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博士と立野くん

アラビックヤ○トを買い占めろ!その2

作者: 星野☆明美

液体のりの主成分PVA(PVAL)が白血病や癌治療に役立つというニュースでもちきりだった。

前回の白血病治療の場合は、細胞を培養するための溶媒として注目されたが、今回は、PVAが、癌細胞にヨウ素をとどめる役割を果たし、放射線治療がスムーズに行く!ということで取り上げられた。しかし実用化にはまだ5年から10年はかかるだろうとのこと。


「液体のりを飲まないでください!だって」

立野くんは真顔でニュースを見ていた。

「そういう人、いるんだな」

言ってて、一番に博士の顔が思い浮かびました。

きちんと筋立てて説明すればあの人も立派な科学者のはしくれだ。きっと人類に貢献することだって可能なはずなんだ!

立野くんは研究室のひきだしから買い占めて買い置きしていた液体のりを一本取り出して、まじまじとそののりの容器ごと見つめていました。

「なんでも使い方さえ間違わなければ、きっといい世の中になるのに…」

「立野くん、ちょっと貸してくれたまえ」

ひょいと博士が液体のりを取り上げました。

「なんに使うんですか?」

「マルの写真を現像したからアルバムに貼るんじゃよ」

大学ノートが分厚くなっていました。それだけ猫のマルの写真でいっぱいなのです。

「立野くん」

「はい?」

「わしが液体のりを買い占めたのはなんでかわかるかね?」

「…。あのときは、マルの抜け毛を固めるって騒いでたじゃないですか?」

「きみはわかっとらん」

「?」

「あの時からやがて一年経つが、なぜきみは自分で実験をやらないんだね?」

「えっ?」

「仮にもここは科学研究所だ。助手のきみが実験をして、成果を世に問うこともあってしかるべきじゃないのかね?」

博士の正論に立野くんはたじたじとなりました。

「僕は助手だから、勝手やったら困りませんか?」

「なにをいうのかね!」

「は、はいっ!」

「今すぐ自分の研究テーマを決め給え!よそに遅れを取るな!」

液体のり…だよなぁ。あ、でも博士は?

「なんでご自分でやらないんですか?」

「わしは忙しいんじゃ」

あ、逃げた。

単にめんどくさいだけじゃあないのか?

立野くんはそう思いましたが、ある意味チャンスです。研究テーマも見えてるし、器材は研究室になんでもそろっています。

「男なら一度くらい偉業を成したいよな?なあ、マル」

にゃあん。博士から逃げ回っている猫が、博士がいなくなった研究室に入ってきて立野くんにゴロゴロいいながらすり寄ってきました。

立野くんはマルを抱っこして可愛がりました。

「なにをやっとるのかね?時間は惜しくないのかね?」

戻ってきた博士がパシャリとスマホで立野くんと猫を写真におさめました。

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