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明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
43/109

43〔御茶ノ水幻想・2〕 

明神男坂のぼりたい


43〔御茶ノ水幻想・2〕 


       



「じ、地元の者です!」


 叫ぶと、どう見ても大河ドラマの第一回目に出てくる脇役みたいな(のっけに主役出てこない)オッサンが、刀かまえたまま聞いてくる。



「……地元とはどこだ!?」

「えと、外神田二丁目、神田明神の男坂下ったとこです」


「神田明神ならば、いかにも地元ではあるが……それにしても、異様なる風体……」


 オッサンが刀を抜いて尋問してるもんだから、人だかりができてしまう。


「面妖なやつ……」「女か……?」「何ごと?」「きつねか?」「タヌキか?」「どん兵衛か?」


「板橋さま、そやつは?」


 野次馬の一人がオッサンに尋ねる。オッサンは板橋というらしい。


「これこれ、見世物ではないぞ。仕方がない、付いてまいれ」



 よかった、さらし者になるところだった。


「それ!」


「うわ!?」


 板橋のオッサンは、わたしを軽々と持ち上げると、自分と一緒に馬に載せて走り出した。


 水道橋近くだと思うんだけど、くねくね曲がって、切り通しや林を過ぎたので見当がつかない。


「よし、下りろ」


「うわ!」


 襟首を掴まれたかと思うと、地面に着地して、目の前には板塀で囲まれたお屋敷の門がある。


「付いてまいれ」


 大きいけれど瓦も載ってない、粗末な門。


「どこを見ておる、こっちだ」


 てっきりお屋敷の中に入るのかと思ったら、柴垣っぽい垣根の向こうを指さす板橋さん。


 ブン!


 ヒ!?



 垣根の向こう、いきなりおっきいアサカリの頭が振り上げられる。


 セイ!


 振り下ろされたかと思うと、ガシっと音がして、薪の切れが飛び上がった。


「連れてまいりました」


「おう、ごくろうであった」


 ズサ


 ひねた金太郎みたいなオヤジがマサカリを切り株に突き立てて振り返った。


「……鈴木明日香であるな」


 え?


「そこに掛けろ」


 ひね金オヤジは、あっさり、あたしの名前を言って、もう一個の切り株を指さし、自分は薪束の山に腰を下ろした。


「言っておくが、ひね金ではないぞ」


 え、声に出てた? てか、目つき悪くって、めっちゃ怖いんですけど(;'∀')


「儂は平将門である」


 え……ええ!?





※ 主な登場人物


 鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生

 東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問

 香里奈          部活の仲間

 お父さん

 お母さん         今日子

 関根先輩         中学の先輩

 美保先輩         田辺美保

 馬場先輩         イケメンの美術部

 佐渡くん         不登校ぎみの同級生

 巫女さん

 だんご屋のおばちゃん

 明菜           中学時代の友だち 千代田高校





 

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