03.フリカ
腕を失ったフリカをラウフェイがアリスやビューレイストとともに訪ねてきたのは、一週間を過ぎてからだった。フリカがラウフェイと二人きりにするように言うと子供たちは素直に出て行ったが、オーディンは不満そうだった。いろいろと疑うところがあるのだろう。
ラウフェイは近くの椅子にゆっくりと腰をかける。
「随分とうまくやったな、フリカ」
ラウフェイは足を組み、近くの机に肘をついて笑う。
過激派の将軍ヨルズが、穏健派の将軍オーディンの妃フリカを襲った事件は、魔族の将軍たちを強く揺さぶった。
家族関係を重視しない魔族のなかで、オーディンが人間のように妃や我が子に執着し、手を出す魔族をなぎ倒してきたのは、よく知られる話だった。ただ将軍たちはそれを今まで冷笑的に見ていた。
将軍同士で魔力量が大きな将軍の子供を食糧として襲うというのはよくあることだからだ。感情の起伏に乏しく、長命の魔族は子供にたいした情をかけない。それで死ねばそれまでで、また子供をつくればいいのだ。
だから息子のバルドルを可愛がるオーディンを他の将軍たちは冷たく見ていた。
だが、ヨルズがオーディンの妃フリカを襲ったことは、別問題だ。魔族は食欲と性欲に固執する。そしてだからこそ、他人の食糧、獲物に手をつけることは上位の魔族にとっては万死に値する。妃のフリカはまさに魔族の食欲と性欲という本質に根付いた、オーディンが寵愛故に得た「妃」だ。
それに手を出した将軍のヨルズがオーディンに始末されるのは、他の将軍にとっても合理的な結果として納得できる事態だった。
そして、フリカはそうした。それを望んだ。
「腕は自分でとったのか」
「えぇ。そうよ。でも、震えるほど怖かったわ。タイミングも計らなくちゃいけないし。やっぱり将軍って嫌なのよ」
フリカは笑いながら泣きそうになってしまった。
ヨルズに攻撃を受けるのは、防御魔術があるとはいえ本当に怖かった。腕を切ることも怖かった。怖くてきっと、今までなら絶対にできなかっただろう。だが、今は違う。そして、その決断を支えたのは、すべてアリスだ。
「歪だったオーディンの防御魔術は、ヨルズの攻撃を受け止めたのか」
「この間アリスがなおしたのよ。あの子、よく視えているわ」
フリカはため息交じりに答えた。
バルドルはまだオーディンの防御魔術が視えないから、ヨルズの攻撃で破れ、フリカが腕をとられたように思っているだろう。オーディンも防御魔術を破ったのはヨルズだと考えているだろう。だが違う。
『なおしておくね。こういう細かいところが綻びになるってよく未来のビューレイストに怒られるんだ』
たわいもなく、アリスはオーディンの防御魔術の構造式の一部を移動させ、形を整えた。フリカにはどうしたら薄い一部が他と同じ厚みを帯びるのかさっぱりわからないが、アリスはもともと莫大な魔力を持ち極めて高い素養を持つ上、未来の魔族の将軍ビューレイストのもとで育っている。
魔族の魔術を、人間で誰よりも知っている。
しかもアリスはヨルズと相対し、怪我をしたフリカとバルドルを転移させるとき、フリカの防御魔術を転移の魔術を一部、阻害するためにオーディンの防御魔術を完全に破壊した。それによりオーディンは、フリカが自分で腕を切り落としたことに気づかなかったし、防御魔術はヨルズが破壊したと思った。
アリスはすべてわかっていながら一言も口にしない。あの子は、驚くほどに聡いのだ。
「・・・でも、仕方ないわよ。私がいなくなった後、ヨルズはバルドルにとって邪魔だったの。ヨルズはこれで終わりだわ」
フリカはラウフェイの言葉に美しく笑って答えた。
ヨルズは過激派の将軍で、オーディンの長らくの妃でもあった。だがオーディンは今、ヨルズを殺す気で捕らえようとしている。
本来、魔族の夫婦間というのは立場と寵愛の二種類に分かれる。だいたい将軍間で関係ができた場合、女側を「妃」と呼ぶ。寵愛故にお披露目をされた将軍の配偶者もまた「妃」と呼ばれる。
