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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死ぬほどモテない帝国一のハンターが雷に打たれ、「狩り」とは何かを忘れる話

作者: 茶畑の逆襲

生まれて初めて小説を書いてみました。

読んでもらえると死ぬほど嬉しいです。

ポイントを入れてもらえるともっと死ぬほど嬉しいです。

テーラーは、魔物を相手どるハンターである。

魔物をバタバタ狩って巨万の富を築き上げて帝国最強のハンターと呼ばれ、国で一番デカい都の外れに途方もない豪邸をおっ立てた。

色々と残念で結婚こそできていないが、腕っぷしで人々の畏怖と尊敬を集め、女以外の全てを手に入れた男。

それがテーラーである。


そんなテーラーもこの間、ついに運命の人(だと彼は思った)に巡り合った。


先日、彼はブラブラと街を歩いていた。

花屋の前に差し掛かった時、店先で働くある店員に目が止まった。

その店員は、金色の長い髪を後ろで束ねており、たおやかな手で一生懸命に花の世話をしていた。


(う、うおっ! かわいい〜〜〜〜〜!!!)


彼女の名はジョセフィーヌ。

愛嬌のある笑顔と朗らかな性格で人気の、17歳の少女である。


(なんだあの可憐な女性は! あっ! 今、目が合いかけた気配がしたぞ! もしかして...俺に気があるのか?

 ん? 手に持っている花は ...黄色のチューリップか。なるほど、俺へのプレゼントといったところか。)


だいぶ自意識過剰な彼が、彼自慢のリーゼントを撫でつつ気持ち悪い妄想をしていたら、いつの間にか彼女は店の奥へと入ってしまっていた。


(おやおや、俺と話すのがそんなに恥ずかしかったのか。まあいい。

 次会った時に気持ちを確かめ合って、彼女を受け入れてあげれば良いだけだ。)


と、そんなことをニヤニヤしながら考えたのであった。

ちなみに黄色いチューリップの花言葉は、「望みのない恋」である。



しかし、ブサイクで知られるテーラーである。よっぽど気の利いた告白をするべきであろう。

そこで、自意識過剰ではあるが、鏡を見て絶句できる程度には美的感覚はある彼は、顔以外の部分で自分の男っぷりをアピールすべく、今日も草原で愛のセリフを練習するのであった。


「ああ、ジョセフィーヌ! 毎朝俺にスープを作ってくれ!」

 ...違うな。」


「ああ、ジョセフィーヌ! 俺と同じ墓に入ろう!」

 ...これもイマイチだ。」


「ああ、ジョセフィーヌ! けっ、けけこけけっけけけけけっ、結婚してくださいぃぃっ!!

 ...よし、完璧だ。」


彼は自身満々にそう呟くと、ニヤッと笑って、


「さてと、告白のセリフもバッチリだし、渡すラフレシアも決めた。あとは着ていくタキシードにドクロの刺繍を入れれ『ピシャアアアアアアア!!!』ぐあああああああああっっ!!」


何の因果か。勝率0割の戦いに自信満々で挑もうとする彼の頭に突如、

 雷が落ちたのである。


彼の自慢の赤いリーゼントヘアは ジュワッ! とあまりにも情けない断末魔をあげて一瞬で黒コゲになった。

戦う際の彼のトレードマークであり、町のカップルの待ち合わせ場所の目印にさえなった彼の相棒ともいうべき存在が、親指を立てる間も無くジュワッと消滅である。

 

