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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第三章・第四話 一回戦から対戦相手が強敵なんだけど、レベル1だからって負けるわけにはいかない
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97 黒の魔剣士とのレベル差は大きいんだけど、愛と知識と仲間の協力があれば盗賊は負けない

 カーロンは、間違いなく強敵だ。

 魔剣と鎧の力も性格も、たかが一ヶ月足らずなのに本来のゲーム進行よりも遥かに進んでいる気がする。


 それでもオレは、絶対に負けられないんだ。

 愛するみんなを守るために。


 エロゲーマーとして、愛のないえろを許さないために!!



 そのために――




「偵察……え、そんだけ?

 世界一の天才魔法使いのあたしにお願いするの、偵察だけなの……? それっておつかい」




「どうしてもアズサさんでないといけないのですか?


 どうしても?

 どーーーしてもですか?


 むうう……仕方ありません。

 本当に不本意ですが、私はあなたの共犯者。

 涙を飲み、王城と勇者を裏切り、監察官の務めを果たせぬ自責の念を胸にしたまま、あなたのお願いを聞きましょう。


 ええ、私はあなたの共犯者ですからね。聞きますよ、聞きますとも。

 例えどれほど涙を流そうと、私の心が張り裂けようとも、あなたのお願(以下略)」




「あんた、ハルトとか言ったっけ?

 本当に、もう勘弁しておくれよぉ……一線を退いた街のおばさんに、どんだけ求めるのさ?


 ああもう、もーっ、野良犬に噛まれたどころか、野良ドラゴンに丸呑みされた気分だよ!

 こんなことになるなんて、ああ私の馬鹿ばか馬鹿、なんて男に引っかかってしまったんだい……はぁぁ」




「あ、兄上、そんな、もうこれ以上は入りませぬ……っ!


 ああご勘弁を、道行く人にも見られて、あああ駄目っ、駄目です兄上!

 耳元でアズサしかいないんだなんて囁きながら入れるなんて、だめっ、だめぇ揉まないで股が裂けちゃう、あっ、入っちゃう、ぁぁああっっ」




――抽選会から、3時間が過ぎた。


 できる限りの準備を終えたオレは、今、試合を前に一人で控室に居る。


 背には荷物で膨れたカバン、腰の後ろにもすぐ取り出せるようにした荷物袋を下げ。

 アズサから押し付けられるように借り受けた刀の鞘を握り、目を閉じてゆっくり深呼吸する。


 やれることは、やった。

 頼れる仲間たちのおかげで、当初の想定以上の準備ができた。

 本当に、みんなには感謝しかない。


 だから。


「――絶対に、勝つ」



 一つ。カーロンを倒し、メイデンである皆を守る。


 一つ。大会を勝ち進み、エリクサーを手に入れてクミちゃんを助ける。


 一つ。そうして、メイデンの命と幸せを守り抜き、オスティンに魔王を倒してもらう。



 そう。この一戦は、メイデンのみんなの平和と命を守るためであり、ひいては世界を救うため。

 そのためなら、このちっぽけな盗賊の命を賭ける事など、安いもんだ。

 武闘大会のルールとシステム上、命を落とす事はないしな。


……ないよな?

 ちょっと不安だ。


 いやいやいや、平常心平常心。


 オレはゲーマー、春山 悠斗だ。

 武闘大会、それもたかが一回戦。ゲームでは、何度も何度も勝ち抜いてきたのだ。

 むしろ、予選を勝ち抜いて決勝トーナメント出場した際は、第一回戦で負けたことは一度もないのだ。


 うむ、やれる。オレならやれる。

 相手は主人公であり、魔剣を握るカーロン。

 だがこっちは、カーロンもオスティンも、何度も何度もこの手で操作してきたゲーマーだ。

 しかも、勝利の女神たるみんながついてるのだ。


 負ける要素は、一つもない!


「よしっ!」


 オレは強く鞘を握りしめ、立ち上がる。


「カーロン。

 オレは、お前のエロゲーを否定する!」


 鞘に入った刀を掲げて、吠える。


 戦意万端、気合十分。


「オレは、オレのエロゲー道に則って、絶対にカーロンを打ち倒す!」




――とまぁ、気合を入れて戦意をみなぎらせるオレの事を。

 いつの間にか部屋に来ていたスタッフが、ずっと無言で見つめていたことを知るのは、それからわずか10秒後のことであった。


「ええ、本当に怖かったんです。

 一人でぶつぶつ呟いたかと思えば、いきなり立ち上がってえろーとか叫びだしますし……

 もうなんなんですか今回の大会。巨漢のハゲが睨んできたり変質者が叫んでたり、あんな控室一人じゃいけません!


 あの、だから……先輩?

 一緒に、付き合ってくれませんか……?



 主人公の活躍により、一人のモブが幸せを勝ち取った瞬間であった。


 変質者扱いされている主人公、良い仕事をしました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] そういえばなんでレベル1のままじゃないとだめなんだろう
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