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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第一章・第二話 魔法使いは迂闊でちょろいんだけど、目的のためには勇者が四天王を倒さなきゃならない
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14 ウッディ・コヤマのファンじゃないんだけど、魔法使いさんが怖くて言い出せない


□―――――――――――――――□


 【 ウッディ・バンブー戦争 】


   ~ クエスト 開始 ~


□―――――――――――――――□



「まずいことになったなぁ……」


 木々の隙間から見える青空を見上げ、ためいきと共に声を漏らす。


「ん、何か言ったかしら?」

「いいや、何でもないです」


 こちらを振り向いて問いかけてきたのは、三角帽子がトレードマークの女魔法使い、ベルルーエだ。

 今朝オスティンと共に行った冒険者ギルドで出会った、メインヒロイン(メイデン)の一人である。


 オレの返事に、あっそうとばかりに前を向き直り、また杖と赤い髪を揺らしながら元気良く歩いて行く。

 ローブ越しにも辛うじてラインの分かる、きゅっとしたお尻がふりふりされててエロ可愛いです。

 その姿(お尻)に視線を引き寄せられつつ後ろを歩いていると、もう一人の同行者が服の裾を引っ張りながら小声で問いかけてきた。


「ヨゲンシャさん、ヨゲンシャさん。

 ナニがゲンキないの?」


 やや怪しい発言で訪ねてきたのは、この場に居る唯一のパーティメンバー、ターシャ。

 ミリリア救出後、モンスターに襲われる奴隷商人の馬車から助けた少女である。


 ターシャは褐色の肌に青い髪の、異国訛り(カタコト)のメイデンだ。

 南国の装束らしい、踊り子のような布地の少ない服を身に着けて、くるくるとよく変わる表情でオレの事を斜め下から見上げてくる。

 手足も身体も細く小さく、自然とオレが守らなければと思わせてくれるターシャ。

 身長はメイデン内で2番目に低く、見た目は若干幼女な美少女。年齢は、もちろん十八才以上です。


……エロゲにおける絶対的なルールとして、出てくるヒロインは全員十八才以上なんです。例えどれほど幼い容姿をしていようとも、絶対法則に則り十八才以上なんです。ただし具体的な年齢は語られない場合が多い、ユーザーの想像の余地って大事だよね!


 こほん。少し脱線しました。

 本来はモンスターに襲われてターシャ以外は全滅、ターシャも片腕と片目を失い瀕死のところを通りかかった魔剣士に助けられるというのが黒の初期イベントなのだが。

 ミリリアを助けたオレはユティナさんと共に早馬で急行、何とかモンスターの襲撃に間に合ったことでターシャや商人達を救出することができた。

 オレは命を助けたお礼として、何人も居た美少女奴隷の中からターシャを貰い受けたのである。一番小柄で発育が悪かったからか、商人もターシャなら歓迎とばかりに快く送り出してくれた。

……もしかしたら、王城の人間であるユティナさんが居るのが後ろ暗くて怖いから早く逃げ出したかっただけかもしれない。でも深くは考えないでおこう、せっかく命を拾ったのだから誠実に生きてください。


 一緒に連れ歩いているターシャだが、奴隷として扱うつもりはもちろんない。

 ターシャは借金のかたに奴隷となっただけの少女であり、大事なメイデンだ。当初のイベントはクリア(ぶちこわ)して安全を確保できたので、今のオスティン旅立ちのごたごたが落ち着いたら改めて今後どうしたいか考えたいね。

 あるいは、オスティンのお供につけて送り出すのもいいなぁ。あいつなら酷い事しないだろうし、ターシャ自身も回復役として働いてくれる。

 万が一、オスティンが僧侶を仲間にできなかったら相談してみようっと。


 ともあれ、今は目の前のベルルーエの事である。

 三人で森の中を歩きながら、オレはちょっとだけターシャに気持ちを明かした。


「ベルルーエとオスティンを組ませたかったのに、なんでこうなっちゃってるかなぁと思ってな」


 一周目だと序盤の資金繰りは苦しいものの、ベルルーエは戦闘においてラスボス戦までずっとメイン火力として貢献してくれる。

 それにメイデンだから、絆を結んで育めば、聖剣とオスティン自身を強化する事にも繋がっていく。

 だから、よくわからない突発のイベントとは言え、しっかりオスティンとベルルーエが組んで仲良くなって欲しかったんだが……


 なお、ゲーム用語で『一周目』というと、主に初回プレイの時の事を指している。

 RPGでは、一回クリアした後、キャラの強さやアイテム等を持ったまま『つよくてニューゲーム』が出来るものが多い。そういう引継ぎとか追加要素のない、純粋な初期状態って事。