ラウフェイは魔王ファールバウティの「妃」だが、将軍でもあるため前者、フリカはオーディンの「妃」だが寵愛だよりのため後者にあたる。魔族は本来感情の起伏に乏しく、性欲に固執するという性質上、本来、複数の夜の相手を持ち、ひとりに固執しない。
だが、固執する者がいないわけではない。
オーディンはフリカに固執した。これは混血で多様な情緒を持つために一定理解に値する。だが、ヨルズは純血の魔族であるにもかかわらず、夫であるオーディンに異常に固執していた。
「ヨルズは変わった女だった」
「変わったって、別に人間なら変わってないわよ」
「純血の魔族としては異常だ。悋気など、な」
ラウフェイは感情の起伏に乏しい純血の魔族の典型で、魔族の本能に根ざした食欲と性欲以外のことに興味がない。夫である魔王ファールバウティとの間にビューレイストをはじめ三人の息子がいるが、夫が別の女に固執しようが興味がない。
だからこそ、同じ純血の魔族であるヨルズが夫の寵愛した妃であるフリカに嫉妬し、殺そうとしたことが「異常」と感じるのだ。だがフリカは「異常」ではないのだろうか。息子のためとはいえ夫の手で別の妃を始末させようとするフリカは、少なくとも「正常」ではないだろう。
「これでオーディンはヨルズを始末するだろう」
ラウフェイの言葉に、フリカはその桃色の唇で弧を描いた。
オーディンは自分の食糧でもある妃に手を出したヨルズを、将軍であり同じように妃の立場を有していたとしても許さない。今、部下たちにヨルズを捕らえるように指示しているし、恐らく優秀なオーディンの部下たちは近いうちにヨルズを確保するだろう。
状況さえ整っていれば、オーディンは穏健派の将軍の筆頭と言うべき存在で、ヨルズは古参とはいえ過激派の将軍のなかでもまぁまぁの力の持ち主、それだけだ。
誰もこの状況でヨルズを助けようなどとは思わないだろう。
「私ひとりなら、目をつぶったんだけどね」
「そうだな。ただあの女は間違いなくおまえの面影を追い、将来にわたってバルドルを付け狙っただろう」
フリカは、もし独り身ならヨルズに目をつぶった。だが、ヨルズは恋敵でもあるフリカの息子もまた殺したいと願っていた。
フリカが死んでもバルドルにはまさに数千年に及ぶ長い将来がある。
もちろんフリカの死後もオーディンが守ってくれるだろうが、何分彼はかなり迂闊だ。その迂闊さでバルドルを殺してもらっては困るということだろう。
「今回の一件といい、オーディンは本当に見落としが多い。バルドルが独り立ちするまで守るには心許ないのよ」
「とはいえ、随分と危ない橋を渡ったな」
ラウフェイの言葉に、フリカは素直に頷く。
「フニンとフギンが予想以上にできなかったことも幸いしたわね」
オーディンは自分の部下である双子の青年フニンとフギンをおいていった。だがふたりはヨルズの奇襲に気づく前にヨルズに襲われて早々に戦闘不能になり、動けなくなってしまった。しかもフリカ、バルドルともに精密な魔力探知を持っていたはずなのにヨルズの奇襲に気づかなかった。
いや、フリカは気づかなかったのではない。気づいていた。こうなるとわかっていて、黙殺した。
「バルドルが帰ってきていたのには驚いたが」
「そうね。バルドルには帰ってくるなって言ってあったんだけどね」
フリカは小さく嘆息する。
バルドルは最近一週間に一度ほどしか帰ってこないのが常だった。魔族の独り立ちは早く十歳前後には自立することが多い。オーディンの領内にはとどまるだろうが、それでも自分で食糧を取り、自分の力で生きていくのだ。
そんなバルドルがフリカの傍から離れないのは、数年ぶりのことだった。
「あの子は頭が良いから、多分、私のしたいことを探ってるのよ」
「・・・ビューレイストは“ノルンの泉”の答えを見つけた」
「どうしてそう思うの?」
「アリスの後悔が残らないことを優先して動いている。今回アリスがおまえたちのもとに駆けつけるのも、リスクがあるとわかっていながら、完全には止めなかった」
