94 黒の魔剣士は主人公なんだけど、エロゲーの方向性が好みじゃない
黒の魔剣士、カーロン。
オスティンと対をなす、もう一人のディバイン・セイバーの主人公である。
ミリリアを救出し、女神の啓示を受けて聖剣を見つける白の勇者編。
それに比べると、黒の魔剣士編のストーリーは開幕からわりとハードだ。
ゲーム開始と同時に、故郷が帝国に攻めこまれた。
カーロン自身も魔剣を振るって戦うが、力及ばず城から逃げることとなり、大陸中央部に向かう船に乗り込む。
大陸中央部、北東の港町についた後は、脱出に手を貸してくれた知り合いの勧めで、追手を避けるために大国フェイルアードを目指して移動。
その途中で魔物に襲われる奴隷商人の馬車を助け、お礼としてターシャを引き取る事となる(実際は、口ごもっている間に押し付けられる)
そうして、ターシャと二人でフェイルアードにたどり着いたところでオープニング終了。
そこから、ゲーム開始となる。
カーロンの旅の目的は、帝国への復讐。
手にした魔剣の意味合いも知らず、具体的な導きや情報もないまま、ただ復讐を目的に、世界を憎みながら生きていく事となる。
そういう背景のため、メイデンとの関わり方もオスティンとは異なる。
セーナやミリリア等のメイデンについては、仲間になる事もなく、その命を奪うことでだけメイデンとの絆を結ぶ事ができる。
通称、黒い絆。
もちろんエロゲー的要素もあるんだが、ぶっちゃけオレは大嫌いです。
その道行きはけして正義ではなく、復讐のため、敵対した相手を滅ぼすためならば容赦はしない。
結果的にオスティンよりも多くのメイデンと絆を結べるが、仲間にできるメイデンの人数はオスティンよりも少ない。
ターシャやベル等、一部メンバーとはオスティンのように純愛で絆を結べるので、破滅一直線というわけじゃないんだけど――
ともあれ、純愛路線が良ければ白の勇者編、それよりももっとダークで暴力的なストーリーが良ければ黒の魔剣士編、ということだ。
そんな背景を持つ、黒の魔剣士カーロン。
パーティ編成についてもオスティンと対になっており、お互いにプレイヤーとして自分が仲間にしなかったキャラを、相手が仲間に迎える事となる。
魔法使いベルと、戦士ネシータ。
僧侶のセーナと、盗賊サイファ。
この2組4人は初期にフェイルアードで仲間になるキャラのため、プレイヤーが仲間にしなかった方のキャラを、相手が仲間に加えているのだ。
(ただしセーナはオスティン限定。カーロンがセーナを仲間に加えることは不可能)
あとはこれに、オスティンなら女騎士のエルマ、カーロンなら元奴隷のターシャを加えた4人パーティが、標準的な初期パーティになります。
間違っても、勇者・女騎士・騎士・老僧侶とか、イレギュラー過ぎて誰も選ばないようなパーティにはしないようにしましょう。
おい聞いてるか、オスティン。イレギュラーなんだからな、バランス悪いんだからな?
エロゲーで、強制メンバーの女騎士以外は男しか仲間に入れないとか、それっていわゆる縛りプレイだからな?
エルマと愛の二人旅よりはずっとマシだけど。
こほん。話を戻そう。
そんな感じで、オスティンと対をなすもう一人の主人公、黒の魔剣士カーロン。
復讐に燃え、他人を憎み、メイデンに害を為す存在であるカーロンの動向については、オレも注意していた。
だが、フェイルアードの酒場で見かけた事もないし、もちろん街中等でも見たことない。
武闘大会に向けての準備も忙しかったし、最近は気にすることもなくなって、正直に言って存在を忘れていたんだが――
「間違いなく、強敵だ」
素質で言えば、勇者であるオスティンと同等。
武器も聖剣と同格である魔剣。
単純な筋力や体力はオスティン以上で、とてもじゃないがレベル1で太刀打ちできる相手じゃない。
ある意味で、アズサ以上に厄介な相手だ。
「お待たせしました、兄上。
拙者の試合は、明日のようでおります」
「ああ、一回戦でアズサと当たらなくてよかったよ」
「まだそんな消極的な事をおっしゃるのですか、兄上。
拙者は今すぐにでも兄上の胸をお借りしたいし、兄上に拙者の全てを受け止めてほしい気持ちで、胸が斬り裂きそうでおりますよ?」
そこ、張り裂けそうじゃないんだ……この東方め。
「オレがアズサよりずっと強くなったら、その時になー」
「むう……では拙者は、その兄上よりさらに強くなっておりましょうぞ」
「なら、いつまでも戦うときは来ないな」
笑いながら答えたら、ちょっと拗ねた顔で強く足を蹴られた。
――って、今ぱりんって言った、ぱりんって言ったぞ!?
こちとらレベル1なんだぞ、やめて下さい死んじゃいます!