さらに、彼の煌びやかな装飾品も、見るも無残なボロ切れへと成り果てた。

装飾品に関しては、石油王の口座を何個ハッキングすれば良いのかもわからないほどの金をかけていた彼だが、まばたきする間に全部パーである。


そんな彼の元に一人の男が駆け寄った。


「お、おいっ! 大丈夫か!? ...ってテーラーじゃねえか!!」

「ん...」

「おお、気付いたか! 俺だ! お前と何度も一緒に戦ったマクローだよ!」


マクローも、テーラーと同じくハンターである。

帝国でトップクラスの実力を持つマクローは、テーラーと共に戦うことがよくあった。

ボロボロのテーラーを見かけて親切にも声をかけた彼だったが、


「は、はあ...」


テーラーの返事は要領を得ない。

テーラーはマクローから視線を外すと、不思議そうな顔をして、まるでここがどこだかわかっていないみたいにキョロキョロと辺りを見回しだした。


「ま、まさかお前...」


マクローは震えている。そんなマクローの様子に気づいて、テーラーは


「あの... あなたは一体誰で、私は一体誰なんでしょう?」


テーラーの記憶は吹っ飛んでいたのである。


***


「いや... 全く覚えてません。」

「そうか... よく通った酒場に来れば、記憶も戻ると思ったんだけどな〜 チクショー。

 いやホント、力になってやれなくてすまねえな...」

「はあ...」


二人はハンターとしての仕事終わりに毎回のように通った酒場へと来ていた。

まだ昼にも関わらず酒場には多くの人がいたが、誰一人はしゃぐこともなく、テーラーを心配そうに見つめている。


「うむ... どうすれば良いのやら...」


とビール腹をさすりつついうのは、この酒場の店主である。

ちなみに彼は、タキシードにドクロの刺繍とかしない系男子のため、先日めでたく結婚した。

彼の左手薬指には、とんでもなくデカいダイヤモンドが埋め込まれた結婚指輪が輝いている。


「そうだな〜。ここがダメとなると...」

「ふむ... そうじゃ! テーラーとマクローで、狩りに行ってみるというのはどうじゃ?

 テーラーも狩りに生きた人間。 何か思い出すことがあるかもしれぬ。」

「おお!そいつはいい! そうと決まれば行くぞ!テーラー!」

「うぅっ、結婚指輪... 頭が... はい?狩り?なんですか?」


マクローはテーラーを連れ、近場の草原へと向かった。


***


「えっ、殺すって... あのウサギをですか?」


街の近くの草原。 

テーラーは、生まれたての子鹿にコールド負けしそうな弱々しい構えで、ウサギの魔物と対峙している。


「そうだ!いくらウサギが小さくって可愛くったって容赦しちゃいけねえ!

 ほら、みろ! 奴のキバに血がついてるだろう? あれはつい最近人を襲った証拠だ!」

「そうですか... あのウサギが...」

「ウゥ〜、ガウガウッ!」


突如、ウサギがテーラーを敵とみなして襲いかかってきた!


「う、うわっ!」


よろめくテーラー。しかし、長年の経験か。

反射的に剣を引き抜くと、流れるような剣さばきで一瞬でウサギを両断した。


「おいおい、記憶は失っても、実力はそのままってことか... あっ!おい!右だテーラー!」


テーラーが右を向くと、今殺したのより一回り大きいウサギの魔物が襲いかかってくるところだった。


「ウガアアアアアアアアアッッ!! ......ギャウンッ!」


テーラーがとっさに繰り出した剣が正確にウサギの急所をつき、ウサギの命を刈り取った。


「うわ〜、相変わらずすげえ剣術。ってかあれだな、多分!今襲いかかってきたデカいのは、ちっこいウサギの親なのかもしれねえな。」

「...親、ですか。」

「おう!大方、帰ってきたら自分の子供が殺されてて、激昂して襲ってきたってとこだろうよ。」

「なるほど...」


テーラーが戸惑った表情でウサギの死体を見つめる。


「おっと、いけねえいけねえ!早いとこ血抜きして毛皮剥がねえと。」

「剥いで... どうするんです?」


マクローは作業をしながら答える。


「決まってるだろ!売って金にすんだよ!まあウサギにはワリーけどよ!ガハハ!

