124 美少女同士が競い合う試練なんだけど、降って湧いた可能性に盗賊は動揺を隠しきれない
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「説明しよう、同志よ!
ぬぎぬぎ☆ パンツ大合戦では、美少女が互いのパンツを賭けてパンツ早脱ぎ勝負を行うのである!」
ハニワのボディにパンツを履き、ハニワの頭にパンツを被ったパンツの妖精Lが、試練の内容を高らかに歌い上げる。
「互いに美少女同士、正々堂々と勝負をしようではないか、同志よ!」
「同志ではありません」
真顔で説明を聞いていたセーナは、息をするように自称美少女であるパンツの妖精Lの言葉を否定しつつ。
まるで睨むかの如く、前を向いている。
その凛とした立ち姿には確かな気品と清冽さがあり、異端の神殿であるここに厳粛な空気が満ちているかのようだった。
「その意気や良し、それでこそ我が好敵手たりえるのである、同志よっ!」
「ですから、同志ではありません」
そんな真面目で真剣なセーナに対するパンツの妖精Lも、ハニワなので表情に変化はない。
ただ、中性的な声は変わらず高いテンションを維持しており、体も小刻みなジャンプや素早いターンを織り交ぜて絶好調な様子だ。
ゲームでは静止してたから、相手に動きがあるってちょっと新鮮です。
いや、そう言えばこいつだけウインドウが細かく動いてたような気もする?
まあどっちでもいいか、ハニワだし。
「さあ、試練を始めようぞ、同志よ!!」
「同志ではありません。
少しお待ちください」
相変わらずテンションの差が激しい二人。
開戦の合図にセーナが待ったを掛け、深々と一礼すると身体ごとこちらを向き直った。
「ハルトさん」
「は、はい、なんでしょうか?」
まっ、まさか、さっきみたいに目隠ししろとか……!?
断固拒否する、いや途中で目隠しずれちゃって見えちゃったとか、うん。
つまり、とっても見たいです!
そんなオレの心の叫びなどつゆ知らず、ずっと無表情だったセーナは、ここにきて初めてにこやかにほほ笑んだ。
「どうやらこの試練は私には荷が重いようです。
ですから、後はハルトさんにお任せしますね」
「「……は?」」
オレとパンツの妖精Lの言葉が重なった。
ついでに、目と口もお互い丸くして、さぞ似たような表情になってることだろう。
ハニワは元から目も口もただの穴だけど。
「今、なんとおっしゃった……?」
「ですから、ここの試練はハルトさんにお願いいたします。
私は、後ろで見物――いえ、応援していますね」
今セーナ、見物って言ったぞ!?
いや、そうじゃなくて
「あの、お話聞いてましたよね?
この試練は、美少女でないと参加できないんですよ。
だからここは、とても綺麗で可愛い美少女のセーナさんに頑張っていただくところなんですよ?」
オレの説得に、視界の隅でパンツの妖精Lもうんうんと頷いていた。
首がないので体ごと前後に揺れてるだけだけど。多分頷いていた。
「そっ、そういうことをさらっと言わないで下さい、もうっ!
そりゃぁハルトさんは男性で私が女性ですから、美醜はともかく、少女と言われれば私しかおりませんが……」
「そうそう、そうです!
美醜はともかくじゃなくて、セーナは間違いなく綺麗ですっごい美人でとっても可愛いからね! ここはセーナが出るしかないんだよ!」
オレの必死な言葉に、視界の隅でパンツの妖精Lもその通りとばかりにはしゃいでいる。
ぴょんぴょんと飛び跳ね、体を左右に揺らしてご機嫌な感じで。多分はしゃいでいる。
オレの言葉に心が揺らいでいるのか、真っ赤になって考え込むように少し俯くセーナ。
そんなセーナに畳みかけるため、両手を取り顔を覗き込んで言葉を重ねる。
「頼むよセーナ!
この愛の試練を突破して、エリクサーを手に入れるために!」
そう。
ここの愛の試練がバカっぽいので主目的からズレてるような気がしてしまうが、これは本来の目的のために絶対に必要なことだ。
開催中の武闘大会だって、一回戦はカーロンの魔剣の浸食が予想以上に進んでいたため、レベル1でも運よく反則勝ちを拾えたが、次はそうはいかない。
普通はどんなに挑発されても試合前に襲ってきたりしないし、一回戦でそういう勝ち方をしたことは対戦相手だって把握しているだろう。二度目はない。
というか、ゲームでは反則勝ちもないし、カーロンが対戦相手として出てくることもない。
武闘大会に参加するのは、主人公一人だけなのだ。対となる、もう一人の主人公が大会に参加してくることは全くない。
――待てよ?
それって、なんだか、ものすごい重要なことじゃないか……?
オレはこれまで、主人公のオスティンに戦いは丸投げして、オレはわき役として好き勝手しているつもりだったけれど。
だが。
もしかして、ひょっとすると、まさか。
この世界の主人公は、カーロン、なのか――!?
突如降って湧いた可能性に、思わず口元を押さえて考え込む。
そんなオレの急変を知ってか知らずか、手を握ったままのセーナが急に手を引いて、オレに向かって思い切って叫んだ。
「はっ、ハルトさんはっ!」
「えっ?」
「私の下着姿、他の人に見られて嫌じゃないんですか!?」
「え、もちろん嫌だけど。
……あっ」
セーナの勢いに、思わずぽろっと本音がこぼれる。
それを聞いたセーナは、怒りで顔を真っ赤にしたままで、凄みのある笑みを浮かべた。
「良かった……ふふ、良かったです、本当に。
それではハルトさん。
そういうことですから、ここの試練はよろしくお願いしますね?」
「あ、いや、えっと」
「武闘大会で勝ち、エリクサーを手に入れて、メイデンを救う。
女神の使途として、実に立派な心掛けだと思います。
その目的のために、他の些事に気を取られずに邁進する。そんなハルトさんのことを、私は尊敬しているのです。
――ですから、この程度の試練なんて、ハルトさんが軽くクリアしてくださいね!」
「……はい」
こうしてオレは、セーナの前で、パンツを脱いだのでした……
盗賊Aが脱ぐ生CGとか、誰得ぅぅぅっ!?
そうりょ「たんのうしました」
おうじょ「みたかった、ぐぬぬ」