表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
104/109

104〔仲間美紀の波紋〕

明神男坂のぼりたい


104〔仲間美紀の波紋〕 


     


 カメラのランプが赤に変わると、座長の嬉野クララさんが静かに語り始めた。


「AKR47座長の嬉野クララです。今日は、みなさんにご心配、ご迷惑をおかけしたことを、まずお詫びいたします。ファンの皆さんのお引き立てと応援でAKR47はここまでくることができました。そして6期生は特にみなさんのご支援のおかげで『VACATION!』、空前のヒットをさせていただきました。わたしたち1期生をはじめメンバー、スタッフは大変喜んでおりました。しかし、みなさんの応援、ご支援に、まだ十分なお応えをする前に、大変な事故を起こしてしまいました。6期生の仲間美紀が、過労から自傷事故を入院先の病院でおこしてしまいました。幸い発見が早く、大事には至りませんでした。SNSや新聞、テレビを通じてご承知のこととは存じますが、仲間美紀の異変に気づき、いち早くその救助をしたのは、6期生チームリーダーの鈴木明日香でした。わたしたちは6期生はもとより、まだまだ未熟ではありますが、前を向く気持ちと、ファンのみなさんの気持ちを第一に、頭を打ちながらではありますが日本を代表するアイドルグループとして精進していく所存です。仲間美紀は、しばらくの間休養させます。このような大事を起こしてしまいましたが、AKR47は一日も無駄にせず、みなさんのお気持ちご支援に沿えるよう努力いたします。ご心配、ご迷惑をおかけしたことを、いま一度深くお詫びいたします」


 クララさんが頭を下げて、カメラはあたしに向けられた。


「わたしは、AKR47のメンバーになって二月あまり。チームリーダーになって一か月ちょっとにしかなりません。しかし、どの世界でもリーダーは、その立場になった時から十分に注意を払い、チームを引っ張っていく責任があります。仲間美紀の事故は、たまたまわたしが一番早く気が付き、対処できましたが、仲間をはじめメンバーの統率やケアに気が回らなかったのは、わたしの責任です。今後は、こういうことの無いように、いっそうの努力に努めます。これからも、AKR47、なにとぞよろしくお願いします」


 カメラがロングになり、あたしとクララさんのバストアップになり、二人そろって深々と頭を下げ、カメラのランプが消えた。


 ああ、なんとかお詫びのご挨拶は言えた……と、思ったらADさんが『自分の名前』と書かれたカンペをしまうところ。


 そうだ、あたしってば、所属も名前も言ってなかった(;'∀')。


「だいじょうぶよ、テロップで出てるから」


「あ、でも、すみませんでした!」


「それは、わたしじゃなくて、ADさんと、笠松さんに。ほれ」


 肩を叩かれて、ADさんと、スタジオの隅に立っている笠松Pにお詫びする。ADさんは恐縮して、逆に頭を下げられ、笠松Pには子供みたいに頭を撫でられた。


 で、クララさんへの挨拶が中途半端なのを思い出し、取って返して再び頭を下げる。


「ありがとうございました、クララさん! 6期のミスにつきあわせてしまって!」


「座長は、あたしよ。こうするのが当たり前。だけど美紀ちゃん、大したことなくって、ほんとによかったね。動画に撮られてなかったら、こんな大騒ぎにならずに済んだんだろうけど。ま、これで一区切り。前向いていこ、前向いて。ね!」


「はい!」


 録画したものは、すぐにSNSに流されていた。これで、少しは収まるだろ。


 だけど、ウソが一つあった。



 美紀は……休養じゃなくて引退。



 だけど、それは伏せた。カッターナイフで手首切って自殺しかけ、そのことで引退いうことになったら『VACATION!』そのものができなくなってしまう。プロモも二回撮った。オリコンチャートも順調。ここで止めるわけにはいかないんだ。


 あたしとクララさん、そして笠松プロディューサーで、仲間美紀の病院に向かった。ダブスタかますために……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