表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空色レモネード  作者: トウコ
第一章 自転車泥棒とワルツを
1/17

プロローグ

 むかしむかしあるところに、ひとりの男の子がおりました。


 その子はいつもひとりぼっちで、ちょっと寂しそうでした。たまに笑うと女の子みたいに可愛らしいその子とは、年長さんではじめて同じ組になりました。

 わたしは最初、その子がなんでいつもひとりなのかわかりませんでした。ちょっと気弱だけれど、ほんとうに普通の男の子なのに、アヤちゃんもコウくんもその子を仲間外れにしていました。

 どうして一緒に遊んであげないのと聞くと、みんな口をそろえてこういいました。


「あの子はへんな子だから一緒にあそんじゃだめなの」


 どうして変なんだろう。だってあの子の言うことは全部ほんとうのことでしょう。

 アヤちゃんのお友達がすぐに椅子をふりまわして暴れだす子だってことも、コウくんが好きなミっちゃんは隣の組のトモくんといつか結婚するんだって思っていることも。

 ぜんぶぜんぶほんとうのことでしょう。

 だれも口にはしないけど、ぜんぶ。


 わたしは気がつきました。そうか、きっとあの子は少しだけ不器用なんだ。気がつかなくてもいいことに気がついて、言わなくてもいいことを言ってしまうだけなんだ、と。

 ただしくてほんとうのことでも、たまには見ないふりをする方がきっともう少しうまくいく。わたしはあの子に、そう教えてあげようとしました。

 わたしがしているように、なにもいわないで、ただ笑って、そうすればきっと大丈夫だって。


 それなのにあの子は、わたしが一番知りたくなかったことを、

 気づいていながら知らないふりをしていたことを、

 あまりにもまっすぐに、

 わたしの目を見て、

 あまりにもじゅんすいに、

 なんの悪意もなくことばにしたのです。


 あの子は、なにひとつわかってなかった。わたしの気持ちは、なにひとつ伝わってなかった。

 あの子が、わたしを「わたし」でいられなくしたのです。わたしの人生をこわしたのはあの子なのです。


 だからわたしは言いました。




 カズくんなんて、大嫌い。


 カズくんなんて、死んじゃえって。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