「・・・さすがラウフェイの子。早めにビューレイストに話をしなくちゃ。へたをすればあの子に殺されるわ」
フリカはビューレイストの行動の速さと理解力の良さに舌を巻く。じきにバルドルも彼から「ノルンの泉」という鏡の魔導具の効果を聞くだろう。ただそうだったとしても、フリカの最終目標がわかるわけではない。
「・・・それにしてもなんの因果なのかしら。アリスは、利用するのが胸が痛くなるくらい良い子ね。私、あの子が必要だってわかってるのに、思わず逃げなさいって言っちゃったわ」
フリカは姉によく似た亜麻色の髪の少女を思い出す。
利用しようと思って未来から呼び寄せた。あの子はまさに、フリカが運命を変えるための力だ。なのに、ヨルズに襲われたあの瞬間、フリカはアリスに運命を変えてもらわなければならない、つまりその場にとどまってもらわねばならないのに、思わず逃げなさいとアリスに叫んでしまった。
あまりに姉に、似すぎていた。
「姉って、気の強くない人だったのよね。なのに、いざとなったときは強かったわ。私なんて昔から震えていつもちっとも使いものにならなかった」
姉は不思議な人だった。
大人しくて、酷く温厚で、争いは大の苦手、日頃は虫も殺せない顔をして、敵を前にすればあの白銀の杖を持って、一歩も退かない。フリカには、将軍であるヨルズに相対したあの瞬間、アリスが姉のように見えた。
ただ、わかっている。そんな優しく気丈な性格が、魔族を引き入れた最大の原因だったことを。
「・・・なんで、魔族なんて選んだのかしら。もったいない子」
フリカはそう呟かずにはいられなかった。
アリスが未来のビューレイストの妃だということは、わかっている。だが、どうして行き着く先が魔族の男のもとだったのだろう。どうせ生まれ変わるなら、優秀な普通の魔術師として人間の世界で人間と幸せになれる未来もあったはずだ。
それでもきっと姉は、本当はあの男を愛したのだろう。違う未来があるなら、また違うやり方であの男と幸せになりたいと試みたに違いない。
「仕方がない。あの子は、そのために作られた子だ」
ラウフェイはなんの感慨もなく事実だけを口にする。だが、それがわかっているからこそフリカはやりきれないし、あの子にすべてを遺してやろうと思うのだ。
「とはいえ人間の寿命はもう少し延びないのか?魔力量。魔術の腕も良い。あともう少し欲があれば魔王にもなれたかもしれん」
ラウフェイはどこまでもアリスの能力を高く評価している。しかしながら将軍や魔王に関しては、本人のやる気の問題もあるだろう。
フリカはアリスが魔王などおかしくて笑ってしまった。
「アリスは千年生きてもなりたがらないわよ。ビューレイストもそうだけど、そういうタイプじゃないじゃない。それは貴方もでしょう?」
「まぁ、もめ事は非効率で面倒だからな」
ラウフェイは穏健派の有力な将軍だ。争いごとは好まない。だが、嫌っているわけでもない。効率的か非効率かという感情の起伏に乏しい魔族らしい規準に照らし合わせ、物事を決めていく。ただそれはあくまで他のことに興味がないからだ。
「今回のことも効率性故だ。だが、私はそれ以上にあの娘が好ましいと思っている」
ラウフェイがぽつりとこぼしたのは、アリスの能力外の評価だった。
「え?好ましい?貴方の口から初めて聞いたわ」
「あぁ。あの気弱さと気丈さが興味深いな。実に不思議だ」
無表情のまま紡がれる「興味深い」にフリカは目を丸くする。ただラウフェイはいつもどおり平坦な声音で続ける。
「まぁ、些末な興味だったが、協力した価値は十分にあった」
「なら良かったわ」
フリカは白銀の檻のそばに置かれた白銀の文様に彩られた姿見に視線を向ける。
ノルンの泉という魔導具は、運命を変えるという逸話があるが、起動されたことはない、とされる。だだが、その効果は古い魔術書や碑文に残っており、実際には起動されたことがないわけではない。
