いちな、魔力測定をする! 1
いちなは、その物々しい雰囲気にギョっとなったがとりあえず失礼しますといいながら部屋に入ると、ドロシーは小声で「がんばってね」と言いながらドアを閉めた。
えっ何を頑張らないといけないのぉ~。
閉められたドアを見つめながらいちなは声にならない気持ちをぶつけた。
ギギギとドアから三人の男性の方に視線をやると、一人の男性が
「あまり緊張しないで下さい。さっ座って、座って」と見た目よりも優しく話しかけてくれた。
いちなは、言われるがままにその声をかけてきてくれた男性の正面に座る様にした。
「さてと、では自己紹介から始めましょうか。私は、魔法師団長のハリス・フルームです。今日はあなたの魔力量の測定と対応してる魔法の測定をさせていただきます。これらの情報がないと住民登録と身分証であるネームタグを作ることができなくて…。ご協力よろしくお願いします。」
ハリスは少し頭を下げた。次に話し出したのは
「初めまして、私は王立警備隊長を勤めています。ラフル・クワンサと申します。昨日会っていると思いますが、アベリーの上司です。よろしくお願いします」必要事項のみ言って再び姿勢を正した。
最後は、
「私は、このクレアシオン王国第四王子のルーク・クレアシオンだ。このエリアの総責任者をしている。今日は、久しぶりのロスト出現と聞いてこうして、あなたに会いに来た。元の世界に戻る方法はないが、あなたが心置きなく過ごせるように配慮しよう」と言っていちなを見ると微笑んだ。
スゲー王子様スマイルだ!金髪と空色の瞳。王子様キター!
真面目な表情をしているいちなの脳内は始めてみる王子様に感動しているのだった。
「あっ、私は高橋いちなと言います。よろしくお願いします」
いちなは一度現実に戻り自己紹介をした。
ハリスはいちなを見て
「いちなさん、それでは早速魔力の検査をさせていただきます」と言うとポケットから透明の水晶みたいな球体をとりだした。
そして、
「いちなさん、すみませんが人差し指で一度くるっと円を書いてもらえますか?」
とハリスが説明しながらジェスチャーをした。
いちなも言われるがまま右手の人差し指でくるっと円を描く。
何も変化がなかった。それをみた、ハリスがうんうんといいながら
「まだ、魔法は発現出来ていない状態ですね。いちなさん、両手をこちらに」
いちなはハリスの言う通りに両手を差し出した。
「この球体は体内にある魔力を強引に引き出す魔道具というやつです。痛みとかはありませんが、不快感が現れる可能性があります。ですが、けっして離して落とさないでください」
これ割れると高いんです。とハリスは笑いながら言った。
こわい、この世界の金銭感覚ないけど、きっと自分じゃ支払えない…。いちなはそう思った。
最後までお読みいただきありがとうございました。