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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第三章・第五話 黒の魔剣に胸部を貫かれたんだけど、準備万端なので魔剣士と敵対する必要はない
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107 強敵と戦う準備をしているだけなんだけど、美少女の幸福からの転落具合とメイドの告げ口が半端ない


    - - -



 引き続き、カーロンとの第一試合より前、抽選会後の準備中。




 ハルトとアズサ、二人で店の玄関脇に並ぶ。


「さて――それじゃぁ、始めるか」


 ハルトはそう言うと、店の中で自分の左手にはめた、太くて武骨な指輪を抜き取った。


「兄上がお持ちの指輪は、一体どういったものなのでしょうか?」

「ああ。

 これは『身代わりの指輪』と言って、この家のハルファラさんが作ってくれたものなんだ」


 そう言いながら、アズサの左手を取り。

 迷わず躊躇わず、すっとその指に今外した指輪をはめた。


「……あ、ぁ?

 っ、ああああにうえ? ここここれは、どっ、どういう……!?」

「あげる」


「へぁっ!?

 あ、あのあの、おにい、あにっ、あにうえ!」

「サイズ、大丈夫だろ?

 この指輪は、一旦アズサにあげる」

「だっ、大丈夫ですばっちりです緩かったら指が太くなります! あにうえが、ゆびっ、指輪を、その、あああ、いえ、だから、あのっ!


――どっ、どうせなら薬指にはめてくださいまし!」


 理由を聞くより、意味を問うより、それより前に。

 アズサの口をついて出たのは、はめる指の変更要請であった。


「ん?

 ああ、中指だと戦闘の邪魔なのかな?」

「はははっ、はいそうですそうなんです居合の邪魔になりますので何卒薬指に!」

「街中で戦闘もないし、最終的には変わりないんだけど……まぁ、いいか」


 必死なアズサの様子に、問答するのも手間かとばかりに指輪を薬指にはめなおすハルト。

 その姿を物陰から一人のメイドが見ていることも知らずに。


「は、はわぁ……お、おにいちゃん……」

「ん、何か言ったか?」

「いいいいいえっ、いいえ! 何も言ってませんでおります!」

「そうか。

 それじゃぁ、どんどん行くからここで待っててな」

「はい!

……はい?」


 そう言えば、待ってるとは何を?

 というか、準備とか手伝いはどうなったのだろうか?


 そんなアズサの疑問の答えは――



「ハルファラさーん。

 指輪、仲間じゃない人にあげちゃった(・・・・・・)んで、また作ってくださーーい!」

「は、はああ?

 そりゃどういうことだい?」

「いや、どうもこうも。

 さっき一緒に来たアズサは、仲間じゃなくて、武闘大会出場者でオレの敵なんですよ。


 売ってもいない、何かと交換もしていない、仲間ではない第三者が装備している。

――条件、満たしてますよね?」


「……


……


 ああ、満たして、いるね……ああ、満たしているとも!」


「ですよね!

 それでは、指輪の作成、お願いします!」

「ああもう、そうきたかいこの悪ガキめ!

 いいだろう、あたしも約束はきちんと守ってやるよ!」


 口調は老婆のようで、見た目は三十程度の美女。

 そんな謎の魔術師?の自棄になったような声が聞こえてきて、アズサも朧気に状況を把握してきた。自分にとって、都合の良い状況を。


(つまり、拙者に指輪を渡すことで、同じ指輪を作って欲しかった?

 それってつまり、拙者と、俗に言う、ぺ、ぺありんぐ(・・・・・)ということでおりますか!!)



 それからほんの3分程度。

 出来立ての指輪を受け取ったハルトは、妄想と幸福の絶頂にあるアズサの待つ店外に出ててくると。



「はい、アズサ。あげる(・・・)


 笑顔のまま、二つ目の指輪をアズサの指にはめた。

 アズサの左手の薬指にはめられた『身代わりの指輪』は、2つになったのだった。



 アズサの目が、丸くなった。

 ついでに、メイドの目も、丸くなった。



「はっるふぁっらさーん。

 指輪、作ってくださーーい♪」




「ああもう、あんた質が悪いね!

 まさかこんな手を使うなんて、どんだけ腹黒いんだい!」



「いや、あんなの一人一つ分あればもういいだろう?

 今後はあんたの仲間全員分作ってやるから勘弁しておくれよ!」



「あの、兄上?

 もう薬指にこれ以上はまらないんですが」



 ……



「まだ必要って、いったいあんたは何を考えてんだい?

 いくら集めようとも、いくつもつけてたら一度にまとめて割れて意味ないんだからね?」



「もうこれで何個目だい、いい加減にしておくれよ!

 あの指輪を売るつもりなら、よっぽど高いアイテムを代わりにあげるからいい加減におし!」



「いえ、兄上?

 もう両手の指がいっぱいで、あの、え、足? 足の指?」



 …………



「あんた、ハルトとか言ったっけ?

 本当に、もう勘弁しておくれよぉ……一線を退いた街のおばさんに、どんだけ求めるのさ?」



「ああもう、もーっ、野良犬に噛まれたどころか、野良ドラゴンに丸呑みされた気分だよ!

 こんなことになるなんて、ああ私の馬鹿ばか馬鹿、なんて男に引っかかってしまったんだい……はぁぁ」



「あ、兄上、そんな、もうこれ以上は入りませぬ……っ!


 ああご勘弁を、道行く人にも見られて、あああ駄目っ、駄目です兄上!

 耳元でアズサしかいないんだなんて囁きながら入れるなんて、だめっ、だめぇ(足の指を)揉まないで(足の指の)股が裂けちゃう、あっ、(指輪が足の指に)入っちゃう、ぁぁああっっ」



 ………………




    - - -



【 準備作業 最終結果 】


・ 身代わりの指輪 127個 入手


※最終的な指輪の総数は128個であったが、最初に作ってもらった1つはアズサにお駄賃(・・・)としてあげたため、ハルトの手元に残ったのは127個




・ 最終的なハルファラの身代わりの指輪製作時間 56.4秒(世界最高記録更新)

メイド「なんたる所業、なんたる鬼畜……相変わらず恐るべしですね、この盗賊は。

    しかし、たかがお駄賃で妹の薬指に指輪をはめるなど、許されることではありませんよ?」


アズサ 幸福度メーター ★★★★☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


    - - -


大感謝の毎日更新はいったん本日で終了。

アズサさん、お疲れさまでした!

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