131 辱めを受けた僧侶の怒りが留まる事を知らないんだけど、自分に責任のない盗賊はしらばっくれる事をやめない
バトルの終わった、神殿の一室。
三人のパンツの妖精がBGMを演奏する中(実際に演奏してるのはハニワ以外の二人)、三角形の舞台の上で復活したボス妖精が両手を広げて笑みを浮かべた。
「いやぁ、素晴らしいい。
こんなに晴れ晴れとしたパンツは、新品の気分が体にジャストフィットした時のようだよよ!」
「それそこまで珍しくない上に逆だろ逆」
嬉しそうに叫ぶ妖精に突っ込みつつ。
ボスを倒して試練をクリアした事実に、まずは安堵と高揚感が止まらない。
「さあ、この後の予定もあるんでな。さっさと報酬下さい!」
ボスをバトルで倒すことが重要だったが、この後のクリア報酬も同じくらい重要なのだ。
さあ報酬プリーズ!
「やだだ」
「……は?」
オレの要求に、ボスこと妖精は即答で拒否りやがった。
え、なんで?
「そんな味気ない対応されたらつまんないい!
数十年ぶりの試練突破なんだし、もっと心を込めて! 感動的に! 演出してくださいい!」
「つまんないって、お前子供かよ!」
「子供じゃなくてキッズだもんん!」
「それ一緒!」
「やだいやだい、もっとちゃんと構ってて!」
ぎゃーぎゃー言い合うオレとボス。
そのオレの後ろで、静かにセーナが囁いた。
「これ以上の辱めを受けるくらいならば、この神殿ごと破壊します」
「……え、なんでそれをオレに向けて言うの?」
「破壊します?」
「いや疑問形じゃなくって!
あっち、あっちに言って下さい!」
なんとなくオレを破壊しようとしてるように聞こえて背筋を震わせつつ、身体ごと脇に避けて宙に浮かぶボスを指し示す。
セーナはそちらを向いて、小さく一つ頷くと
「あなたも、ハルトさんのついでに破壊しますか?」
「なんであっちがついでなの!?」
セーナの理不尽に、思わず声を荒げるオレ。
そんなオレを一瞥し、変わらぬ静かな声でセーナは囁いた。
「この神殿に恨みは……たくさんありますが。
基本的に、私を辱めたのはハルトさんですよね?」
「いやいやいやいや、そんなことは――」
最初の呪文。
入り口での愛の宣誓。
三つの試練。
最後のボス戦。
「……そ、そんなこと、ない、と思う…よ?」
「たくさんありました」
セーナから目を反らしつつ必死で言い募るオレを、一言のもとにばっさりと斬り捨てつつ。
「そういうわけで、速やかに進めてください。
破壊を?」
「ひいいいい」
無表情のままホラーちっくにぐりんと顔を向けられたボスは、悲鳴とともに事後処理を始めたのだった。
「まず、君たちが今履いている光のブーメランと光の紐は、それぞれ持ってかえってくれて構わないい!」
「いや、それどっちもパンツだろ?」
「そうとも言うかもしれないねね!」
オレの履いているブーメランパンツと、セーナの履いて……あれ、履いてない?
いつの間にやら、セーナのスカートの中から溢れる光がなくなっていた。
思わずしゃがみこんで確認しそうになるオレの顔面を、セーナの右手がわしづかみにする。
「もちろん、履き替えました。
なんなんですか、もう。パンツをお互いに履かせあうとか!」
「い、いや、オレに言われても」
パンツを履き替えた事でテンションも戻ったのか、改めて酷いイベント内容にセーナが怒りを露わにする。
いやでも、それ考えたの開発会社だから、オレ悪くないから!
この世界的に考えても、パンツを履かせ合うのを要求したのは目の前にいる愛の大精霊だから、オレ悪くないから!
あとちょっと顔面ひしゃげそうです、セーナさん握力意外と強いですね?
とか思ってたら解放してくれました。ふう、痛かった……不用意にしゃがみこむのは気を付けたいと思います。
「こんなこと、誰にも、絶対に言えませんよ。
これじゃぁもう、よそにはお嫁に行けませんよ、本当に」
そこまで言うと、一度言葉を切って。
近寄ってきたセーナが、俯いたままオレの服を摘まむと。
耳元に唇を寄せ、とても小さな声で囁いた。
「ですから、ハルトさんが、しっかりと責任取ってくださるんですよね?」
「……え、あの、よくきこえなかったなあ」
「(にこっ★)」
「あ、まってごめんなさちょとあああああああ」
えろぎゃぐパート、終了です!