この宮殿もそうだが、この地はかつてエルフに支配されていた。魔導具「ノルンの泉」はその時代の名残であり、エルフの血筋に連なる者でなくては使えない。フリカが簡単にこの魔導具を起動できたのは、母親がエルフだったからだ。
ただこの魔導具を実際に使用して運命を変えるには、莫大な魔力を対価として差し出さねばならない。しかもそれは時空を歪めるほどの魔力だ。そんな莫大な魔力などフリカにはありはしない。それに乗ったのが、将軍で一番の莫大な魔力を持つラウフェイだった。
「ごめんね。私は未来が見えるとはいえ、かなり断片的な話ばかりで」
フリカの予知は兄とは違い、断片的にしか見えない。その不確定な情報で乗ってくれたラウフェイには感謝している。
だがラウフェイは穏やかに笑う。
「かまわん。私は満足だ」
アリスが見られて良かったと、ラウフェイは断言する。
「あの小娘に似過ぎていて驚いたが、精神的に繊細なくせに図太い。そういう点ではあの小娘とは正反対だ。あの気丈さと図太さが気に入った」
「・・・そうね。確かに見た目だけで、ちっともお姉様には似てないわ。でも、優しいところだけは一緒」
運命を変えるための駒として、利用することになる。きっと悲しませることになる。でも、フリカはアリスを呼び出すと決めた。
『お姉様が、お姉様のせいよっ!姉様のせいでみんな死んだのよ!!』
紫色の瞳を見ひらき、呆然とした面持ちだった姉を今も覚えている。
真っ白な顔で、色を失った唇で、謝るだけで反論ひとつしなかった、できなかったのだろう。純粋な人だった。同時に無邪気すぎるほどに無邪気な人だった。だから、裏切りが信じられなかったのだろう。いや、知ってしまったからこそ、耐えられなかった。
姉に、どんな罪があっただろう。
村も家族もすべてを放り投げて、なにもかもかなぐり捨てて選んだ男が、故郷を滅ぼしたと知ったとき、それを知らされ、同時に妹から罵られた姉は、なにも悪くなかった。ただ家で穏やかに男を待っていただけだった。
その男の手が自分の同族の血にまみれているとも知らずに。
「安心したわ。未来でもバルドルとビューレイスト、アリスは三人ですごく仲良くやっているみたいだもの」
「オーディンよりはな」
フリカが言えば、ラウフェイが付け足す。
「あの人はいつもいらないこと言い過ぎなのよ。悪い人じゃないんだけどね」
「馬鹿だからな」
「戦いのセンスは悪くないんだけど」
「それもなかったらもはや見るところがない」
ラウフェイの評価が容赦ないのは、またオーディンと何かやり合ったのかも知れない。同じ穏健派の将軍だが、ラウフェイとオーディンはそれなりに話すが、会話内容はまったく親しそうには見えない。常にラウフェイが淡々と返し、オーディンが感情的に起こるのが常だった。
いや、オーディンは誰とも折り合いが良くない。悪い人ではないのだが、すぐにけんか腰になるし、いらないことを言うからだ。
「・・・アリスにいらないことを言わなきゃいいけど」
アリスは温厚だから、オーディンが何を言っても怒らないだろう。だが、きっとバルドルとビューレイストが恐ろしい形相で反論するはずだ。あのふたりは将来的には相当手強そうだから、オーディンが負ける日が来るかも知れない。
それを思えば、フリカは死ぬのが惜しくなる。だが、どうせどんなに長生きしようと思っても、フリカはそこまで生きていられない。
「どちらにしても、未来のことは私たちに関わりのない話だ」
「そうね」
ラウフェイの言葉に、フリカは目を伏せる。
「おまえはどうか知らんが、私はもう十分に生きた。やはり、ビューレイストの出産はまずった。あの子の魔力の質のせいで、肉体が劣化を免れなかった」
ラウフェイは自分の動きの悪くなった足に視線を向けた。
戯れで出産した子供は莫大な魔力量と壊滅的な質を持って、ラウフェイの子宮から身体機能を蝕んだ。通常、魔力がある限り魔族の肉体は再生する。だが、その再生速度は限りがある。ビューレイストを生んでからも、彼が残した置き土産はじわじわとラウフェイの身体機能を喰っていくことになった。
