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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第一話 盗賊はレベル1じゃなくなったんだけど、強敵ひしめく武闘大会は一筋縄ではいかない
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139 盗賊の試合は終わったんだけど、二回戦の全試合はまだ終わっていない

 とてもゲーム的な説明になるが。ちょっと聞いて欲しい。


 戦闘で得られる経験値は、キャラと敵のレベル差により補正が入る。

 簡単に言えば、キャラが強いほど経験値が減り、キャラの方が弱ければ増える。


 具体的には、キャラの方が敵より6レベル以上高ければ、経験値は0になる。4~5レベル差で-50%(半分)だ。

 反対に、キャラの方が敵より5レベル低ければ+50%、10レベル以上低ければ+100%(2倍)だ。


 この経験値増加の補正だが、雑魚敵の場合はどれほどレベル差があっても+100%が上限。

 だから、経験値の獲得量だけで言えば、ちょうど10レベル上の敵を狩りまくるのが一番多い。

 ただしボス戦にはこの上限がなく、20レベル差で+200%、以後10刻みで増えて、最大50レベル差で+500%だ。



 レベルアップするために必要な経験値は、たしか累計で次のレベルの値の4乗が必要だったはず。

 2レベルになるには、2の4乗で16点。3レベルなら81点、10レベルなら一気に増えて1万点だ。

 100レベルなら、1億点ですね。


 この計算式に従うと、0から1レベルになるには1点の経験値が必要となる。つまり、経験値0点ならレベル0のはずだ。

 だが実際には、経験値が0点のキャラでもレベルは1となっており──


 開発会社が公式サイトで紹介しているくらいの、公然の裏技だったりするのだが。

 レベル1・経験値0の時に限り、戦闘で得られる経験値が10倍になるというボーナス仕様が存在する。

 これまで戦闘を全く経験した事のない者が、初めて戦闘を経験する事で、飛躍的に成長する――というのを表した、という説明(言い訳)がインタビューで語られた。



 ここまで説明すれば、勘のいい人なら気づくだろう。

 じゃあ、レベル1(経験値0)の状態で、強いボスを倒せばお得なんじゃね?と。


 これが『弱くてニューゲーム最適攻略チャート』のキーアクションなのだ。



 普通に戦えば、レベル1の状態で強敵を倒す事はもちろん不可能。

 二周目以降で仲間になったキャラなら、高レベルに育った仲間にボスを倒してもらうことが可能だが、弱くてニューゲームでは仲間も弱い。

 では、どうすれば1レベルで強いボスを倒せばいいのか?

 答えは『パラメータを必要としない特殊戦闘で倒す』だ。



 ゲーム開始直後のレベル1で戦えて、特殊戦闘の高レベルボスなんているのー?

 はい、愛の大精霊でございます!


――というわけで、レベル1・経験値0の状態でレベル50の愛の大精霊を倒したオレは、レベル補正や10倍ボーナスによって一気に47レベルになりましたとさ。



「は、はああああっ!?」


 流石に、直接的に数値で説明するのは控えたけれど。

 レベル1の弱い状態で強敵を倒したことで一気にレベルアップしましたー、という雑な説明を、インタビュー後に改めて仲間達にしたところ、ベルが絶叫した。


「な、な、な、なんなのよそれぇ!

 47って、47って……そんなの、47レベルじゃない!」


 うん、47レベルだよ?


「それほどの高レベルゆえの、一撃必殺……卑猥な変質者が、随分と危険な力を身に着けたものですね」


 ユティナさん、それできれば聞こえないように言ってくれますー?


 ひっそりと後ろに佇む彼女はミリリアの代理とのこと、それを証明するかのようにミリリアの絵が描かれた大きな布を掲げ持っている。

 こうすることで、ミリリアが参加している気持ちになれるらしい。

 なるほど、すごくいいと思います。


 ところでその布、初回限定特典の特製ミリリア添い寝シーツ、とかですかね?

 すごく欲しいです、すっごく欲しいです! オレにもください!

 詳細は、後程交渉いたしましょう。推しのレアグッズに糸目は付けません、是非よろしくお願いします。


「ちなみに私は、26レベルですね」


 オレと一緒に愛の試練に行ったセーナが、澄ました顔をしつつもちょっと得意げな声で申告した。


 セーナは10倍ボーナスこそなかったものの、ボスとのレベル差による補正はオレと同じ。

 40レベル以上差があったので、+400%でした。つまり合計で5倍。

 これにより大量の経験値を得て、7レベルくらいから一気に26まで上がっていた。


「うううぅ、せっかくあたし、毎日頑張ってるのにぃ。

 なんでハルトが、あたしよりずっと強くなっちゃうのよぉぉ……」

「あー。なんか、すまん?」

「ううー!

