127 盗賊はこの世界で初めて戦闘をするんだけど、バトルのコマンドがパンツしかない
ご愛読感謝の一週間連続更新、開催中です☆
……あれ、一週間過ぎてる?
「女神よ、大いなる慈悲を与えたまえ!
彷徨う魂に安らぎあれ、ホーリーボルト!」
流れるような詠唱から、セーナが光の魔法を放つ。
狙われた妖精は、防ぐそぶりも避けるそぶりもなく、迫る魔法を顔面で受けた。
「ははは、効かん効かんん!
私には、直接的な攻撃は一切効かんのだよよ!」
「それは、自分で試して判断します!」
効かないことも想定していたのだろう、魔法を追って迫っていたセーナがメイスを振り下ろす。
身構えもせず脇腹に一撃を受ける妖精、しかしその身体は微動だにしない。
「おやおや、あまりに威力がなくて、かゆいとさえ感じられないんだよよ。
おっぱいでパンツを履ける僧侶は、意中の相手を振り向かせるために、もう少し色気のあるパンツを履いた方がいいんじゃないかなな?」
「ななっ……!?」
反撃とばかりにぺらりとスカートめくりをかました妖精の精神攻撃に、セーナが怯む。
くっ、こっちからは様子が見えなかった……!
自分の精神攻撃の効き目に笑顔を浮かべると、妖精は自分のふんどしの中に手を突っ込んで、そこからパンツを取り出した。
ふんどしから、パンツである。サイズとか容量とか細かいことを気にしてはいけない、きっと四次元ふんどしなんだろう。
「セーナ、十歳のパンツ、召喚!
なるほど、花柄」
「わぁああああーっ!?
な、なんでそんなものをあなたが持ってるんですか!!」
「そりゃぁ、私が愛の」
「そういうのはどうでもいいですから!」
自分で問いを発しながら、答える妖精も無視してパンツをひったくるセーナ。
ちょっと寂しげな表情の妖精が可愛いが、それはさておき。
「セーナ、一度戻ってこい」
「……はい」
試しに攻撃してみて、殴っても魔法でもダメージがないことは理解しできただろう。
奪い取った自分のパンツを急いで懐にしまいつつ、セーナがこちらに戻ってくる。
この戦いは特殊戦闘なのだ。ここでのルールに従わなければ、ボスを倒すことはできない。
「相手は、普通の存在じゃないからな。
普通の戦い方じゃ、全くダメージは入らないんだよ」
そう言いながら、オレはこのバトルフィールドの三方に立つパンツの妖精達を見た。
「そう言われましても、その、普通じゃない戦い方と言うのが……」
オレの様子に、セーナも嫌そうにパンツの妖精達を見る。
彼女らは、それぞれがプラカードを持っていた。
『パンツを脱ぐ』
『パンツを脱がせる』
『パンツを履かせる』
この3つである。
「ああ、セーナの考える通りさ。
パンツの妖精達の持つプラカードが、攻略のヒントなんだよ」
「嫌です!」
セーナが、全力で攻略方法を否定する。
いやそんな、嫌って言われましても……
「なんなんですか、パンツを脱ぐとか脱がせるとか!
しかも三択で、脱いだ後に履くがないじゃないですか!
なんで履かせるだけで、自分で履くがないんですか!」
「あー、うん。
なんでだろうね」
理不尽に怒るセーナに、どうしようもなく生返事を返す。
なんでって言われても……エロゲーだからなぁ……としか?
実際、ここの攻略に『自分でパンツを履く』は必要ないことだからねぇ。
いや、恥じらいながらパンツを履くセーナも、見たいと言えば見たいですけど!
「でも、ここであいつを倒さないと、いつまでも終わらないし帰れないんだよ」
「それは……分かってますけど」
オレ達が話す様子を、腕を組みにやにやしながら眺めているボス。
今のところ次なるパンツを取り出す様子はないが、見つめ合っていても戦闘は終わらない。
「そういうわけで、セーナ」
「うう……なんでこんなことになってるんですか、もぉ……」
ちょっと泣きそうなセーナの表情に萌え――胸が痛いが、ここでボスを倒さないといつまでも試練が終わらないのも確かだ。
それはセーナも分かっているのか、ぶつぶつ言いながらも今度は拒絶の言葉がない。
「頼む、あいつを倒してここをクリアするために、オレに協力してくれ」
オレはぐずるセーナの手を取り、そっと一枚の布切れを握らせた。
パンツである。
「これは――」
もっと具体的に言うと、淡く白く光り輝く、男物のブーメランパンツである。
「あのボスを倒すために必要なアイテムだ」
言いながら、オレは手にしたもう一枚のパンツを見せる。
こちらは、同色に輝く、女物の紐パンだ。
「なんで、なんでパンツであいつが倒せるんですか……?」
「そういうものなんだよ、セーナ。
考えちゃ駄目だ、感じるんだ!」
ここは愛の神殿、ディバイン・セイバー三大バカイベントの一つなんだ!
理屈で考えたら、多分大敗を喫するんだよ!
「考えずに感情に任せたら、これを破り捨ててハルトさんを殴り飛ばして何もかも破壊し尽くしそうです」
「わーお過激」
据わった目のセーナに一歩引きつつ。
それでも必要なことなので、ブーメランパンツを握ったセーナの手を包み込む。
「だが、頼む。
オレは何としてもここをクリアし、武闘大会の次の試合に勝ってエリクサーを手に入れたいんだ。クミちゃんを助けるために。
そのために、セーナに協力してもらいたい。これはセーナにしか頼めないことなんだ」
「……」
オレが握る自分の手を、しばし無言で見つめ。
セーナは、ぽつりと呟いた。
「……どうして、ここへ来るのに、私を誘ったのですか?」
「え?」
すでにもう、一週間過ぎてますけれども!
今、とっても良いとこなので!
毎日更新、明日まで続けます!!