125 第三試練を突破してご機嫌の僧侶なんだけど、最終試練にたどり着いた途端にため息が止まらない
「さすがはハルトさんです。
ハニワなど物ともせず、圧勝でしたね」
「言わないで下さい……言わないで……」
それまでの無表情や不機嫌さから一転、どこかご機嫌なセーナ。
オレは恥ずかしさと居たたまれなさに言葉少なに顔を覆い、表情を見られぬよう足早に、絹のような光沢のある純白の通路を進む。
そのすぐ後ろを、軽快な足音を響かせながらセーナがついてきた。
色々あったが、本当に言いたいことはたくさんあるが、とりあえず三つの試練はクリアした。
第三試練の詳細?
思い出したくもないね!!
試練後はパンツ2つ受け取って速やかに退出しました。
「この試練、あとどのくらい続くのでしょうか?」
「……残るは最終試練だけだと思うよ」
「なるほど、流石はハルトさんですね!」
最終試練。
いわゆる、このダンジョンのボス戦である。
施設の名前は愛の神殿だが、一応ここはダンジョンだ。
雑魚敵が出なくて、特殊な手順を踏まないと入れなくて、人数制限があるというだけで、ゲーム的にはダンジョンである事に変わりない。
「最後の試練も、内容によってどちらが出るべきか考えますから、お願いしますね?」
ああ、うん。
最終試練は、二人で力をあわせないと駄目なんだよ。
――そうだよ、最終試練があるじゃないか!
オレは、項垂れていた顔を上げた。
「急にどうしました、ハルトさん?」
「いや、しっかり元気出して、最終試練を頑張ろうと思ってな」
第三の試練では、エロゲーの重大な法律をぶち壊すような酷い展開に、ちょっと絶望してしまったが。
まだだ、まだオレ達には最終試練が残っている!
今度こそ、セーナを――!
「……なんだか不穏な気配を感じます」
「き、気のせいだと思います」
セーナさん、鋭い!
でも試練内容は変わらないので、もはや時間の問題ですね。
そんなことを考えるオレの左腕をセーナが引き、お、おお?
「……ハルトさんが怪しいことを考えないように、きちんとすぐ傍で見張ってないといけませんから。
さあ、早く、行きましょう?」
まだ少し怒っているらしき赤い顔で、目線を前に向けつつ。
オレの左腕を豊かな胸の中に包みこんだセーナは、腕を抱いたままオレを引っ張って歩みを速めた。
あ、でもちょっと待ってセーナ。
ここの通路脇の8番目と2番目の柱を調べると隠し扉が開いて、ほらここにパンツ印の宝箱があって回収するから。
あ、これ? パンツじゃないよ。うん。だからオレが持つから、いやほんとオレが持つからね、大丈夫です!
気がつけば、いつの間にやら大分ゆっくりとしたペースで歩いていたが。
長くない通路なので、程なく最後の部屋にたどり着く。
部屋に踏み込んだオレ達二人を待っていたのは――
「よくぞここまで辿り着いた、愛溢れる人間たちよよ。
全ての試練を突破した君たちを、心から愛歓迎しようう!」
淡く輝くような純白の部屋の中央で、パンツ一枚だけを身に着けて宙に浮く、桃色の髪の美しい妖精の少女であった。
「見ちゃ駄目です」
その人間大の妖精の姿を確認した途端、いつの間にか腕から離れていたセーナが背後から目隠ししてきた。
み、見えない……!
「おや、胸でパンツを履けるくらい巨乳の僧侶さんは嫉妬の愛が強すぎなのかなな?
でもそれだと話しにくいから、もう少し落ち着いてくれたまええ」
「落ち着いていますから、どうか服を着て下さい」
オレの目を覆ったままのセーナが、妖精と言葉を交わす。
「これは異な事を、ちゃんと履いているよよ?
ああ、デザインが気に入らなかったのかか。それは申し訳ない、すぐ履き替えるからちょっと待っていてくれたまええ」
「ああもう、ここのパンツ達は……!」
妖精の返事に、セーナがオレの背に額をつけてうなだれる。
……どうでもいいけど、手をどかしてくれませんかね?
あ、駄目ですか。
はい、いいえ、残念じゃないです、はい。
妖精の着替えの音が艶めかしい……! 残念じゃないです、はい。
第三試練はCGで存在したが、ボスの着替えCGとかゲームでも存在しなかったんです、つまりとても見たい。
「お待たせしたよよ。これでどうかなな?」
「……せめて、その長い髪の毛で、身体を覆い隠してくださいませんか?」
「やれやれ、仕方ないねね。
久しぶりのゲストのご要望だ、そのくらいなら聞き届けるとしようう」
「はあ……本当に疲れます……」
首筋に感じるセーナのため息が熱い、ちょっとぞくぞくしちゃいます……!
やがて準備が整い解放されたオレが見たのは、相変わらず宙に浮く妖精の姿だ。
儚げな美少女の姿に似つかわしくない余裕の笑みを浮かべ、緩やかに手を広げてこちらを見下ろしている。
長い桃色の髪で体の前面(主に胸)を隠し、下はなぜかふんどし一枚。
……それって、パンツ?