111 勇者の時は牢の中から見送ったんだけど、魔剣士とも牢屋越しに別れてて牢屋の背景CGが休む暇がない
今出せる範囲で、こちらの持っている情報をカーロンへ伝え。
ついでにいくつか、気になっていたことも聞いてみた。
ターシャがこちらに居るため、カーロンはどうやらここまで一人で戦い続けてきたらしい。
ちょっと罪悪感で目を反らすと、怪訝な顔をされた。
武闘大会への出場は、単純に優勝賞金目当て。路銀が乏しいため一攫千金を狙ったそうだ。
並みいる強豪相手に、なぜ簡単に勝てると思ったのか、今では不思議だと言っている。
ぶっちゃけ、鎧のせいだと思います。
鎧の真実についても話したけど、この鎧は復讐に必要だから捨てられないと断られた。
それでも、使い続けるほどに悪影響が生じる。最後には、復讐の妨げになるのは間違いない。だから、十分に注意するよう伝えるだけで、今は良しとした。
うん、これはいつかオスティンと衝突すること確定ですね。オスティンにも伝えておこう。
いっそ、鎧が魔族ですとか嘘言う方がよかったのかなぁ……難しい問題だよな。
とりあえず、回復魔法の使える仲間を作ることから始めてみるといいよと、なんだか駆け出し冒険者を相手にするみたいなことも言っておいた。
……でもな。ターシャとセーナはうちにいるから仲間にするのは無理だし、本来はカーロン用の救済キャラのゆの爺は、オスティンが連れてっちゃったんだよなぁ。
他に回復魔法使えるやつ、いたかな?
まあフェイルアードで慌てて探すこともないし、その辺はカーロンに頑張ってもらおう。
一応、魔剣士のスキルでHP吸収も出来るようになるしな。
メイデンと言うか、オレが守るべき女性についても少し話をした。
こいつらに手を出したら殺すよ?的なニュアンスで。
もちろん、ちょっとやそっとではカーロンを殺せないんだけど。
あ、でも明日になれば簡単に殺せるようになるかも?
そんな感じで、こっそり持ち込んだおやつをカーロンと二人で食べつつ、色々話をして。
結構遅い時間になったので、話を切り上げて帰ることにした。
「……反則負けとなったから、言うまでもないことではある、が。
一応、その。悪かったな」
カーロンの謝罪に少し笑ってしまったら、烈火のごとく怒られました。
いや、すまんカーロン。ちょっと意外でな。
「それじゃぁオレは失礼するよ。
魔剣はきちんと大会後に返すから、その時にまたな」
オスティンを見送った時は、オレが牢の中でオスティンが牢の外だった。
カーロンと別れる時は、カーロンが牢の中でオレが牢の外。
いや、牢屋の場面多すぎじゃないですかね、これ?
オレも主人公も犯罪者ばっかりじゃねーか!
次回はオスティンを投獄だな、そうしよう。うん。
「できれば貴様とは会いたくないが、魔剣の取り扱いを考えれば仕方ないか……
一応、健闘を祈る」
「ああ。またな」
どうせ数日で再会するのだし、握手はしない。
軽く手をあげただけで、オレは魔剣を手にしたまま牢を後にした。
詰所を出ると、外はすっかり暗くなっていた。
大きく伸びをして、今日の活動がようやく終了したことを実感する。
「それでは兄上、拙者はこれにて。
第二試合で対戦できること、楽しみにしております!」
「オレはお断りだよ」
なぜかオレと戦いたがるアズサの要望を、笑顔でばっさりお断り。
オレは確実に勝ちたいんです、第二試合でネームドキャラとの対戦とか勘弁してください(フラグ)
少し膨れるアズサの頭を軽く撫でて続ける。
「今日は本当に助かったよ、ありがとう。
明日の試合、オレは観戦できないけど頑張ってな」
「構いませぬ。
と言うか、兄上の激励だけで、ご飯何膳でも平らげてみせましょう!」
それただの大食いで、ちっとも試合と関係ないやつ。
「それに、兄上が対峙した魔剣士と違って、拙者の方は大した相手ではおりません。
見どころもなく、あっさり勝ち上がっておきますのでご心配なく」
対戦表や一部の選手の様子については、今日ベルに確認してきてもらった。
アズサの相手は聞いたこともないモブ選手っぽいし、レベルもアズサより下。確かに相手にもならないだろう。
ガンゼイオーの試合も明日だが、こちらも負けるはずがない。
あとは、第二試合の組み合わせがどうなるか、明後日の発表次第だな。
アズサと別れ、皆の方を振り返り。
「それじゃ、一回戦突破を記念して、たまには食べて帰ろうか」
オレは笑顔で、愛する皆と共に賑わう飲食店街へと足を向けるのだった。
さあ、明日はセーナと一緒にレベル上げだ。
待ってろよ、パンツダンジョン……!!
カーロン絡みの後片づけが立ちはだかったせいで、パンツに辿り着けませんでした……!
第三章・第五話終了です!
今夜は久々のキャラ紹介wiki、もう一人の主人公が登場です!