表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
103/109

103〔The Summer Vacation・10〕

明神男坂のぼりたい


103〔The Summer Vacation・10〕 


           



 結局、仲間美紀は辞める決心をしてしまった。


「……でも、あたしを引き留めてくれるのは、明日香さん自身のためなんでしょ?」



「……そだよ、あたしのため。やっと軌道に乗りかけた6期、このまま仲間を失ったら、みんなへの影響が強すぎる。あたしの使命は一人も欠かさずに、きちんとメジャーに、AKRの看板にすることだからね」


 ちょっと一面的すぎるけども、こういうドライな言い方の方が、決心してしまった美紀にはいいと思った。


 ついさっきまで、六期生一番のイイコで通してきた美紀は、いわばきれいごとに押しつぶされてしまったんだ。そんな子にきれいごと的な説得や慰めをしても、なにも入らないと思った。


 別に、計算して言葉にしたわけじゃないんだけど、息を吸って吐いたら、こういう言葉になった。


「それで、いいと思うよ……」


 ガバ!


 美紀は、精一杯の笑顔を作ったかと思うと、ベッドの蒲団を頭からかぶって泣き出した。


 ガバ!


「も、もうほっといて!」


「美紀!」


 あたしは、ベッドの布団ごと美姫を抱きしめた。


 ウワーーーン!


 抱きしめると、たった今のドライな決心も一瞬で崩れてしまって、ただただ、いっしょに泣くことしかできなかった。




「あの子は精神的にまいってる。とにかく辞めさせるのが一番。治療はそれからです」




 お医者さんの意見で、笠松プロディユーサーも、市川ディレクターも納得した。


 気が付くと嗚咽してるのは、わたし一人。美紀は、枕に顔を埋めたまま寝てしまった。


「あ……」


 入ってきたお医者さんは、なにか注射の用意をしていたけど、コクっと頷いて、そのまま出て行った。


 取りあえず、眠らせることがいちばんだったんだろうね。


 でも、ドラマじゃないんだから、これで目覚めて丸く収まるようなことはない。


 取りあえず、ホッとして、駆けつけてきた美紀のお母さんと交代した。



 あたしは後悔した。


 6期は、もうみんな家族だ! 姉妹だ! そして、あたしが一番のお姉ちゃん! そう思ってた。だけどなんにも分かってなかった。危ないのは和田亜紀と芦原るみだとばっかり思てた。リーダーなのに、あたしはなんにも見えてなかった。


「まあ、一人二人抜けるのは織り込みずみだから、気にすんな明日香」


 市川ディレクターはビジネスライクに、一言でしまい。下手に慰められるよりは、気が楽だった。


 夜はステージが終わった後、ローカル局のトーク番組があった。


「美紀のことには触れないように。こっちのディレクターにも話してあるから」


 市川Dに言われた通り、あたしもパーソナリティーも美紀のことは無かったみたいに、プロモロケの話やら、アホな話で盛り上がった。



 家に帰ったら、日付が変わっていた。


 メールのチェックもしないで、ざっとシャワー浴びて、そのまま寝てしまった。



 あくる日はスタジオ入りには時間があるので、美紀の病院へ行った。面会時間じゃなかったけど、ナースステーションに寄ったら「もう落ち着いてるからどうぞ」て言われて病室へ。


 ところが、部屋に入ったら美紀の姿が無かった。


―― 明日香、トイレに行け! ――


 さつきが心の中で叫んだ。


 トイレに行くと、個室二つが閉まっていた。


 一つはノックしたらすぐにノックが返ってきた。もう一つをノック……反応が無い。


―― ここだ! ――


 さつきの声に体が反応した。ヒョイとジャンプして、個室の上に手を掛けると、自分でも信じられないぐらいの身の軽さで個室の中へ。


 美紀は手首を切ってぐったりしてたけど、あたしの姿を見ると暴れだした。


 血まみれになりながら緊急ボタンを押して、美紀のみぞおちに当て身を食らわせた。


 当身を食らわせるなんて、やったことなかったけど、これはさつきのしわざだろうね。


 切って間が無かったので、美紀は助かった。


 このことは、秘密にすることになったけど、血まみれのうちと美紀をスマホで撮ったドアホがいて、あっという間に動画サイトに投稿され、手におえないことになってしまった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