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明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
55/109

55〔ガンダム式遠足〕

明神男坂のぼりたい


55〔ガンダム式遠足〕 


 



 学校の連休はカレンダー通り。


 だから、今日みたいな日曜と昭和の日の間の月曜も学校がある。


 こんなのテンション下がって勉強にならない。学年の始めは思ったけど。今日は遠足……もとい、校外学習。


 一年の時はバスを連ねて奥多摩で飯ごう炊さんだった。あれはダルイ。240人でやってもおもしろくない。ああいうのは気の合ったもの同士で個人的にやるから面白い。


 しかし、たいていの学校は集団行動訓練ということで、昔の軍隊みたいなことを平気でやらせる。


 民主教育はどこに行ったんだ! ちょっと屁理屈。


 屁理屈言ってみたくなるくらいにつまらない。作るものは、最初からカレーライスと決まっていて、材料も炊飯用具もみんな貸してもらえる。これって手間かからないようで邪魔くさい。今はレトルトでいいのが、いくらでもある。ご飯用意して、かけたらしまいなんだけど、タマネギ刻んで炒めるとこからやらくちゃならない。目にはしみるし、手についたタマネギの臭いは抜けないし、鍋と飯盒の後始末大変だったし。


 ところが二年になると、クラス毎に好きなところに行ける!


 やったー(^▽^)/


 だけど、うちのクラスはガンダムが勝手に決めちまった。


 一応決はとるけど、こんな感じ。


「……ということで、異議のある者は居ないな。では、これで決定!」


 で、あたしらは、桜木町の駅で降りて山手を目指す。隣の二組は港を目指して山下公園。


「あんなものは中学生までだ。高校生らしいコースでいこう!」


 ガンダムの指揮で、あたしは横浜異人館街を目指す。山下公園とどないちゃうねん……そう思ったけど、ガンダムの目論見は違った。


「ホー」

「イヤー」

「すごいね!」


 と呟きながら、あたしらは途中の道でヒソヒソと歓声をあげた。


 歓声いうのは、大きな声で言うもんだけど、ここではヒソヒソになる。


 なぜって、周りは……ラブホで一杯!


 ガンダムは、黙々と先頭を歩いている。


「これは、実地教育だね」


 中尾美枝が言う。


「できたら、中も見学したいね」


 顔に似合わん伊藤ゆかりが大胆なことを言う。


 異人館街に着いたら、ガンダムが短く注意。


「おまえら三年もしたら大人だ。だから大人のデートコースを選んだ。特に何を見ろとは言わん。これから各館共通のチケットと昼食代渡す。好きなところを回って好きなもん食べてこい。じゃあな、せいぜい勉強してこい!」


 副担任の福井先生と二人で手際よく配る。これから二時まで自由行動。


 あたしらイチビリ三人娘は、さっきのラブホ街に行って、社会見学。美枝は休憩とお泊まりの値段をチェック。


「やっぱり、横浜のラブホはオシャレだねえ」

「わ、ここお泊まりで二万円もするよ!」

「きっとスゥイートなんだろうねえ」


 そこにクラスの男子が四人やって来た。


「惜しいなあ、三人だったら、ちょうど人数合ったのに!」


 美枝が大きな声で言うと、男子はきまり悪そうに行ってしまった。


 外観をみてるだけやから二十分ほどでおしまい。あたしらも異人館に入った。


 異人館には、それぞれエピソードがある。


 ある異人館は、ドイツのお医者さんが住んでいて、戦争中も留まって、空襲で怪我をした人らの手当をしてた。だけど、二十年の五月にドイツが降伏すると、日本は、このドイツ人のお医者さんを家族ぐるみ軟禁した。ちょっと日本人の嫌なとこを見た気がした。


「あ、この話って『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』で、はるかのお母さんがエッセーにした内容だと思うわ」


 ゆかりが、そう言ってアマゾンの書籍をチェック。


「840円……中古だと1円」


 お昼食べて集合したら、みんなで港の見える丘公園に行った。   


 螺旋階段付きの歩道橋がある。ここに来るのはちょっとしたハイキングだったけど、着いたらロケーションはバッチリやった。


「ここは、夜景がすばらしい」


 ガンダムが短い解説。


「ちょっと前までは、ここの手すりに愛のあかしに鍵かけるのが流行った。今は、向こうに専用の鍵かけがあるからな。マナーは守らなくっちゃならない」


「先生、なにか思い出あるんじゃないですか?」


 美枝が言う前に、あたしが聞いてやった。


「ああ、カミサン口説いたんがここだ」


「ウワー!」と、三人娘。


 いつか関根先輩と来てみたいと思ったぞ。

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