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勇者見習いの力

強引な彩芽にダンジョンの1階層へ連れてこられた俺はポケットから短剣を取り出して気を引き締める。


「彩芽も武器があるなら……」


いつのまにか彩芽の手に装飾のない真っ白な剣が握られていた。

俺は剣を指差しながら疑問を口にした。


「それ、どこから取り出したんだ?」

「この剣はブレスレットに変わるんだ」

「おお!」


彩芽は説明しながら剣を真っ白なブレスレットにした。

流石ダンジョン。何でもありだな。


「ちなみに職業はなんだった?」

「勇者見習い」

「え?」

「勇者見習いだよ」


な、なんだと!?

トピックの1つに勇者に対する記述はあった。

確か☆5職業勇者は☆3職業勇者見習いで何らかの条件を達成しなければなれない上に、勇者の素質(35億人中1人いるかどうかというほどの才能)がないと見習いにすらなれない超レア職業!

希少性だけでもトンデモないが、勇者といえば物語の主人公でチートと相場が決まっている!

彩芽がそんな勇者だなんて!?


と、ここで俺は今まで狂った俺が見せてきた夢の内容が頭をよぎった。夢の中で勇者だった美女はどこか彩芽と似ていた。

これは何か関係が……


「おーい!早く来てよー!」

「あっ、待てよ!1人じゃ危険って言い出したのはお前だろ!」


いつのまにかブレスレットを剣に戻して、ダンジョンの奥へと進んでいった彩芽を追いかけた。


○●○●○


1時間ほど俺は足でスライムを潰しながら、彩芽は剣で確実に弱点を突きながら洞窟の中を進んでいると地下へ続く階段を発見した。

水球の短剣はタダのスライムごときには温存だ。というか、身体が水で出来てるから効かなそう。


「1階層にはスライムしか居なそうだしレベルも上がりにくいし降りよっか」

「え?」

「ん?どうかした?」


おかしい。

俺がソロで挑戦した時は5時間ぐらいは走り回っても見つけられなかったのに……

いや、というかボスは?

あの巨大スライム倒さなくて良かったの?

俺は動揺しつつも彩芽に返事をする。


「いや、なんでもない」

「そう?」

「あぁ、気をつけて降りよう」


巨大スライムが落とす水球の短剣をもう1つ欲しかったけど、仕方ない。

俺は2階層の敵であるオークが突然槍を投擲してくる可能性も考え先頭を歩くがーー


「え?」


階段の先の光景に本日何度目か分からない間抜けな声が漏れる。

2階層の光景は1階層と変わらず洞窟だった。


「何ぼさっとしてるの?

早く進んでよ」

「あ、あぁ」


彩芽に押されて階段から離れていくが、昨日のように階段は消えることなく存在し続けている。

釈然としないままモンスターのいない一本道を歩いていると分岐点に辿り着いた。


「右と左どっちにいく?」

「うーん」


いつのまにか隣にいた彩芽に尋ねる。

彩芽には勇者補正でもあるのか運が良いから最短で次の階段への道も選んでくれるだろう。事実、1階層でも迷う事なく進んで階段を見つけていたからな。


「どっちでも変わらないと思うからハジメが決めて良いよ」

「そうか。ならクラ○カ理論の右だな」


即答で右の道へ足を進めると彩芽が呆れたように口を開いた。


「良くその理論使ってるけど、それって人間の本能みたいなのを逆手にとる人がいて初めて成功するからダンジョンみたいな自然物には意味ないよ」

「ん?自然物?

ダンジョン発生の仕方からして、良くあるダンジョンマスター的な存在が造った人工物みたいなものじゃないのか?

というか、何か知ってるのか?」


自然物という言葉に引っかかり、思った事がそのまま口から出た。


「あ、ううん!

ほら、ダンジョンの中って洞窟みたいじゃん?だから、自然物っぽいなって思っただけ!それより早く進もう!」

「あ!押すなって!

もし敵が出てきたら危ないぞ!」


背中を押され疑問に対し話を逸らされた気もするが、まあどうでもいいや。

とりあえず、周囲に注意を払うとーー巨大な芋虫のようなモンスターを発見した。

どれぐらいの大きさかというと、大きめなバランスボールぐらいだ。

俺は一先ず未だ背中を押してきている彩芽に小声で静止させる。


「ストップ彩芽」

「!」


俺の小声に反応してくれた彩芽は俺を押す手を離し、目の前にいるモンスターを見て身構えた。

俺と彩芽は別に虫が苦手なわけじゃないが、流石にこの大きさのイモムシには顔が強張る。

幸いイモムシは後ろを向いていて俺らには気付いていない。

炎纏の短剣に炎を纏わせようとすると彩芽に止められた。


「待って、短剣で切ってバラバラにしたら昼食が食べられなくなるからやめて」

「やめてって言ってもどうするんだ?

それはお前の剣でも一緒だろ?」

「ううん、私に任せて」


彩芽は剣をもったいない左手をイモムシに向かって突き出して……

まさか!魔法!?


「ライトボール」


彩芽の言葉と共に左手からイモムシと同じ大きさの白い光の玉が飛び出しイモムシがそれにぶつかると消滅した。

そう、消滅したんだ。

一瞬でイモムシが消え、イモムシのいた場所に煙が出た。


「ドロップアイテムは毛糸の塊?

良かった。スライムみたいに抜け殻じゃなくて」


煙が晴れるとそこには倒したのはイモムシなのに何故か毛糸の塊のようなものが落ち、どこか彩芽は安心したような顔をした。

しかし、俺はそんな事よりも彩芽の使ったライトボールという魔法に心を奪われていた。


「なんだよアレ!?

ライトボールって魔法か!?

魔法だよな!?どうやって使うんだ!?」

「わっ!ちょっと近いって!

それにうるさい!」

「いて!」


彩芽に拳骨を喰らい頭を抑える。


「声につられてモンスターが寄ってきたらどうするの!?馬鹿!」

「うっゴメン」


その注意の声も中々大きいと思うが心の内に収めグッと堪える。


「それでアレは魔法か?」

「はぁっ。うん、さっきのは魔法だよ。

勇者見習いのスキルの1つ【光魔法】で覚えたの」


彩芽は溜息を吐きながら教えてくれた。


「効果はMPを消費して、さっきのライトボールみたいな質量を持った光を自由自在に変化させて操れる。こんな感じにね」


彩芽は左手から野球ボールサイズのライトボールを出して剣や槍といった武器から犬や猫のような動物の形を作った後それを消した。


「ちなみに、さっきの大きさで消費するMPは1でイモムシを倒した時は5ぐらいかな。

形を変えたり動かしたりしてもMP消費は変わらないよ」


なんだよそれ!

水球の短剣で同じ大きさの水球を作るには大体MP10ぐらい消費しないといけないし、ライトボールの威力は多分水球を簡単に超えている。


「ズルい。勇者ズルい」


昨日の夜はオーク相手に水球の威力で喜んでいた俺は肩を落とした。


「いじけないで!さっさと進むよ!」

「はーい」


こうなったら寝る前とか1人でダンジョンに潜って力をつけてやる。

目標はライトボール以上の火力!

俺は密かに目標を立て、彩芽とのダンジョン攻略を進めた。

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