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帰宅部員は眠らない  作者: 閣下の牛乳
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第七話

 僕は答えてこう言った。

「思い入れってところは重要だよな。特にガチャに関しては。

 僕がガチャをやるときもね、なんかこう、パチンコのようなギャンブルと似た感覚なんだけれど、手に入れるまでが一番楽しくて熱中できてさ、でもいざ手に入れてしまうとすぐ関心が向かなくなる。ひどいときなんて、キャラの特別ボイスや個別ストーリーすら確認せずに半年放置していたさ。

 どうも人間っていう生き物は、手に入れるまでの過程を楽しんで、本当に重要な成果や結果をおろそかにするようだね。

 キャラに恋しているんじゃなくて、ガチャに恋している人間が多いように思える」

「手に入れたいという欲望を恋だと勘違いして、いざ手に入れると興味を失う姿っていうのは何ともあさましいものだな」

「それに加えて、手に入れさせてくれる存在、手に入れやすいもの、所有欲や支配欲を簡単に満たしてくれるものに安易に流れるのはみっともない。

 真のオタクとは言えないね。

 オタクなら、いかなる犠牲を払ってでも手に入れて、一生愛で続けるべきだ。

 遊びの狩りの感覚でいられたら困る。

 それだったら、ガチャだけのゲームでもやればいいんだ」

「そういうガチャを体験するだけのサイトって、すでになかったか?」

「あったよ。前にやったことがある」

「どうだった?」

「普通に面白かった。僕も案外『過程』の虜らしいな」

「あはははは」

 そして僕はまた、弾くことができる数少ない曲を演奏し始めた。今度はアニソンだ。


 すると今度は足音が二つ聴こえてくる。さらにサックスの音色まで混ざっている。

 現れたのは、サックスとトランペットが扱えるオタク、相馬 左近と、テニスのできるオタク、佐藤 丞であった。


 こうしてオタクが集まれば、話すことと言ったら今期のアニメのことか今までの『嫁』遍歴だと、相場が決まっている。

「まて、最近では『嫁』の代わりに『推し』と言うそうじゃないか。オタクコンテンツが乱立する今、嫁よりも推しの方が我々の感情に近いんじゃないのか?」

 そう相馬が言った。

「なるほど、これは失敬。では改めて、皆の今期のアニメにおける、推しを聞いていこうじゃないか」

 皆がめいめい、熱く語ってくれた。その中でも相馬が一番皆の注意を引いた。

「というわけでこれがボクの推しだ」

「「「おおお~」」」

 鷲頭「これはまたずいぶんと…」

 僕「たいそう立派な性癖をお持ちのようで…」

 佐藤「ヤンデレ、いや、今は『愛が重いキャラ』というんでしたっけ、こういうの」

 相馬「そうそう。いや~こういうの、こう、キュンキュンするというか、非常に萌えるね」

 僕「僕は昔ヤンデレキャラが好きだったからわかるなぁ、その気持ち」

 鷲頭「一昔前から流行っていなかったか? こう、ツンデレ以外の突飛な性格の萌えを追求する過程でさ。あの頃はただグロテスクさを消費する、ホラー映画みたいな、安っぽいショッキングさだと勘違いしていたけど。いまなら理解できる気がする」

 佐藤「鷲頭のような人が多かったからなのかねぇ。『愛が重いキャラ』って言ったら、かつてのヤンデレみたいな流血沙汰にはならないキャラな気がする。束縛や献身や愛情の暴走も、ちょっと違う描かれ方だよな」

 僕「ガチのヤンデレは重すぎるっていうか、精神安定上よろしくないっていうか。そこまでショッキングにしなくても伝わる表現技法が生まれたのは喜ばしいことだなぁ」


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