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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第三章・第六話 ぱんつは好きなんだけど、脱いでくれたらそれはそれで素晴らしいじゃない
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117 ようやく愛の試練に挑むんだけど、僧侶のやる気がこれっぽっちも感じられない

 セーナと二人で並び立ち、愛の神殿を見つめる。


……なんだか意識と記憶が途切れ途切れなんだけど、なんでだろう。

 カーロンに殺されかけた記憶もあるし、武闘大会の疲れが出たのかもしれないなぁ。

 結構、強行軍だったような気がするしね。


 そんなわけで、セーナと二人で、祠の上に鎮座する巨大パンツを見つめる。


「ここまで来てしまった以上は、仕方ありません。行きましょう?」

「うん?

 もちろんだよ、愛の試練に挑むためにここへ来たんだからな」


 まるで光り輝いているかの如き、純白のパンツ。

 オレは祠の上によじのぼると、セーナの手を引いて引っ張り上げた。


……実際には、引っ張り上げるだけの腕力なんてないんだけど。レベル1なので大目に見ていただきたい。


「入口は、この祠の側面にあった扉じゃないのですか?」

「違うよ、セーナ」


 確かに、祠の台座の面には閉じられた扉がある。

 だが、あれは入り口ではない。


「相手はパンツなんだもの。

 パンツの入り口なんて、一つしかないだろ?」

「……なんだか、とても嫌な予感がします」


 渋面のセーナにちょっと笑って、オレは柔らかなパンツの布地に手を掛けた。


「このパンツをよじ登り、上からパンツの中に入る。

 それこそが、愛の神殿の入り口なんだ」

「それ、ただのパンツじゃないですか……」

「愛のパンツの入り口は世界中につながっている、これはただの常識なんだよ(エロゲ脳)」


 がっくりと項垂れたセーナを促し、二人でパンツをよじ登る。

 すべすべの手触りだが、肌に吸い付くようなフィット感。危なげなくパンツの側面を登り切ったオレ達は、二人並んで希望の光が渦を巻くパンツの中へと飛び込んだのだった。




□―――――――――――――――□


【 愛の試練 パンツ編 】


 ~ クエスト 開始 ~


□―――――――――――――――□




 パンツの中に飛び込んだオレ達は、無事に神殿の中へ侵入することに成功した。

 セーナがまた頭の痛そうな顔をしているが、あまり悩まないで欲しい。


 今いる場所は、美少女のパンツの如き白い石材で作られた、石造りの通路の一端。

 柱や壁の縁には細く精緻なレースが飾られ、通路の上には運動会の万国旗のように色とりどりのパンツが飾られている。


……通路に飾られたパンツについては、ゲームではただの背景だったけど。ここだとあの万国旗風パンツ取れたりするのかな?

 何かの素材か、強い装備品だったりしないだろうか。ちょっと壁をよじ登って一枚拝借してみよう。


「……何してるんですか、ハルトさん?」

「あ、いや。素材の採取を……」


 無言で壁から叩き落されました。痛い。

 レベル1なので防御もトイレットペーパー並み、手加減していただきたいです。

 後でセーナが見てない時に、こっそり回収しようっと。


 そんなわけで、しっかりと加害者(セーナ)に回復してもらい、二人並んで通路を歩く。

 色とりどりの万国旗風パンツの中に見知ったパンツがない事を確認しつつ、やがて現れた最初の部屋へ、二人で足を踏み入れる。




 通路と同じ白い石材で作られた部屋の中に入ったオレ達を迎えたのは、一人の怪人物であった。


「愛の神殿へ、よーこそだわん!

 買ってきたパンツを家に帰って履くまでのように、今か今かと待ちわびていたのだわん。買ってきたパンツのように!」


「ハルトさん、変態が居ます」

「セーナ、ストレートすぎ」


 半眼のセーナが低い声で呟いた。でもまぁ、気持ちは分かる。


 下半身は白いブリーフ(パンツ)いっちょ。

 上半身は胸元にショーツ(パンツ)を数枚巻き付けた、フル・パンツ・コーディネート。

 名前をパンツの妖精S、あんなんでも一応は愛の眷属だ。


 ちなみに、体は成人男性的な細マッチョ、声はバリトンイケメンボイス、顔は犬である。


……もう一度言おう。

 顔は、犬である。耳の長い、ビーグル犬的なやつ。


 どうしてこうなっているのか、それは開発のみが知る。

 あと、あまりに当たり前すぎて今更言うまでもない事だとは思うけれど、頭にパンツを被ってます。足を出す穴から、両耳が垂れ下がってます。



「君たちは、およそ8年3ヶ月14日ぶりの挑戦者。歓迎するのだわん!」

「およそと言いながら、日付がえらく具体的です」


 だいぶ不機嫌そうなセーナが、ぶっきらぼうに突っ込む。

 突っ込みを受けたパンツの妖精は、とても嬉しそうに犬面を歪ませると、自信満々に答えた。


「具体的には、8年3ヶ月13日20時間17分41秒ぶりの挑戦者だわん。

 あ、秒は刻々と変化しているので、誤差はフリーサイズのパンツのように許容するのだわん。フリーサイズのパンツのように!」


「頭が痛いです……」


 額に手を当て、もう片手でオレの肩にもたれかかり、セーナがうめき声をあげた。

 ちょっとしんどそうなセーナの胴体に腕を回し、その身体を軽く支える。



 セーナも、オレに突き合わせて強行軍させちゃったからなぁ……

 カーロンに刺し貫かれて心配かけたりしたし、ちょっと疲れが出たのかもしれないな。


「いいえ違いますハルトさんの考えは全面的に誤っています」

「ナチュラルに心を読まないで!?」

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