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明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
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66〔変態オヤジの妄想アイテム〕

明神男坂のぼりたい


66〔変態オヤジの妄想アイテム〕 


       


 キャー、可憐な女子高生が裸にされてる!


 そう言うと「アホか」という声が返ってきた。声の主は、お父さん。

 朝、洗面所に行くと、お父さんがガルパン二人の制服を脱がせている。


 分からない人に説明。


 お父さんは売れない作家で、ほとんど一日部屋に籠もってパソコンを叩いている。で、作家にはありがちなんけど、身の回りには「なんで、こんなものが置いてあるんだ!?」というもんがゴロゴロしていて、まるでハウルの部屋みたい。


 そのガラクタの中で、ひときは目立ってるのが、作りかけの1/6の戦車。で、戦車だけだったら子供じみてるけど、納得はいく。


 どうにもキモイのは、その作りかけの戦車に1/6の制服着た女子高生二人が乗ってること。こないだ来た美枝とゆかりは「かわいい!」って喜んでたけど、あれは社交辞令のお愛想……。


 すると、お父さんはビシっと指を立てた。


「お愛想だと思ってるだろ。伊東さんと中尾さんはちゃんと分かってるんだ。お母さんが部屋片づけてワヤにしたとき、お父さんがポーズと表情直したの見て感動してただろ。お愛想であの感動は出てこないぞ!」

「あの、一つ聞いていい?」


 あたしは歯ブラシに歯磨き付けながら聞いた。


「だけど、なんでガルパン?」

「発想だ。戦車と萌キャラという、まったく別ジャンルのものをくっつけて肩身の狭い戦車オタクと、萌オタクに市民権を与えた。そればっかりじゃない。大震災で落ち込んだ茨城県の街を活性化させたんだぞ。『アマちゃん』と並ぶ震災関係の作品としてはピカイチだと思う」

「けどガルパンには震災の『し』の字も出てこないけど」

「そこが、押しつけがましくなくて、いいとこなんじゃないか。舞台を大洗にしただけで、年間何十万人いう観光客を増やした『いばらきイメージアップ大賞』も受賞したぞ。物書きとしては、大いに刺激を受けるところだ!」

「だけど、そんなの作る側の戦略じゃないの、ほら、ナンチャラ制作委員会とかメディアミックスとかの」


 お父さんは、正面を向いて改まった。


「……世の中に100%の善意なんか存在しない。企業の思惑と計算があって、それで地方の街が活性化する。それでいいんじゃないか? 明日香だって、来年は大学受けるんだろ。それって純粋に勉強しようと思ってのことか? あん?」

「それは……」


 どうも、元高校教師と作家という理屈こね回しのW属性のせいか、丸め込まれそうになる。


「だけど、お父さん」

「なんだ?」

「その前はだけただけのお人形さん、なんとかしてくれない。人形でもセクハラだよ」

「明日香が歯を磨いてるから、しぶきが飛んだらかなわないからな。はやく、顔洗え」

「ムウ……」


 あたしは、ガシガシと歯を磨いて顔を洗った。するとお父さんは、待ってたとばかりに人形を裸にする。

 制服を脱いだ人形は、下着代わりに白い水着を着ている。


「シリコン素材は色写りがしやすいんでな、保護のため……」


 人形に軽いショックを受けた。


 脚の長さは人形のデフォルメなんだろけど、ボディーは成熟した女そのもの。お父さんは、その水着も脱がしてスッポンポンにすると、お湯で、さっと洗って、ドライヤーで乾かすと、ベビーパウダーみたいなのを、小さなザルに入れて振りかけた。


「こうすると、元の元気な姿に戻る」

「お父さん、やっぱ変態だ」

「ハハ、物書きは、みんな変態。誉め言葉だなあ……」


 こたえんオッサンだ。


 部屋に戻って考えた。


 制服いうのは女を隠すようにできてる。なんでもないような子が、水泳の授業なんかで水着になると、同性でもドキってすることがある。友だち同士でも、あんまり、そういう話はしない……ただ美枝みたいな子もいる。で、ゆかりといっしょになって心配なんかしてる。



 だけど、心配してること自体が、自分自身の問題から逃げる口実……ああ、あめだ、落ち込む。


 こういうときは母親譲りのお片づけを発作的にやる。


 中学のときのガラクタを整理。あらかた捨てようと決心すると、中三のときにあげたバレンタインのお返しの袋が出てきた。きれいなポストカードと小さなパンツが入っていた。


「あ、人形にぴったりかも」


 そう思って、一階へ。


「お父さん、よかったら、これ……(;'∀')」


 こんどは生首の模型バラして脳みそをシゲシゲと眺めている。


 やっぱりただの変態オヤジ……。




※ 主な登場人物


 鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生

 東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問

 香里奈          部活の仲間

 お父さん

 お母さん         今日子

 関根先輩         中学の先輩

 美保先輩         田辺美保

 馬場先輩         イケメンの美術部

 佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 巫女さん

 だんご屋のおばちゃん

 さつき          将門の娘 滝夜叉姫

 明菜           中学時代の友だち 千代田高校

 美枝           二年生からのクラスメート

 ゆかり          二年生からのクラスメート


 

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