてないもんなぁ。使い方が分からないし、とりあえず諦め。

 で、今日の本命スキルがこちら。


「素材探し」


 スキルを使った事で、マップ内の採取できる素材が光を発し、見るだけで分かるようになったはずだ。

 俗に『宝探し系』と呼ばれる盗賊の専用スキルです。


 宝探し系のスキルを上げていくと、素材の他に宝箱や隠し扉、隠し通路なんかも探せるようになったり、あるいは距離が離れていても宝箱のある方向と距離を感知できるようになる。

 今は初歩の素材探ししか使えないが、森の中に突然宝箱が落ちてるわけでもないし、今必要なのは素材だけ。今回はこれで十分だ。


「あっ、ヨゲンシャさんアソコのキノコがヒカってるです!」

「ターシャ、言い方ぁっ!」

「……ツヤツヤとクロビカりしてソリカエってます、ヨゲンシャさんキノコ」

「悪化しすぎだろおい」


 この子、狙ってやってるんじゃないよね?


 ターシャはゲーム内、黒の魔剣士のストーリー内ではかなり無口なキャラで、どこへ行くにも一切しゃべらず黙々とついてくる系だったんだが。なんと言うか、現実ではイキイキしてるなぁ……


 プロローグの不幸を回避したからという理由なら、ミリリアと同じだから元気に明るく生きられて喜ばしいんだけど。

 発言の狙ってる感のせいで、素直に喜べないオレがいる……

 いや、ターシャが狙ってるんじゃなく、ディバイン・セイバーの製作陣が狙ってたんだと思うが! 無口になってたのはモンスターに襲われたショックだったんですね、素はこんなんなんですね! なんで必ず不幸な目にあって無口になるターシャに、こんな変な口調つけたんだ製作陣!


 そんなオレ達のキノコ談義は気に留めず、ベルルーエはターシャに尋ねた。


「え、どこよ?」

「ほらほら、アソコです!」

「?」


 言っても伝わらないベルルーエを見て、ターシャはオレのズボンの方をちら見した後に光を発するキノコまで駆け寄り指をさした。

……なぜ最初、オレの方ちら見したのかな?


「ここ、キノコ、ヒカってる!」

「確かにいやしキノコね。でも光ってないけど?」


 あー、そうか。スキルの効果でオレとターシャからは素材が光って見えてるけど、ベルルーエとはパーティ組んでないからだろうなぁ。

 2チームに分かれてキノコ集めをしているが、ゲームのシステム的に考えるとパーティは朝から変わらずオレとターシャ、オスティンとユティナさんの四名。だからベルルーエにはスキルの恩恵がないわけだ。

 わざわざ解散してパーティ組み替える暇もなく拉致されたからねぇ。


 ともあれ、そんなことをわざわざ教えて機嫌を損ねることもない。


「ターシャは村娘だから、キノコ探しとか得意なんだよ」

「ソウなの?」


 なぜか不思議そうに問うターシャに、自信を持って頷く。


「そうなの。

 キノコはオレ達で集めるから、ベルルーエは冒険者らしくモンスターの警戒を頼むよ」

「ふっふーん、そういうことなら仕方ないわね。

 いいわ、戦いは一流冒険者のあたしに任せなさい!」


 両手で杖を握り、不敵な笑顔で言い放つベルルーエ。

……いくら胸を張っても全然ボリュームがないのが痛々し


「撲殺魔導杖っ!!」

「いだだだだぁぁぁっ!?」




 木の裏や根の隙間など、ターシャと二人でキノコが発する光を頼りに採取していく。

 実際に採ったキノコはサイズにばらつきがあるが、アイテムとしてはおそらくどれも同じいやしキノコとして扱われるんだろうな。

 こういうところはゲームと現実の違いだと思う。

 なんてことを考えていたら、ふいにターシャが小声で叫んだ。


「あっ、ヨゲンシャさんモンスターだよ!」


 木々の向こうに見えたのは、薄汚れた緑の服を着た小さな人型。

 ゲームにおける王道的ザコ、ゴブリン。

 特に警戒した風もなく、手に粗末な棒のようなものを持って二匹で連れ立って歩いている。


「あれはゴブリンだな。ターシャ、静かに──」

「やっとあたしの出番ね、任せておきなさい!」


 静かにするようターシャに言い終わるより早く、自称一流冒険者(ベルルーエ)が大声を放つ。

 もちろんその声はゴブリンにも聞こえたようで、ゴブリン達はこちらに気づくとギャーギャーと声を上げた。

 そんなゴブリン達に向けて杖を向け、ベルルーエは力強く叫ぶ。


「大いなるマナよ、集いて猛り、轟き唸れ!

 我が敵を焼き尽くせ、ファイヤーボール!」


 ベルルーエの呪文に従い、杖の先からバスケットボールくらいの火球が放たれた。

 火球は木々の向こうのゴブリン達に向かって真っすぐ飛んでいき──


「あっ」


 当然の結果として、オレ達とゴブリンとを遮る、手前の木々に当たって爆発を起こした。


「ちょ、なんでそんなとこに木があるのよ!

 どきなさいよ、ゴブリンに呪文が当たらないじゃない!」


 爆発で火が飛び散り、辺りの木々や草に火がつく。

 一言でいうと、火事だ。


「おま、おまえー!

 森の中で火の呪文使う奴があるかー!」

「ううう、うるさいわね! 今消火するわよ!」


 ベルルーエは一度額の汗を拭う仕草をすると、両手で杖を構えた。


「大いなるマナよ、遙かに留め、凍てつき鎮め!

 我が敵を凍え尽くせ、アイスニードル!」


 振り降ろす杖に従い、多数の氷柱が斜めに降り注ぐ。

 燃える木々や地面に次々に突き刺さった氷柱だが。


「ヒ、キエてないヨ?」


 無慈悲にも、ターシャの言った通り消火活動としてはさしたる効果を発揮せず魔法は終わった。


 燃えた木に氷柱が刺さったところで、刺さった個所は冷えて火が消えるとしても、木全体の火が消えたりはしない。

 うん、当たり前っちゃ当たり前だよな?


「そんな、あたしの氷柱が通じないなんて。

 なんて強力な火の呪文なの、流石あたし!」

「あほか!」


 この状況で自分を褒められる胆力には恐れ入るが、消火が遅れると火はどんどん広がってしまう。


「攻撃呪文とかいいから、単純に大量に水出してぶっかけろ!」

「そんな、ただ水を出すだけなんてそんなの魔法じゃないわ、かっこ悪いじゃない!」

「でなきゃ焼け死ぬだろうが、死にたくなけりゃやれっての!」


 オレの言葉に思わず口をつぐむと、ベルルーエはそっと視線を斜め下にずらし


「大量の水を出すなんてこと、呪文を知らないからできないわ」

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