生きた証と死んだ証の両方の意味があるんや 後半
全てが嘘です。火葬の表現があります。苦手な方はブラウザバックしてください。
現実とは一切関係ないです。
今回はゾンビがそんなに出ません。
これは架空ゾンビ系終末ものの火葬であるため現実とは、全く違います。
人の生死観に関係する考えを書いています。
トーカと青年というキャラクターがそれぞれ持つ生死観です。
それでもokな方は読んでください。
血管苦手な人はブラウザバックしてください。
リュックを置いた廃墟ビルに着いたトーカと青年。
リュックを青年に持たせ、トーカとイチはそのビルの屋上にいた。
トーカはリュックから1枚の耐熱性の布を取り出す。
耐熱性の布の上にテツを横たえる。
テツの顔の横にテツが好きだったテツのお母さんのクッキーを置く。
「それは?」
「副葬品、死者があの世に持っていけるもの」
そして、予備の燃料を手に入れ、それを火炎放射機に、セットして火葬を始める。
骨が残るように焼き続けなければいけない。
いいお手伝いが入ったおかげで助かる。
とにかく暑いが二人で交代することで焼き続けることができる。
トーカは持ってきた録音機から音を流す。
「歌ですか?」
「お経、火葬には必要なもの」
イチは珍しそうに録音機から流れるお経に興味を持つ。
風を読み、火炎放射機を持ち、風上に立つ。
トーカはテツの顔見て、別れの言葉を言う。
「ちゃんと、家族の元に届けるからね。」
しんみりして泣きそうになるのを抑え、火炎放射機を構える。
そのことにも興味を持ったのか、イチは不思議そうな顔で見る。
「死体は返事しないのに、なぜ声をかけるの?」
「ここがゾンビ街じゃなければ、ここで遺体関係者が別れの言葉をかけていくんよ。
火葬する前にまだ生きている頃の名残がある体に関係者は声をかけて、その死を受け入れるために必要なこと。」
「では、私も声をかけないといけませんね」
(刀で殺そうとした相手にかける言葉なんて、あるんか?)
トーカはその言葉に疑いの目を向けたが、イチは、罪悪感が少し混じった、塩らしい話し方で話した。
「いきなり襲って、追いかけ回して、申し訳ございませんでした。」
その言葉はテツとトーカに対しての謝罪だった。
イチは協会の猟犬と聞いていたトーカはその行動に混乱した。
トーカの混乱をよそにイチは話しかけてくる。
「別れの言葉を言った後は火葬するんですね」
「そうやで、今から火葬するで、骨になるまで」
そう言ってトーカは火炎放射機からの火をテツに当てた。
テツの体は、火に包まれて行く。
テツの体に掛けた燃料に火がつくのを確認すると、一旦火炎放射器を止めて、イチに火炎放射機を持ってもらい、リュックから数珠を取り出す。
「そのブレスレットは?」
「数珠、こうやって左手に持って、輪の中に親指以外の指を入れて、こうやって、テツくん。遺体に向かって合掌するの」
トーカが合掌をするとそれをイチも真似をする。
「こうですか。これはなんのために?」
「テツくんの死んだ後の幸せを願うため」
そう言って、燃えているテツくんの遺体に合掌する。
「人は死んで終わりではないのですか?
なのになぜ願う」
「生きてる人によってそれぞれ、あの世というものや輪廻というものなどを考えて、別の世界で死者が生きているように考えることで心の支えにすることもあったり、なかったりする」
そして、トーカはあたりに気を配りながら、話し出す。
リフトが再び動くまで、後一時間半、早く焼かなければ、ここから出られなくなる。
テツは10歳、子供だから早く焼けるはずだ。
早く、家族に合わせてあげたい。
「死んで終わり、イチさんの考えも合ってる。
死者に言葉やものを受け取ってもらうこともできへんし、返すこともできへん。
生者の行動が死者になんの影響も与えることができないことは当たり前。
けれども、
生者が前を向いて生きて行くために、死者が生者の支えとなることはできる。
火葬やお骨、お墓などがその支えの形や
その火葬やお骨をやるのがワイの仕事や」
「わかりました。暑い解説ありがとうごさいます。
大変勉強になります。
協会育ちで、それらに関係する知識がないので興味深いです。
もっと教えたください。
オコツやオハカってなんですか?」
ガスマスク越しのその目は輝いていた。
テツの火の勢いが弱ってきた。
火炎放射機をイチに持たせ、テツに火をかけてもらいながら、トーカは説明し始めた。
「お骨は骨、火葬した残った骨のこと。
お墓はその骨を治める場所。
全部、焼け残った本から集めた知識やから、完全な知識ではないけど」
そうして、トーカとイチの間で葬儀に関係する話で盛り上がり、テツを交代で火葬して、お骨にすることができた。
火炎放射器をきり、不燃性の布でテツのお骨を包む。
リュックに詰めて、下に降りて、リフトに乗って、ゾンビ街を出るだけ。
(リフトが動くまで残り30分。これやったら余裕で間に合う)
「トーカさん、ビルの下で騒がしい気配がします。」
イチが張り詰めた様子でビルの下を見る。
ビルの下を見ると、道の様子が変だった。
テツを火葬する前、ビルの道路にはゾンビが4、5体徘徊していたが、そのゾンビがいない。
日が暮れよくは見えないが、ひび割れたアスファルトの地面に血管のような何かが這い広がっていた。
読んでくれてありがとうございます。