表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第一話 盗賊はレベル1じゃなくなったんだけど、強敵ひしめく武闘大会は一筋縄ではいかない
150/234

140 開催国推薦枠のシード選手は開催国推薦枠選手という名前なんだけど、その正体は誰にもわからない

 試合は、終始一方的な展開だった。

 突き込まれる槍を軽く打ち払い、薙ぎ払われる刃も軽々と真上に跳ね上げ、無防備な体当たりさえも片手で受け止める始末。

 その全てを、私は全力の半分も出してませんよとばかりに、開催国推薦枠選手はその場から一歩も動かぬまま無造作にやってのけた。


 赤子をあしらうように相手選手を圧倒する、開催国推薦枠選手。

 相手が出した長時間の溜めからの必殺技を、最後まで一歩も足を動かさず棒立ちで迎え、一太刀で斬り飛ばしてみせる。


 万策尽きた対戦相手はがっくりと項垂れると、彼我の実力差を認め大人しく降参して短い試合が決着。

 スタッフの声が、開催国推薦枠選手の勝利を告げ。

 ここに、第二回戦の8試合全てが終了したのだった。



「フェイルアードにあれほどの強者が居たとは、驚きですね」

「……あー、うん」


 セーナの言う通り、あれほどの強者こと開催国推薦枠選手さんが、今フェイルアードに滞在していることについては驚いた。


 うん、何で試合に出てんの? 

 オレの助言をちゃんと聞いたなら、南の方を回って塔の攻略してる頃じゃないの?


「ハルトさんは、やはり預言であの選手の事は分かってたのですか?」

「いや、まぁ。

 知ってるけど、ちょっと、預言ではない…かな?」

「なるほど。時々ハルトさんがおっしゃる、イレギュラーというやつですね」

「うん、まあそれで」


 イレギュラーと言えば、確かにイレギュラーだなぁ。

 振りぬいた聖剣を天に掲げて歓声に応える選手を眺めつつ、どうしてこうなってんのか考える。


 確かゲームでは、開催国推薦枠のシード選手は騎士団長か何かだったよな?

 トーナメント表の関係で主人公と戦うことはないので、名前とか全然覚えてないけど……



「ハルトなら、あいつと試合になっても勝てるわよね」

「いやぁ、流石にあいつ倒すのは無理だろ」


 ポップコーン片手に期待に満ちた目でベルが訪ねてくるが、こちとらモブの盗賊だ。

 聖剣持った主人公様と戦って勝てるわけが……向こうのレベル次第かな?


 47レベルのステータスがあれば、ゲームだったら勝てるだろう。

 HPと攻撃力と防御力の全てが大きく上回ってれば、スキルの差があってもおそらく負けることはない。

 オスティンのレベル、どう頑張ってもこの短期間では20そこそこが限界だと思う。オレの約半分だな。


 でも現実だと、剣で目を突かれても防御力があれば無傷、なんてことはないからなぁ……

 こちとら貧相な布装備、聖剣の一撃が当たれば服ごと腕ぐらいぶった切られるだろう。

 持っている装備品の質が違いすぎます!

 真面目に倒すことを考えるなら、攻撃は全て避けたうえでヒットアンドアウェイになるかな。

 うん、盗賊っぽい。毒とか油とか使えるものは何でも使おう。



 そんなことを考えている間に試合後の片づけが終わり、スタッフが出てきてアナウンスを始めた。


「先ほどの試合を持って、第二回戦の8試合は全て終了しました。

 それではこれより、第三回戦以降の対戦トーナメント表を発表します」


 試合が終わって好き勝手にざわついていた観客達が、アナウンスの内容に盛り上がりを見せる。

 トーナメント表の発表かぁ……本来なら一回戦より前に発表されているもんなのに、随分とここまで引っ張ったな。


「兄上と試合、兄上と試合、兄上と試合……」

「いや、アズサと戦うことは絶対ないからな?」


 横でぶつぶつと祈りの声をあげるアズサに小声で突っ込むが、どうやら聞こえてないようだ。

 でもまぁ、順調に勝ち進めば決勝含め残り3試合。優勝を目指すアズサにとっては、トーナメントの組み合わせは重要なことだよな。

 アズサが楽に勝ち進めるよう、幸運をお祈りしてやろう。


「皆さま、御覧ください。

 第97回、武闘大会。勝ち残った8名の選手が優勝を競い合う、そのトーナメント表はこちらです!」




ケッツィ   ─┐

        ├─┐

フェービン  ─┘ │

          ├─┐

アズサ    ─┐ │ │

        ├─┘ │

ハルト    ─┘   │

            ├─【 優勝 】

ガンゼイオー ─┐   │

        ├─┐ │

ガルネーズ  ─┘ │ │

          ├─┘

シレーン   ─┐ │

        ├─┘

開催国推薦枠 ─┘




「いぃぃやっったぁぁぁーっ!」


 トーナメント表を目にしたアズサが、オレのすぐ横で立ち上がってガッツポーズ。


 どうやら、次の試合の対戦相手は、隣で喜びを爆発させている『自称妹』の侍少女のようだ。


 トーナメント表は、等幅フォント前提で作っています。

 スマホ(体裁が崩れている方)のために、改めて対戦表を掲載。


第一試合 ケッツィ=デルシオ VS フェービン=アルメイダ


第二試合 アズサ=スズナリ VS ハルト


第三試合 ガンゼイオー VS ガルネーズ 


第四試合 シレーン VS 開催国推薦枠


 このうち、フェービン、ガルネーズ、開催国推薦枠の3名がシード選手。

 もう一名のシード選手(前年3位)は、二回戦でアズサと対戦し敗れました。

 なお、敗者復活はありません(決勝戦前に、3位決定戦はあり)



【 公式賭博 優勝予想 人気順 】


ガルネーズ > フェービン >> 開催国推薦枠≒アズサ > シレーン > ガンゼイオー=ケッツィ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> ハルト



 開催国推薦枠選手以外は、予選突破時(シード選手は参加申し込み時)のレベルが公開されています。

 毎年恒例で、開催国推薦枠のシード選手のみレベル非公開です(国家機密に関わる可能性があるため。過去には他国で宮廷魔導士や王族が出た事もある)

 公開レベル順で言えば、トップ3は フェービン(32)>ガルネーズ(31)>ガンゼイオー(30) となります。

……が、賭けに参加する民衆としても、同じ無名ならやっぱりハゲより美少女を応援したくなるもの。

 なのでアズサ(20)は、レベルが程々な割に賭博人気が高くなっています。

 また、二回戦でレベルが上の第三シードに勝利したため、賭けを抜きにした人気もすごいことになっています。


 なるか、侍ガールの三回戦突破。

 相手は今大会最低レベルにして最高レベル、『ゾンビ』の二つ名を持つ47レベルの盗賊A。


 頑張れ侍ガール! 負けるなぼくらの侍ガール!!(ふらぐっぽい)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