12 勇者は騎士だらけのパーティを組むつもりだけど、バランス悪いのでお勧めできない
話は変わるが、少し一般的なゲームの話をしよう。
RPGにおいて戦闘におけるキャラクターの役割は、大きく3種類に分別される。
一つが火力役。
敵にダメージを与えるのが役割で、ダメージを与える強さを『火力』という言葉で表している。
大体のゲームでは、与えるダメージの種類によって、物理火力と魔法火力なんて分けられたりもしている。あとは攻撃対象によって、遠距離火力とか範囲火力とかね。
次に回復役。
これはその名の通りで、仲間の傷を回復する役割を担う。
長旅や長期戦、特にボス戦でその真価を発揮し、回復役なしでの攻略は不可能と言っても過言ではない。
最後に盾役。
タンクとも呼ばれるこの役割は、敵からの攻撃を受け、パーティーを守るのが仕事だ。
魔法使いなどの火力役は総じて体力が低く、防御も貧弱である。他の仲間が自分の仕事を全うするために、敵の攻撃を一手に引き受ける『盾』が必要となるのだ。
他にも味方の強化や敵の弱体化を行う支援、罠や敵の探知など冒険自体のトラブルを避ける斥候、お宝を集める盗賊や商売を円滑にする商人など様々な役割はあるが、戦いにおいて大別すればだいたい先ほどの三種のいずれか、もしくは複合に分けられるのだ。
自由にパーティを組めるゲームの場合、ある程度これを意識して編成を行う必要がある。
回復役が一人も居なければ長期間戦い続けることはできないし、火力が足りなければ敵を倒すのにとても時間がかかる。打たれ弱いキャラしか居なければ、敵の奇襲などであっけなく壊滅する事だろう。
最適なキャラやバランスは人それぞれ違うけれど、みんな何かしらでこれを意識するのが普通である。
で、なぜ突然こんな話をし出したかと言うと、オスティンの考えたパーティ編成に問題があったから。
元騎士、騎士、騎士、盗賊
これが、オスティンの考えるパーティ編成だった。
「いやいや、そりゃぁ無理があるだろ。
序盤は良くても、脳筋すぎて回復が追い付かないし魔法も使えないだろ?」
「えー、そんなことないよ?
エルマが魔法使えるし、ディー先輩は回復できる。ぼくが回復も魔法もフォローできる。
ハルトが来てくれたら、ぼくらに足りない罠の解除とかしてくれそうだし、バランス良くない?」
エルマというのが、オスティンの初期メンバーでサブヒロインの女騎士。炎属性のみだが、魔法が使える。
ディーはゲームのオープニングで死ぬ先輩騎士。こちらはゲームと違って生存、初期レベルの回復が使える。
ちなみにオープニングでのパーティには、あと一人チームリーダーのガッドが入っていた。こちらは純粋な盾役だな。
「最初だけな。
申し訳ないが、ディーじゃすぐに回復力不足になるぞ。
パーティ最大火力のオスティンが回復役に回ってたら意味ないだろ」
「うーん……そうかなぁ」
「それに、女神様だって言ってたんだろ?
女神の欠片を宿す乙女を仲間にしろ、って」
「えー、そんなはっきりした事言われてないと思うよ?
確かに、力をあわせろとは言われたけど……」
オスティンの記憶力があてにならないことはもう分かっている。
細かい部分を覚えてないのは仕方ないが、それでも大体の雰囲気を覚えててくれればそれでいい。
「だろ?
エルマ…さんはお前と一緒に行くとしても、回復役と、もう一人くらい火力か万能型か、仲間を考えた方がいいって。
オレ以外で」
「うー。
ハルトはぼくのこと嫌いなんだ……」
「いや、好きとか嫌いとかじゃ――」
「ハルト様が好きなのはわたくしです!
ですよね、ハルト様」
割り込まないで!
思わず頷いちゃったじゃないか、ミリリア。
くそう、にっこり笑顔が可愛すぎる、ずるい!
「あ、いや、えっと……その……恥ずいので、こほん。
ゆっ、勇者よ! 魔王を倒すには、とても厳しく長い旅になるだろう!
拠点を手に入れて自由に仲間を入れ替えられるようになるまで、最初のうちはある程度慎重に考えないとすごく厳しいぞ?」
物語が進み、拠点を手に入れた後は仲間の人数制限がなくなって、ある程度は拠点で自由にパーティの入れ替えができるようになる。
パーティから外れた人は留守番として、拠点で作業をしたり勝手にギルドでクエストこなしたり、モンスターを狩ったりしてくれます。
「でも、回復役が欲しいと言ってもどうすればいいのさ?」
「決まってんだろ?
街へ行って、仲間になってくれる人を探すんだよ」
白の勇者の旅立ちの地、フェイルアードの王都。
この街ではゲーム開始時点で、メインヒロインのうち2人を仲間にする事が可能だ。
僧侶のセーナと、魔法使いのベルルーエ。
ディバイン・セイバーで最もエロい女僧侶と、後に時空魔法の使い手となる最高の便利キャラである。
無事、第一章・第一話 終了です!
今日はこの後、おまけとしてディバイン・セイバー風のキャラ紹介と、今話のあとがき。
掲載は、きっと21時頃です!
とってもエロい僧侶さんのご紹介については、過去に公開した短編版のあとがきをどうぞ★