表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明神男坂のぼりたい  作者: 大橋むつお01
102/109

102〔The Summer Vacation・9〕

明神男坂のぼりたい


102〔The Summer Vacation・9〕 


                      



 時差ボケしてる間もなかった。


 ハワイのロケから帰ってくると、そのまま毎朝テレビの『ヒルバラ』に出演。選抜6人が前で、あとの6期生は後ろの雛壇。



 当然トークは選抜に集中。


 AKRに入って2か月ちょっとだけど、差が付いたなあ……とは、まだ思わなかった。


 口先女では自信のあたしだけど、8分の間に、MCの質問受けて、プロモの話を面白おかしく話して、22人の子みんなに話振るのはできない相談。


 だいいち進行台本がある。いちど出してもらった関西のテレビは、「ここで突っ込む」とか「ここボケる」ぐらいのラフで、あとは成り行き任せいうとこがあって、ほとんど自分のペースでやらせてもらえた。


 初のメインゲストの『ヒルバラ』は東京の番組、台本から外れることはNG。タイミングになると、必ずADのカンペで指示され、否応なく台本通りに進行させられる。


「もっと面白~くできたのになあ」


 カヨちゃんが楽屋に戻りながらささやきながら、小さくファイティングポーズ。一瞬みんなで真似すると、すれ違う局の人や出演者がクスリと笑う。


 そーだよ、こういう自然なノリだよ……と思っても収録は終わってしまってる。


 楽屋に戻ったら局弁食べながらメールのチェック。ゆかり、美枝、麻友を始めあたしがAKRに入ってからメル友になった子たちに「ただいま。時差ボケの間もなくお仕事。またお話しするね!」と一斉送信。 ファン向けのSNSには「疲れた~」「ガンバ!」なんちゅう短いコメントと写メを付けて、あたりまえだけど一斉送信。


「さあ、あと10分でユニオシのスタジオに戻って夜のステージの準備。いつまで食べてんのよ。チャッチャとやってよチャッチャと!」


 チームリーダーのあたしは、いつのまにか市川ディレクターや、夏木先生の言い方、考え方が移って同じように言うようになった。みんなんも認めてくれてるし、チームもまとまってきたんで、これでいいと思ってた。


 バスでスタジオに戻るわずかの間に3人もバスに酔う子がでてきた。


「ちょっと、席代わってあげて! 舛添さん酔い止め!」


 女同士の気安さで、3人のサマーブラウスやらカットソーの裾から手を入れてブラを緩めてあげる。薬飲ませて、気を逸らせるために喋りまくり。3人もなんとかリバースすることもなくスタジオに着いた。


 でもね、バスの中で酔いが伝染。10人近い子らがグロッキー。


「ちょっと休ませた方がいいよ」


 カヨちゃんの一言で決心。


「三十分ひっくり返ってなさい。しんどい子は、薬もらって少しでも寝とくといい」


「よし、明日香。その間に打ち合わせだ」


 市川ディレクター、舛添チーフADと夏木先生ら大人3人に囲まれて、ハワイでのことを中心に反省会と今後の見通しについて話し合う。


「一番落ち込んでるのは誰だ?」


 市川ディレクターの質問は単刀直入だった。


「和田亜紀と芦原るみです」


「じゃ、カヨといっしょに支えてやってくれ。6期生はスタートが早かった。まだ気持ちがアイドルモードになり切れてないと思う。なんとか取りこぼさずに、VACATIONを乗り切って欲しい」


「分かりました」


 短時間だったけど、有意義だと思った。短い会話の中で、現状の確認と展望、これからの見通し。そして、なによりもこれから6期生全員を引っ張っていかなきゃという責任感と期待が市川さんらと共有できた。


 みんなの様子を控室に見に行って、カヨちゃんたちと相談して、休憩時間をさらに30分延ばした。


「じゃあ、6期。ハワイで一回り大きくなったところを見せるぞ!」

「「「「「「オオ!」」」」」」


 控室で円陣組んで、テンションを上げた。


 休憩時間を30分余計に取った分、レッスンの時間は減ったけど密度は高かった。この時まではいけると思ってた。


 六期は、まだまだ前座だけど、AKR始まって以来の成長株だと言われてる。


 負けられへん!


 30分間、VACATION!、TEACHERS PETなんかのオールディーズのあと21C東京音頭。間を、あたしとカヨちゃんのベシャリで繋いでいく。


 なんとか、アンコール一回やって、失敗もせずに終われた(^_^;)。


 で、楽屋で、仲間美紀が倒れた。全然ノーマークの子だった。


 口数は多くないけど、明るく愛想のいい子で、今まで不平を言うことも疲れた様子を見せることも無く頑張ってきた子だ。


 酸素吸入しても治らないので救急車を呼んだ。


―― あたしは、何を見てたんだろ ――


 ピーポーピーポー ピーポーピーポー


 やっと芽生え始めたリーダーの自信が、遠ざかる救急車のサイレンとともに消えていく……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