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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第三章・第四話 一回戦から対戦相手が強敵なんだけど、レベル1だからって負けるわけにはいかない
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99 相手が凶行におよんだので反則負けなんだけど、試合に勝っても命を落としたら意味がない

 衛兵達は、激昂したカーロンを無事取り押さえてくれた。

 例えカーロンの方が強くとも、衛兵達は人数が多い。

 まさか反則負けになるほど激昂するとは思いもしなかったが、ひとまずこれで騒ぎは終了だろう。


 と、そんなことを考えていたのだが――



「ぐ、なんだ、この剣は!?」


 カーロンから魔剣を取り上げた衛兵Aが、剣を握る手のひらから煙を噴き上げながら叫んだ。


「っ!

 まずい、その剣を離せ!」


 咄嗟に衛兵に向かって叫ぶ。

 だがオレの声は聞こえていないようだ、噴き上がる煙を押さえるため必死で左腕で右腕を押さえる衛兵A。


「ぐ、ぐあぁ、なん、で……」


 ちっきしょう、作中ではほとんど出てこないマイナー設定のくせに、ちゃんと魔剣の呪いは健在かよ……!


 魔剣を握って呻く衛兵Aと、どうすればいいか分からずおろおろする衛兵B。

 他の3人もカーロンを取り押さえているものの、魔剣と衛兵Aを見てどうすればいいか分からずにいる。


 やがて魔剣を手放すことができずに、衛兵Aが魔剣を握りしめたまま膝をつき舞台に倒れた。




「来い、セーナぁっ!!」


 オレは、大声で観客席のどこかに居るセーナを呼ぶ。

 それから衛兵Aの傍に駆け寄ると、腰の刀を抜き、魔剣を握りしめたままの右腕を斬り落とそうと――


「硬っ、斬れない!?」


 くそう非力なレベル1の盗賊めぇぇっ!


 心の中で自分に悪態をつきつつ、慌てて魔剣を握りしめた衛兵の右腕を掴み、奪い取るように腕を覆う籠手を外す。


 それから改めて刀を構えなおし、一瞬の集中。

 目を見開き、オレが唯一習得していた攻撃スキルを放つ!


「一刀!」


 今度は無事、一刀のもと衛兵Aの右腕を斬り飛ばした。アズサから借りた刀の攻撃力(切れ味)のおかげだな。


「ぅ、ぁ……」


 魔剣に吸われたために腕の断面からは多少の血しか出ず、呻くばかりで叫ぶ元気も残っていない衛兵A。

 それでも、声を出せるってことは、命はまだある!




「ハルトさん!」


 オレの呼び声に、スタッフの制止を振り切って舞台上へと駆けつけてくれたセーナ。

 そのセーナに向けて、斬り飛ばした衛兵Aの、魔剣を握ったままの右腕を持ち上げて向ける。


「剣を握った指に、全力でホーリーボルトを!」


「女神よ、大いなる慈悲を与えたまえ!

 彷徨う魂に安らぎあれ、ホーリーボルト!」


 セーナの放った大きな光球が黒ずんだ指を直撃し、斬り離された腕から命を吸い尽くした魔剣が大きく跳ね飛ばされて舞台に落ちた。


「よしっ、よくやってくれた! セーナは衛兵の手当てを頼む!」

「はいっ」


 指はぐしゃぐしゃな状態になっているが、命がかかった状態だったから勘弁してくれ。

 腕そのものがきちんと残っている以上、回復魔法でくっつけることはできるはずだ。多分。


 そう思いながら、持っていた衛兵の右腕をセーナに渡そうと近づき――




「危ないっ!」




 皆の意識が、倒れた衛兵Aと、その手に握りしめられた魔剣に集まり。


 その後は、衛兵Aの腕を斬り飛ばして処置した、オレとセーナに集中し。


 その隙に、戒めを振りほどいたカーロンが、衛兵を殴り飛ばして自由を得ていて。




 自分を、ズィオレーベの民を侮辱した憎い盗賊を殺そうと思い。


 都合よく、弾き飛ばされて走る途中の地面に落ちてきた魔剣を手にして。


 盗賊を殺そうとして駆け寄っていたはずが、進路上に居た僧侶を見た瞬間に、吸い込まれるように背中からその心臓に魔剣を突き立てようと腕を伸ばし――




 カーロンの凶行に、その魔剣が届くよりほんの一瞬だけ早く気づいたオレは、全力でセーナを引き寄せて。


 そうしてセーナを庇ったオレの胸に、セーナの心臓を狙っていた魔剣が、届く。




 漆黒の魔剣は、レベル1の盗賊の貧弱な身体をやすやすと貫いて。



 その背中から、巨大な刃の切っ先が、深々と突き出していた――


Tips


 最高級の回復アイテムであるエリクサーは、対象のHP、MP、あらゆる状態を回復することができる


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