 なんであたしを修行に連れてってくれなかったのよー、もーー!」


 ベルにぽかぽかと殴られるが、本当に痛くもかゆくもない。

 これがレベルの力……!


「ヨゲンシャさん、つよつよー?」

「そうだぞターシャ、つよつよになったんだぞー」

「スゴーい! ガチガチで、アクマしい!」

「多分それ、悪魔じゃなくて逞しい、な?」


 珍しく卑猥なことを言わないターシャの頭を撫でる。

 いつもこうなら安心なんだがなぁ。


「くふふふふ、うちの旦那様はやるもんだねぇ。

 一晩見ないうちに、すっかり男前になって。惚れ直してしまうよ!」

「ディーア、そう言いながらなんで髪の毛切ろうとしてるんだ?」

「成長前後の違いを、ちょっと人体実験しようかと」

「おいやめろ、何する気か知らんがとりあえずやめろ!」


 毛先を少しとかではなく、根元からじょっきりとハサミで切り落とそうとするディーアから頭を守る。

 やめろ、軽く10円ハゲになるじゃないか!

……この世界だと10Gハゲかな? どちらにせよお断りです。


「今の兄上を斬るには、いかがすれば良いか……」

「戦わないからな?

 オレはアズサと戦わないから、そんなこと考えなくていいからな」

「盗賊の身であの膂力ならば、その身のこなしはいかほどか。

 ここはやはり居合による後の先を取り、一撃で仕留めるしかおりませぬな」

「ほんと、ぶつぶつ言いながら兄の殺し方考えるのやめようね、アズサ?」


 いや、兄なのかどうかは分からないんだけど。

 でも盗賊A(オレ)の初期スキルが刀だったし、ひょっとしたら本当に兄だったのかもなぁ、とも思ってる。


 とりあえず、アズサと戦うことは絶対にないので物騒な話はやめて欲しいです。

 あと、一応まだ対戦相手なのに、ほんとナチュラルに居るよね。もはや仲間の一人だよね。




 オレの試合が終わったので、昨日頼んだ作業や実験の続きをするために帰宅するディーアを見送る。


……おいこら、その髪の毛どこで手に入れたんだ?

 床に落ちてたの拾っただけ? 見ず知らずの他人を実験台にするんじゃありません。という会話があったとか何とか。


 その後はアズサも交え5人でわいわいやっている内に、いつの間にか一時間過ぎていたようで。

 オレの試合後は空席も見えていた観客席も、気づけば全て埋まっている。


 スタッフの案内に従い、第八試合に出場する二人の選手が舞台へ入場してきた。


 一人は、銀の鎧を着て十字槍を持った、女騎士風の槍使い。

 なんかどっかで見たような気もするので、予選後の待合室に居たのかもしれない。

 名前はフリセアさん、知らない名前です。モブですね。


 続く、もう一人は――


「続いての入場は、今大会の第四シード。

 開催国推薦枠選手です!」


「ふぶぅぅっ!?」


 スタッフの声に、軽く片手を挙げながら出てきたのは。

 緑のフルフェイスヘルムを被り、腰に聖剣(・・)を下げた細身の青年。


「な、な、な、なんであいつが!?」


「ハルト、知り合いなの?」


 驚くオレに、ベルは全く気付かぬ様子で問うてくる。


「ヨゲンシャさん、おホモダチ?」

「ハルトさんに男性の知り合いが……!?」


 ターシャはすごく駄目発言です、絶対に止めましょう。エロゲーとしても駄目発言です、ユーザーからクレームがきちゃいます!

 あとセーナ、なんでそこで驚くんだ。オレにだって男の知り合いくらい、えっと……4人くらいいるぞ!(ダブル主人公と旅芸人、以上)



 開催国推薦枠選手は、指示された開始場所まで歩みを進めると、ヘルムに完全に隠された顔をはっきりとこちらに向けて。

 すらりと腰の聖剣を引き抜くと、まっすぐオレに向けて突き付けてきた。



……え?

 まさか、息の根止めます宣言じゃないよね?


おうさま「わし知り合いにカウントされてない……しょぼーん」

ぴえろ 「ぶひゃっ、ぶひゃひゃひゃひゃ、あーっひゃっひゃひゃひゃ!

    ……えっ、芸人の人数足りなくね? 誰かハブられてね?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新乙 なるほど~ 初期状態でパートナーとパンツ脱がしたり嗅いだり履かせたり うらやまけしからん!!事をしたらレベルアップ!! 私も体験したいわ
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