101 ディバインセイバー・トリニティ プレイ日記 1
前話で、とうとう本編100話に到達しました!
皆さまのご愛読に心より感謝を込めて、今日から3日連続で記念の特別編スタートです!
エロゲー業界というのは、不遇なんじゃないだろうかと思っている。
どれほどゲームバランスが素晴らしく、ストーリーが感動的で、歴史に残るような名作であろうとも。
エロという一要素によって、一般の人たちからは内容を知ることもなくプレイ候補から除外され、それどころか汚らわしいものとして存在すら全否定される。
エロゲーの中には、一般向けに発売されているゲームより面白いゲームがたくさんあるんだぞ?
まあそれ以上に、くそげーと呼んで差支えがないようなゲームも、非常にたくさんあるんだけどさぁぁ。
どれほど出来が悪くても、逆に絵さえ良ければエロゲーとして一定以上の評価がされてしまうのも、また事実なんだよな。
そのせいで、玉石混淆……というには玉の割合が少なすぎるか、小麦粉の中の飴探しみたいなもんかも?
ともあれ、エロゲー業界とは、そんな感じなのだ。
顧客の理不尽なクレームに丁寧なメールを返し、ほんのりブラックな会社で上司のパワハラじみた持論を念仏だと思って聞き流す。
色あせて変わり映えのない毎日を送る俺の名前は、原山 治人。
ゲームが好きなだけの、どこにでも居る独身サラリーマンだ。
そんな俺なんだが、今日は顧客にも上司にも負けず、強い意志のもとに有給休暇を勝ち取っている。
なぜなら、待ちに待ったゲームが、とうとう発売されたからだ!
『ディバインセイバー・トリニティ』
今からちょうど7年前に発売されたエロゲー、ディバイン・セイバーのリメイク作品である。
なんで今更出るの?という疑問はなくはないが、発売が嬉しくてたまらないのでそんな事はどうでもいい!
睡眠時間こそ興奮して寝付けず少な目だが、栄養補給と水分補給は万全だ。
社用スマホの電源も切ったし、昼食・夕食もリアルの雑事は全て準備万端。
あとは一秒でも早くゲームが届くのを待ちながら、予習がてらディバイン・セイバーのwikiでも眺めているとしよう。
けして!
けっして!
トリニティの情報は事前に見ないように注意するのだ!!
何を隠そう、俺はクリアするまでは攻略情報は見ない派だ。
ある種、ゲームとは開発者とプレイヤーの戦いであり、共同作業なのだと思っている。
本当に面白いゲームを作ってくれたからこそ、俺達プレイヤーは、そのゲームに真摯に向き合い、全力で楽しまなければならない。
極悪なRPGだろうが、難解な探偵ゲーだろうが、俺達はその知恵と経験と熱意でもって踏破してみせる。
それこそが、ゲームを作ってくれた人達への感謝であり、誠意なのだ!
あ、反射神経が必要なアクションとかシューティングは例外ね?
あれは無理よ、うん。
ほんと無理。頑張っても無理。おじさん若くないからね。
wikiを見ながら、それぞれのヒロイン達に想いを寄せることしばし。
具体的には17分が経過したところで、待ち望んだインターホンの音が!
「はいっ!!」
「あ、今度新しく近所にオープンしまs」
「間に合っっってます!!!」
このタイミングでセールスとかふざけんな死ねよあああああ!!!!
はい、無事に通販でディバインセイバー・トリニティが届きました!
ふおお、パッケージが輝いておられる……!(※個人の感想です)
鮮やかな赤に輝くコアを挟み、背中合わせで剣を構えるオスティンとカーロン。
二人の主人公を中心に、過去のイラストより格段に美しくなったメイデン達がそれぞれのポーズで周囲に並ぶ。
そんな輝かしいパッケージに向けて、手を合わせて拝んでから記念撮影。
さらに、原作ディバイン・セイバーのパッケージを横に並べてツーショット写真も撮る。
いえーい、みんな見てるー?
まあエロゲーのことはSNSに上げたりしねーんだけどな。
――さて、ゲーム始めるか!
俺は丁寧に箱を開け、指紋がつかぬようハンカチ越しにディスクを取り出してパソコンに読み込ませた。
新しくもどこか懐かしいイラストと紙芝居のような説明を背景に、ゲームをインストール。
じりじりとしか進まない、もどかしい進捗バーに向けて風の補助魔法染みた加速の念を送りつつ。
インストールの長さは容量の大きさであり、ひいてはCG枚数やゲームのボリュームが大きい証だと必死に自分に言い聞かせる。
そうして、マニュアルを読みつつインストールとネットワーク登録を乗り越えて、ついにディバインセイバー・トリニティを起動!
聞き覚えのあるテーマ曲と、まったく聞き覚えのないオープニングソングを拝聴し。
案内に従って、パソコン内にあるディバイン・セイバーの白の勇者編&黒の魔剣士編クリア済みのセーブデータを読み込ませる。
原作のクリア済みデータを読み込ませることで、白黒のクリアをすっ飛ばして、最初から緋色の盗賊編をプレイすることができるとのことだ(インストール待ち画面で説明されてた)
無事に原作データの読み込みが終わって、再起動。
タイトル画面の中央には、新たに3人目の男が現れていた。
爽やか&凶悪なイケメンである白黒の二人と違い、外見的にはやや平凡。
緋色の刀を構えた黒髪黒目の姿に、少し日本人っぽい親近感を感じるな。
こいつが噂の新主人公、緋色の盗賊か。いいねいいね、盛り上がってきましたね!
それじゃぁ早速、緋色の盗賊編を始めてみるとするか!
今の俺のテンションなら、いきなり今日中にクリアしちゃうかもね!!
――10分後。
俺は、白の勇者オスティンを操作して、盗賊のボスを打ち倒し、心に傷を負った王女ミリリアの救出を果たしたのであった。
「なんっじゃこりゃーっ!」
治人くんが操作する緋色の盗賊に、いったい何があったのか……!?
トリニティプレイ日記、次回に続きます!
投稿は明日のお昼予定!