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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第一章・第一話 盗賊Aはヒロイン達が大好きなんだけど、メインヒロインは勇者の旅に同行させなきゃならない
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11 勇者の話と記憶力が不安なんだけど、盗賊Aが加入するつもりは全くない

 一息ついて、やっと朝食開始。

 それでも、話が終わったわけじゃない。


「そういうわけだからさ、ハルト。

 改めてお願いするよ。君に、ぼくの仲間になってほしいんだ」


 そう言って、深々と頭を下げるオスティン。


「……なぁ、ほんとになんでオレを連れてこうとするんだ?

 オレ、弱いぞ?」


 全く自慢にならないが、オレはモブの盗賊Aなんだ。

 戦闘力で言ったら、勇者とメインヒロイン(メイデン)はおろか、サブヒロイン達にも及ばないだろう。

 冒険者としても、盗賊は移動や探索で役に立つ分、戦闘力は他の職より低いしね。


「強さじゃないんだよ。

 さっきも言ったけど、本当に大事なのは仲間として背中を預けられることさ。

 ぼくはハルトになら安心して背中を任せられる」

「んなもん任せんなよ、弱っちい盗賊Aに」


 まだちょっときついミリリアの視線を受けながら、オレはため息をついた。


 なんでこんなことになってんだよ。

 お前勇者なんだから、ヒロインと絆を……って、そうだよ。絆だよ。


「なぁオスティン。

 お前、女神様から仲間について何か言われなかったのか?」

「仲間について?」

「ああ。オレの預言が正しければ、これからどうすべきか、女神様から話があったはずだ」


 オレの発言に、ようやくミリリアが俺からオスティンへ視線を動かす。

 解放されて安心する反面、ほんの少しだけ寂しく感じたのは内緒だ。

 男心も複雑なんだよ、うん。


「あー、そう言えばなんか言われたね!

 すごいよハルト、ぼくすっかり忘れてたよ!」

「忘れんじゃねーよ、そんな大事なこと!」


 女神様との邂逅は、オープニングの山場だろぉ!


 ちなみに、オープニングで女神様とのエロはありません。念のため。


「それはわたくしも初耳ですね。

 オスティン、女神様はどのような話をされたのですか?」

「えーっと、魔王が復活するから、聖剣で倒せってことと。

 そのために、仲間を集め、力をあわせなさいって感じだったかなぁ」


 メインヒロイン達、すなわちメイデンと力をあわせるというのをゲームシステム的に言うと、絆を結べ、絆をはぐくめということだ。

 白の勇者が魔王を倒すためには、最低一人以上のメイデンと絆を結ばなければならない。

 絆が全くなければ、周回プレイでどれほどオスティンやカーロンを鍛えても、絶対に魔王は倒せない(実体験)


「その集める仲間について、何か言われただろう?」

「えーっと、ちょっと待ってね。思い出すから」


 そう言いながら、オスティンは朝食をばくばくと食べる。

 いやあんた、思い出すんじゃないんですか?


 ミリリアも美しい眉根をちょっとひそめつつ、止まっていた手を動かし食事を再開した。

 仕方ないので、オレも食べる。

 うん、ものすごくおいしいです。さすがはお城ご飯。

 昨夜のパーティではあまり食べられなかったからとてもありがたい。主にオスティンのせい。


「んぐんぐ、ぷはぁ。

 そうだ、思い出したよ」


 しばらく食べ進め、全部食べ終わったところでやっとオスティンが声をあげた。


「随分と長い思い出しだなぁ、おい」

「ははは、そんなこと言わないでよハルト。

 女神様はね、たしかこんなことを言ったんだ」


 オレはまだ食べ終わっていないので、食事を続けながらオスティンの話を軽く聞く。

 女神との邂逅は、周回プレイでもスキップできない場面だったからなぁ。一字一句……とまでは言わなくても、ほぼ全部覚えてる。

 だから


「女神の欠片を宿す乙女達に、剣を持つ選ばれし者たち。力をあわせれば、必ず魔王を倒せます、って感じだったかな」


……え?


「そのために、信頼できる仲間と共に旅立て、って」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。

 オスティン、それは本当なのか?」

「ええー、嘘なんかつかないよ!

 そりゃぁ、細かい部分はうろ覚えだけどさ。女神様は、そんな感じの事を言ってたよ!

……多分」


 小声で付け足された最後の一言が不安だが、ひとまずそれは無視しよう。


「ハルト様、どうなさったのですか?」

「剣を持つ選ばれし者たち、って言われたんだな?」

「う、うん。多分、そんな感じのこと、だったんじゃないかな……多分」


 いや、お前はもうちょっと大事な話なんだからちゃんと覚えとけよ!

 というツッコミも今はどうでもいい。


 オープニング時点の女神は、黒の魔剣の事には言及しない(・・・・・)

 プレイヤー目線ならともかく、オスティン目線では、今の時点で魔剣に関する情報は一切ないはずなんだ。

 なんだ、どうして女神が『選ばれしたち』と、複数形で話しているんだ?


 《なぜ、オープニングに》《差異が生じてるんだ》?


「ハルト様……?」

「……すまない、ミリリア。

 ちょっと預言と違ったから、驚いてしまっただけだよ」


 ミリリアを助け、さらにターシャも助けてこっちに連れてきたから。

 ひょっとして、オープニングからストーリーにズレが生じているのか?


「ハルト、大丈夫?」

「ああ。

 とりあえず、オスティン」

「なんだい、ハルト?」

「とても大事な事なんだから、女神様の話はきちんとメモしとけ!」

「うえぇ……ハルトが先生っぽい」


 いや本当に。

 すっごい大事な話なんだから、ちゃんと覚えておいて!


 今の時点ですでにズレてる以上、今後さらにズレが大きくなる可能性もある。

 情報は多いに越したことはない。


「そうですね。

 オスティン。仲間に頼んでもいいですから、大事な話……いえ、起きた問題や行った事など、必ず記録を取るようにしなさい」

「うう……わかりました、仲間にお願いします」


 ミリリアの援護射撃にうめくオスティンは、


「ハルト! 記録係お願いね!」


 まったくこりずに、こっちに丸投げしやがったのだった。


 だから、オレは魔王討伐なんていかねーよ!

次話で一章・一話が終了です。

そのため、おまけを含めて今日は一挙3話公開!

次話は18時予定です。

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