 反対に二周目と言ったら、引継ぎ有りの状態を指します。最初から強い、最初から金持ち、序盤の負けイベントを力押しで蹴破れるような状態ですな。

 ディバイン・セイバーにも、一周目ではどうしても勝てないような序盤の敵とか色々居ます。序盤から行ける超敵が強いダンジョンとかね。

 引継ぎと同時に、主人公だけはレベルを自由に設定可能で、一周目より低い1レベルスタートなんて事も出来ちゃう。こうすることで初めて行けるイベントなんかもあったり。


 なんて頭の中で余計な脱線をしつつ。

 ちょっと困った現状をターシャに言ったら、ターシャは手を挙げて元気よく答えてくれた。


「ヨゲンシャさん、べるるーえさんのおっぱいぺったんこイったから!」

「そうなんだけども!」


 思わずぺったんこって言っちゃったけども!

 洞窟で抱き着かれたミリリアの胸と比べちゃったりもしたけども!


「というか微妙に怪しい表現多くないターシャ?

 今思い出したが、そもそもオレの手が胸に触れたのも酒場でターシャが突然腕を引っ張ったせいだよな?」

「おっぱいタッチ、ヨゲンシャさんシアワセ」

「いやそうじゃないんだ、シアワセは否定しきれないけれどもそうじゃなくってね!

 こういうのは本人の同意とその後のストーリーにおける影響が――」


「ちょっとあんた達、何騒いでるの!

 そんなんじゃあのバンブー信者の戦士に勝てないでしょ、きびきびやりなさい!」

「ぅへーい……」「ハーイ!」


 ちょっとご機嫌斜めになったベルルーエにそれぞれ返事をし、改めて周囲の森を見回す。


 今いるこの場所は、フェイルアードから南西に広がる初心者向けの森。

『いやしキノコ』の採取のため、ギルドで受けたクエストを3人で実行中である。



 なんでこんなとこで採取クエストをしているかと言えば、完全に巻き込まれたからだ。


『司会……それって、芸人なの?』

『バンブー・コサトの歌は、本当に素晴らしいものでした』


 と言うオスティン&ユティナさんは、女戦士のネシータと共に同じクエストを受けてこの森に来ている。

 一方オレは、


『いきなりあんな事しておいて、その、責任取りなさいよね!』


と言う真っ赤な顔の般若(ベルルーエ)に首根っこ掴まれて、こちらのチームに加えられた。

 ターシャ? ウッディ・コヤマもバンブー・コサトも知らなかったので、とりあえずこっちに入ってもらいました。一人だけ置いて行くわけいかないし、オレがベルルーエと二人きりとか絶対やばい、無理です無理。

 なので、オレもターシャもウッディ・コヤマのファンでも何でもないんだけど、ベルルーエのチームです。はい。


 しっかし、ターシャが緩衝材とは言え、あのベルルーエと一緒にクエストだもんなぁ……

 そう思うとため息が漏れてしまい、先ほどの話につながるわけだ。



「意外とキノコ見つからないわね?」

「そりゃぁ道沿いは歩きやすいから通る人が多いし、歩いてて素材を見つければ拾ってるだろうからな。

 もうちょっと奥に行かないと駄目だろ」

「詳しくて頼りになるじゃない……じゃなくて、もっと早く言ってよね!

 見たところ盗賊みたいだし、キノコ探しはあんたに任せるからね」

「分かったよ。

 ギルドのクエストなんだし、受けたからにはしっかり稼ごう」

「ハーイ、たーしゃもガンバります!」


 勝負の時間は午後の鐘3つまでとなっている。

 勝敗は単純に、いやしキノコを多く集めた方の勝ちだ。

 クエストとしてギルドに納品すれば、店でNPCに売るより高く買ってくれる。それに経験値やらギルドのランクやら色々メリットはあるので、時間は少しもったいないが一回くらいは良いだろう。

 この森なら強いモンスターも居ないしな。

「たーしゃ、キノコ、ない……」


(じっと股間越しに何もない地面を見つめる)


「股間を見つめてるのか地面を見つめてるのか、それが問題だ……


 いやそうじゃないな、問題なのはターシャの発言内容だった」

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