96 対戦相手はエロゲーの主人公なんだけど、現実世界でえろげーとか呟かれると痛みが留まるところを知らない
「えろ……げーまー?」
啖呵を切ったオレに対し、毒気が抜かれた表情でカーロンが呟いた。
「貴様が助平であるというのが、一体なんだと言うのだ……?」
いや、急に真顔になってそこ突っ込まないで!
さっきまでの狂気に歪んだ顔はどこへやら、きょとんとした顔で『えろ……』とか呟かないでください、なんだか心が痛いです!
これは、突拍子もない発言によって、一時的に侵食から我を取り戻した――とかなんだろうか?
いや、それにしたって。
カーロンがエロゲーマー発言とか、痛い! いろいろ痛い!
「と、ともかく!
どうせもうしばらくしたら試合なんだ、首を洗って待ってるんだな!」
なんだかオレの方が捨て台詞っぽくなっているが、これ以上メイデンである仲間達をカーロンの視界に入れておきたくないのは確かだ。
アズサとベル達を連れて、カーロンの狂気がまた牙を剥く前に尻尾を巻いて逃げ出した。
舞台の方は15分後に第一試合が開始されるということで、舞台を降りた他の参加選手達も観客席や控室、その他好きな場所へと散らばっている。
オレ達5人はセーナ達が確保していた席まで移動し、そこでやっと一息ついた。
ちなみにディーアも席に居ました。へらへら笑いながら手を振ってきたので、アズサ相手に爆弾発言した件も含めてデコピンしておきました(筋力12)
「ふう……
みんな、無事でよかった」
一番危なかったのは、吹けば消し飛ぶオレだったんだが。
それはともかく、仲間達が無事であることに今は安堵した。
「ハルトさん、無茶をし過ぎですよ……本当に。
額の怪我、治しますね」
「ありがとう、セーナ」
セーナの指が触れ、今更ながらに額の痛みに気づく。
だがそれも、セーナの回復魔法によってすぐに温もりに取って替わられた。
「オレの対戦相手であるカーロンは、聖剣と対を為す魔剣を手にした者だ」
前置きなしでぶちまけると、セーナが驚きに目を見開き、アズサもまた眉を上げた。
ベルとターシャはよくわかってないようでハテナ顔、ディーアは全く表情が変わらないので感情が読めない。
「間違いなく強敵で、レベル1ではとてもじゃないが太刀打ちできない。
だが、オレの目的のためには絶対に負けられないんだ」
エリクサーを手に入れる、だけじゃない。
今回、あいつにみんなの事が認識されてしまった。
メイデンである皆を不幸な運命から守る、そのためにもカーロンに負けるわけにはいかないんだ。
オレの言葉に、様々な表情を浮かべつつも皆が頷いてくれる。
「今からオレの試合まで、およそ3時間ある。
この3時間で、カーロンに勝つための準備をしたいんだ。皆、協力して欲しい」
オレ達がぶつかるのは第四試合。
試合の間隔は、たとえ前の試合が早く終わっても、1時間は確保される。
だから、およそ3時間、準備のために時間を使える。
この時間を使って、例え何と言われようとも、オレはカーロンに勝つ!
「わかりました。
私はハルトさんの共犯者。いかなる事でも、あなたの気高い意志に従いましょう」
まずセーナが、その豊かな胸に手を当てて、微笑みと共に頭を下げた。
「ハルトには、あたしがついてないと駄目なんだからね。
任せておきなさい、この超偉大な世界一天才魔法使いのベル様が力を貸してあげるわ!」
「たーしゃも! たーしゃも、ヨゲンシャさん、イッショにイく!」
次いで、ベルとターシャが協力を表明してくれる。
目を向ければ、ディーアも笑いながら、しっかりと頷いてくれた。
「アズサ。
お前の力も借りたい」
「拙者もでおりますか?」
アズサは、オレの仲間じゃない。
この大会に関して言えば、対戦相手になる可能性があるのだし、敵同士と言っていいくらいだ。
だが――
「頼む、アズサ。立場上は敵として、今だけオレのために力を貸してくれ。
どうしても、オレにはお前の協力が必要不可欠なんだ」
言って、深く頭を下げる。
「カーロンに勝つために、どうしてもアズサの助力が必要なんだ。
他でもない、アズサの力が!」
「――わかりました、兄上。
拙者の力をお使い下さい。このアズサ、必ずや兄上の期待に応えてみせましょう!」
どこか紅潮したアズサの力強い返事に、小さく安堵の息をつく。
これで、必要な準備に取り掛かれる。
「みんな、ありがとう。
それじゃぁ、これからみんなにやって欲しいことを伝える。本当に時間がないから、すぐに取り掛かって欲しい」
オレの言葉に頷きを返してくれる仲間達。
そんな彼女たちを見まわして、オレはそれぞれに頼みたいことを伝えていくのだった。
とうぞく「えろげーまー!(きりっ)」
まけんし は 純粋な視線で 尋ねた!
まけんし「えろ……げーまー?
貴様が助平であるというのが、一体なんだと言うのだ……?」
とうぞく「げふぅっ」
とうぞく は 心にダメージを受けた!!