表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/56

強さを隠しながら弱さを演じる訓練


結論から言う。

エリスに騎士団に入団したい意向を伝えると、猛反対された。

それはもうケチョン、ケチョンに罵倒された。

セリフはあえて書かないが、並みの人間ならゲロ吐きながら地に額をこすりつけて転げまわっているレベルだった。

俺は騎士団には入団しないと告げると、ようやくエリスは元のエリスに戻ってくれたようだった。


その代わりとして、提案してくれたのが、剣の腕を鍛えてくれるとのことだった。

俺はその提案を了承した。


森の中で木刀を手にエリスと相対する。

本物の剣は腰に携えているが、練習では木刀を使用していた。


「遠慮はいらないから、どこからでも掛かってきなさい」

エリスの掛け声に逡巡していると、向こうから斬り掛かってきた。

エリスの動きは大分手加減されているが、並みの人間なら敵わないのは明確である。


明鏡止水のスキルを使うと、エリスの動きがゆっくりになるので避けるのは簡単だった。

だが、エリスに勝ってはいけないと感じた俺は、一芝居打たねばならなかった。


俺が考えた訓練手法として、最初の一太刀、二太刀程度なら避けるもしくは受け止める。

後は徐々に追い詰められて、攻撃を生身で受けて激痛により降参する手法だ。

ケガをしたらエリスに回復魔法で手当てしてもらう。その繰り返しだ。

適度にパターンを工夫することで、弱くても頑張っていると思ってもらえるように演じるしかなかった。


仰向けの状態で、頭をエリスの膝枕に乗せて、回復魔法をかけてもらっていると、エリスがふと呟いた。

「アンタって意外に一瞬だけ太刀筋が見られていると思ったら、そうでもないように見える。弱いように見えて、その底が見えない気がするのよね。」

「意外と勘だけはいいかかもしれないわね。これは鍛え甲斐がありそうだわ」


「でも、騎士団に入るのは絶対にダメ、アレクが言ってくれて嬉しかったけど、あなたを含めて民を守るのは私の使命なのだから」


俺は心の中で、言葉では言い表せない痛みを感じていた。

その痛みの正体がわからなかったし、エリスの回復魔法でも癒えることはなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