弱い奴が強い奴に狩られて、弱い奴が強い奴に奪われる。可哀想と思っちゃいけねー。

これが世の中の当然なんだ。

お前だって山ほど魔物を狩って、すげえ家も建ててたんだぜ?」

「当然... すげえ家...」


マクローが鼻歌を歌いながら呑気に作業を進めていく。

つい最近人を襲ったらしい子ウサギが、我が子の仇を取ろうとして牙を剥いてきた親ウサギが、マクローの慣れた手つきで解体されていく。


あのウサギの皮はどうなるんだろう。売られて誰かの服になるんだろうか。

その誰かは、そのウサギがどうやって殺されたか、どんな奴が殺したかなんて気にもせずに服を着るんだろうなあ。

弱者が強者を蹂躙した証拠であるその服を。


テーラーは、血のついた彼の剣を、じっと見つめていた。


***


「へえ... 記憶喪失ですか...」

「そうなんです。だから今は、見るもの聞くこと、全部新鮮で...」


マクローとは、町を歩くうちにはぐれてしまった。


町をあてもなく歩いていると、雰囲気の良い花屋があった。

今は、そこの店先で美人な店員と話をしているのである。

彼女の名前は「ジョセフィーヌ」というらしい。柔和な顔で、よく笑う。


「あっ、そういえば最近、私結婚したんですよ〜。」

「ああ、そうなんですか。」


はにかむ彼女の手には、とんでもなくデカいダイヤモンドが埋め込まれた結婚指輪が輝いていた。

幸せそうに話をする彼女はとても温かい表情をしていた。

彼女はテーラーの拙い話を頷きながら聞いてくれ、時には笑ってくれた。

テーラーは、彼女を優しそうな人だと思った。


「...周りからは、そんなに年齢の差あって大変でしょ?、なんて言われるんですけど、全然そんなことなくって。

 むしろあのぽっちゃりしたお腹とか本当に可愛くって〜〜。

 あっ、蚊だ。」


パチン!と音をさせ、ジョセフィーヌは自らの首筋を叩く。蚊を捉えたのだろう。赤い血が首に広がった。


「...なんで蚊を殺すんですか?」

「えっ?だって刺されたらかゆいじゃないですか〜。蚊も蚊で大変なんでしょうけど、、ちょっぴり迷惑ですからね〜〜。」

「 ......そうですか。」

「もう!そんなのいちいち気にしてたら生活できなくなっちゃいますよ! 気にしない気にしない!」


ジョセフィーヌが太陽のような笑顔を見せる。


自分の手で、一つの命を奪っておきながら、ニッコリと笑う。あの蚊はまだ生きられただろう。それを、「ちょっぴり迷惑」なだけで殺し、平然としている。

この場合は、蚊が弱者でジョセフィーヌが強者。それだけなんだろう。

テーラーは、何も言わずずっと黙っていた。


***


「おい!テーラー来てねえか?あいつと町ではぐれてよ...」

「いや、来ておらんぞ?」


もう時間はすっかり夜である。

数時間前にテーラーとマクローが訪れた酒場を、マクローが一人で訪れていた。

酒場には、昼間より多くの人が来ていて、テーラーが記憶を失った話を聞いては、皆悲しそうにしていた。


「くそ、あいつ... 記憶もないのにどこ行ったんだか..」


その時、酒場のドアが開き、テーラーがフラっと現れた。


酒場の面々は彼の姿を見つけると、みんな胸をなでおろした。

とりあえず、記憶をなくしたままどこかにいってしまったテーラーが見つかって、ホッとしたムードが広がった。

マクローがテーラーの元へと駆け寄り、声を掛ける。


「どこいってたんだ!テーラー!お前とはぐれたから心配して... ん?


 ...血じゃねえか。」


テーラーの服は、血に染まっていた。


「何があったんだ?テーラー。あの後もう一回狩りにでも出かけ...

 ..........え? ................あれ? 

 ......ガハッ!」


ドサッ。

マクローの体が崩れ落ちる。


横たわる彼の体は上半身と下半身が綺麗に別れていた。


ざわめく酒場。


「おいっ!テーラー!何をやっておるんじゃ!」


事態を飲み込めていない混乱した声で、酒場の店主が叫ぶ。

いつ抜刀したのか。剣から血を滴らせたまま、テーラーは言う。


「いや、皆さんが言うところの狩りをしてみようかと思いまして。

魔物をわざわざ倒して金に変えなくても、人間を殺して奪えば、その手間が省けますからね。」


テーラーは、剣を鞘に入れず、近くにいた男の胸に素早く突き刺した。

ブシュッ!と音がして、血が勢いよく噴き出す。男がその場に倒れる。

テーラーは今殺した男が身につけていたネックレスを手に取ると、自分の懐にしまった。


「あ...ああ......」


あまりの事態の異常さに、動けるものは一人もいなかった。

テーラーは帝国一の実力を持つハンターである。どうやったってテーラーには敵いっこないのだ。


いまからテーラーに殺される。


全員が理解した。


「あれ、皆さん。どうしてそんなに震えているんです?

 弱者が強者を殺して奪う。こんなの日常茶飯事でしょう? ...まあいいか。


 さて、次は誰にしましょうか。」


のんきにそう言う彼の手には、とんでもなくデカいダイヤモンドが埋め込まれた指輪が輝いていた。

読んでくれてありがとうございます!

ポイントを入れていただけた方の家の庭に油田が見つかりますように...

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