逃争中で闘走中やで 前半
これらの内容は現実と一切関係ありません。
全てが嘘です。
流血、戦闘、暴力、ゾンビ苦手な方はブラウザバックしてください。
トーカは血だらけのテツを前に抱えて、青年から距離を取る。
割れたガラス窓の窓ぶちにかかとがあたる。
青年の目は猟犬のようにただひたすらに獲物を追い求める目をしていた。
その目を、横取りされた獲物、テツに向けられる。
眉間に皺を寄せ、ガスマスクのレンズ越しに鋭い視線をトーカに向ける。
「そのゾンビを返せ。ゾンビはみつけたらすぐ殺さないといけない」
獣が唸るような低い声で脅してくる。
そう言って、近づいてくる。
「返さへん、絶対に。他を当たって。ワイはこの子を火葬する」
毅然とした声で、トーカは返す。
トーカは油断していた。
トーカたちと青年の間には、長机が4台置かれている。
「返さないなら、奪い返すのみ」
そう言って、トーカたちに向かって、それらをあっという間に走り飛び抜け詰め寄ってきた。
そして、テツを奪おうと両手を伸ばしてきた。
それに気づいたトーカは青年の腹を蹴飛ばす。
間一髪のところでテツを奪われるところだった。
お腹を抑える青年に背を向け、トーカはテツを背負って部屋の外の廊下に出る。
そして、廊下の奥にある未使用使用期限切れ確定の救助袋の箱を開け、袋の先についている重りを外に投げる。
地面についたのを確認する。
「テツくん、しっかり捕まって、今から袋の中を通って降りるから。」
「ゔん」
テツはもうすぐウィルスで人の意識がなくなっていく。
早く遺言を聞き出さなければ。
トーカたちは救助袋の中に入った。
運良く破れず、つまらずトーカたちは地面につくことができた。
そして、トーカは青年が同じ方法を使って追ってこないように救助袋を燃やした。
「テツくん、走りながらでも聞くから、伝えたいこと言って」
トーカは青年から距離を取るために、とにかくビルから離れたかった。
「ゔん、かぞくにはぼくのぶんもいきて。
おかあさんは、むりしないで。
おとうさんは、うんどうしてね。
おとうと、コウはすききらいしないで、おおきくなってね。
スクラップやをたのむよ。
くやむな。
あのとき、なにもしなかったら。
おまえも、ゾンビになっていた。
おまえを守れてよかった。」
息を継ぐままなく、テツは言い切った。
しばらく反応がない。
「それで、終わり?
終わりなら火葬しやななー」
反応がない。
トーカは止まり、テツを地面に置き、その顔を触り、まぶたを開ける。
その目には、光、潤いがない。
首筋の脈を触るが、脈がない。
テツは死んだ。
ウィルスによる体の変化に耐え切れず。
人の形のまま。
早く燃やさなければ、血の匂いで他のゾンビが寄ってくる。
「嘘やろ」
テツを燃やそうとしたら、火炎放射器が燃料切れを起こしていた。
もちろん、トーカはそんな時のために予備を入れたリュックを持ち歩いているのだが、
その予備をスタート地点近くにある廃墟のロッカーに入れている。
「スピードが遅くなるからって置いてくるんやなかった」
テツを抱えながら、トーカはその廃墟を目指す。
後ろからはテツの血の匂いに引き寄せられたゾンビが6体、トーカたちを追いかけてくる。
脇目を振らずに、前を走るトーカの耳に馬の蹄のような音が聞こえてきた。
前から四肢が草食動物のような棒に変化し、顔が肉食動物のような鋭い牙を持ったゾンビが2体迫ってくる。
「よりによって、ランナーもおるやん」
後ろにはゾンビ、前にもゾンビ。
脇道のない元住宅街一本道の大通り、積んでる。
トーカは、テツを背中に背負い直し、右手に釘ナイフを構える。
この場をどうにか切り抜けなければいけない。
トーカは後ろを振り返り、来た道を引き返す。
動きの素早いランナーとやりあうより、後ろの動きの遅いぬるぬる肌のゾンビ、スラグを囮に逃げたほうがいい。
「ごめんなさい、火葬できなくて」
トーカは6体のスラグの肌を釘ナイフで切り付ける。
それを後ろにトーカは一気に走る。
読んでくれてありがとうございます。
グロ抜きしてない版はpixivに置いてます。