118 第一の試練に挑戦するんだけど、レベル1盗賊一人で何も問題はない
ジャケットを脱いで床に敷き、セーナを座らせる。
「とりあえず、セーナの出番はまだ先だ。
最後の試練まではオレ一人で十分だから、少しゆっくり待っていてくれ」
「……ハルトさんお一人で、大丈夫なのですか?」
「ここの攻略はちゃんと預言してあるからな。
レベル1でも命の危険はないし、心配せずにオレに任せてくれ」
仮に身代わりの指輪がなくとも、例え狂風の鬼符をつけて最大HPが5であろうと問題はない(※実際に狂風の鬼符は装備してません)
ここでは、普通の意味での戦闘は全く行われないからな。
「いえ、命の心配をしてるわけじゃなくてですね。
ここは得体の知れない怪人物が、余計な事を――」
そう言いながらシンクロナイズドスイミングのポーズで挑戦者を待つパンツの妖精の姿を見たセーナが、その後にこちらを見た後に、なぜか頷いた。
「考えてみたら、ハルトさんも大差ありませんでしたね。
得体の知れない変態のハルトさんなら、簡単に乗り越えられそうな気がしてきました。信頼してますね」
「その発言で、オレの何をどう信頼してるって言うのかなぁ!?」
流石に、パンツの妖精と同類扱いは心外です!
「えっちなことばかり言っているハルトさんなら、同じようなものだと思いますよ。
大丈夫です、心配なさらずともちゃんと見届けていますからね」
「とほほー……」
愛に生きるえろげーまーの矜持が、えろげーキャラに伝わらなくて辛いです。
……いやいや。セーナには、オスティンと共に旅に出て絆を育むという大事な使命があるんだからな。
オレの愛が伝わらないのは、むしろ良い事だと思わなきゃね。
どうせ、ここを出たらそうなるんだから。
セーナとの話もまとまっ……たような気があまりしないんだが、それはさておき。
床に座って休憩しているセーナの見守る中、オレは一人でパンツの妖精に対峙する。
「待たせたな。
準備OKだ、試練を始めようじゃないか」
「分かったのだわん、手加減はしないのだわん!」
オレの意思に頷きを返し、パンツの妖精が構える。
一本の柱のように、地面に垂直に立ち。
ゆっくりと両腕を持ち上げていき、地面に水平になったところで制止。
まるで、十字架に磔にされたかの如き姿勢で、パンツの妖精は叫んだ。
「Tバックのぽーーーーっず!!」
「ナイス、T!」
犬面のパンツの妖精のT字に、親指を立てる。
オレの称賛に、パンツの妖精もにやりと笑って頷いた。
一見すると何の意味もないやりとりだが、これやっておくと試練をクリアした後の報酬が増えるのだ。
ただしこれ、ゲーム中で選択肢とか一切出ない隠し要素なんだよね……
こんなの見つけたやつ、ほんと誰だよ。まことに素晴らしいです。
あ、もちろんオレじゃありません。wiki先生に書いてあったことです。
なぜか後方から冷たい視線とため息が突き刺さるが、鋼の意思でまったくもって気のせいに違いない。
一つ頷いてやると、犬面のパンツの妖精がT字のまま試練の開始を宣言した。
「第一の試練だわん!
どきどき☆ あの子のパンツの匂い当てげーーーーっむ!!」
「よっしゃーっ、かかってこいやー!!」
「……は?」
告げられた試練内容を予め知っていたオレの叫びが、広い部屋中に響き渡り。
告げられた試練内容を初めて聞いたセーナの呟きは、広い部屋の空気に溶けて誰にも届かなかった……