93 どうして抽選が行われるのか分からないんだけど、そこに文句言っててもどうしようもない
開会式の時と同じように、スタッフに連れられて舞台へと上がった。
今回は原因不明で倒れるなんてハプニングはなく、青空の下、指示された場所に立って周りを見渡す。
今ここに並んでいるのは、予選を勝ち抜いた24名の選手達。
今日は決勝トーナメントの抽選と一回戦の一部を行うだけなので、シード選手はここには居ない。
「すごい歓声でおりますね、兄上」
「そうだなぁ。
きっと観客達も、朝から待たされて試合が待ち遠しいんだろうな」
抽選の後はすぐに第一試合が始まるということで、満員の観客達から大きな歓声や声援が降り注ぐ。
吹き抜ける春風にも冷めやらぬ熱気が舞台と観客席を包み、今か今かと急き立ててくるかのようだ。
気の早い観客からは、勝てよ負けろよと賭けに狂った奇声も発されている。
ギャンブルで身を持ち崩す観客、よくあると思います。
……一回戦の抽選結果次第では、試合開始前から悲鳴が上がったりするんだろうか。
いや、シード選手は一回戦で出ないし、他に優勝候補みたいな選手は特に居ないのかな?
むしろ、二回戦の対戦相手が不明だから、二回戦開始時に絶叫することになるのかもなぁ。
ギャンブルに狂った人たちは大変ですね。見てる分にはわりと面白いんだけど。
もちろん、オレも昨日のうちに賭けは済ませてある。
だがゲームと違って、リアルでは大量の人混みが物理的な壁となり、券を買うだけでも長蛇の列で非常に時間がかかりました。
あまりの混雑に、オッズ表とか見る余裕もなくて、予定してた券だけ買ってさっさと引き上げたからなぁ。
他の参加者の名前や人気くらい、どこかで確認しとくべきだったかね?
まあ誰が相手であっても、試合する事に変わりはないんだけどさ。
そんな事を考えている間に、スタッフによる簡単な説明も終了。
くじのための箱が持って来られて、一回戦の組み合わせ抽選会が開始となった。
予選の通過順――なんてものはないので、基本的には適当に一列に並んで順番に引くことになっている。
気の早い奴らは少しでも前に行って早く引こうとしているが、大多数は今更慌てる事もなく、今の立ち位置から少し移動して、それとなく列を作った。
オレとアズサは、わりと後ろの方だな。
どうせ選手は24人しか居ないんだ、先でも後でも大差はない。
残り物に福があることを願うばかりです。
列の後方から並ぶ選手達を眺めてみても、すでに一列になっているため、見える範囲はほとんどない。
気になる相手と言えば、精々が頭一つでかいガンゼイオーと、オレの前は嫌だと頑なに固辞されたので、すぐ後ろに並ぶアズサの二人くらい。
この二人だけは、一回戦の相手になりませんように。
……はー、しっかし、なんで抽選が一回戦直前になったり、二回戦の試合が直前で発表になったりするんだろうか。
ゲームと違うせいで、色々と予定が狂ってほんと困る……!
今さらそんなこと言ってても、仕方ないんだけどな。
たかが二十数名。さしたる待ち時間もなく、オレの引く番となった。
「よ、っと――7番だ」
引いた札を確認してから、スタッフに渡す。
オレの見せた札を確認すると、別のスタッフがトーナメント表にオレの名前を掲示した。
先に掲示されていた、オレの対戦相手の名前を見てみれば――
ハルトVSカーロン。
「え……」
そこに書かれていた対戦相手の名前は、カーロン。
オスティンと対をなす、もう一人のディバイン・セイバーの主人公。
黒の魔剣士、カーロンの名前であった。