「魔族は肉体的に頑強だから、平気だと思ってたわ」
フリカは軽く頭を傾ぐ。
「私も思っていたさ。腹のなかで早々に魔力を封じておくべきだった。気づいた時には遅かったがな」
「まぁでもバルドルの時はラウフェイの知識のおかげですごく助かったわよ」
バルドルも生まれながらになにもかも焼く白い炎を持って生まれてきた。だが、ラウフェイと将軍のなかでも身体機能のエキスパートであるシヴのすすめで、フリカは妊娠初期のうちにバルドルの魔力を一部封じた。
それが功を奏した。恐らく、ラウフェイの例がなければフリカはお腹の子供に焼き殺されていただろう。
「焦ってビューレイストから二人産んでみたがいまいちだったから、無理するものではなかったな」
終わりが見えたとき、ラウフェイは自分の血筋を残すためにビューレイスト以外にも子供を望んだ。多い方が生き残る可能性が高まるだろうという安易な発想だった。それなのに、結局長男のビューレイストが一番優秀だと考えているらしい。
「手厳しいわね。ほかのふたりもすごく強いじゃない。とくにロキはいいんじゃないの?」
フリカはビューレイストの弟であるロキとヘルブリンディも見たが、なかなかのものだ。とくにロキはビューレイストにも匹敵するだろうと思う。だが、ラウフェイは僅かに眉を寄せた。
「あれは、質がファールバウティに似ている。オーディンもだが、他人と生きられるような性格をしていない」
「・・・なるほどね」
フリカは納得して息を吐く。
魔王ファールバウティとオーディンは異母兄弟にあたる。その血筋はしっかりとロキに受け継がれたらしい。
「まぁ見た目はともかく、ビューレイストの性格は貴方に似ているわ。それなりにやっていけるでしょう」
「これから混血の魔族が増える。それなりにやっていけねば、生き残れん」
ラウフェイは静かに未来の行く末を見ながら、紺碧の瞳を細めてフリカを見る。
「おまえのおかげで娘の記憶を肴に残った寿命を楽しめそうだ」
フリカはラウフェイの言葉に少し驚いた。
アリスが未来に帰れば、アリスに関わった過去の者たちの記憶はノルンの泉によって失われるはずだ。それにたいして未来の関わった者たちの記憶がよみがえる。だが、アリスが生きる未来まで生き残ることのできず死ぬ者たちの記憶は、そのままのはずだ。
それなのにラウフェイは、記憶を保持する術を見つけたらしい。
「ラウフェイってチートよね」
「まぁ、おまえよりは私の寿命はまだ残っている」
終わりが見えたと言っても、それは魔族から見た終わりで、人間の一生分くらいの時間はある。
「私に最期の興を提供したことだ。子供のお守りくらいしてやろう」
「ありがとう。ラウフェイ」
フリカはラウフェイに笑って礼を言った。
終わりを知る者同士のささやかな同盟による舞台は、まだ半分も終わっていなかった。
・ラウフェイの死とビューレイスト(エトヴァス)やバルドルの将軍就任が同じくらいです
おかんずはそれなりにアリスを可愛がっています。
とくにフリカは末っ子で、姉がいてべったりだったので、妹や娘がほしかったタイプです。
また非常に女の子、女の子した性格であると同時に兄姉が双子だったため、年下の女の子への憧れは強いです。
アリスの不精者さにぎゃーぎゃー言いつつ、娘の服を仕立てたり、構うのが楽しくて仕方ないです。
アリス自身も大人しいので、服装も髪型もされるがままで好みも不満もない。
誘えばどこでも一緒についてきてくれる。なんでもにこにこ一緒にやってくれる。
そりゃもう可愛くてたまらないです。
アリスもなんとなくそれがわかっているので、厳しくきつく言われても、フリカからの言葉はあまり気にしていません。
アリスとフリカ
「お母様、ここの刺繍どうするの?」
「これはね。左から回して、こうやると綺麗なのよ」
「そうなんだ。ありがとう」
「・・・」
「・・・」
「お母様ー、」
「ん?」
みたいな感じで、八時間くらい過ごせる二人です。




