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立っていられないほどの絶望

俺は炎に包まれた。

しかし、熱さは感じず。

俺の身体と服は燃えなかった。


なんだこれ?

オークキングを燃やした炎なのに、俺に被害がない?


オークキングが煙になると身体が一瞬熱くなった。レベルアップだ。

レベルアップの効果なのだろうか、骨が折れて使えなかった左腕の痛みが引いて普通に動かせそうだ。


レベルアップの不思議な効果に驚いていると狂った俺は炎纏の短剣を振るった。

すると俺を中心に大体半径10mのところに存在していた炎は消え去った。

森はまだまだ燃えている。


「さてと、終わったな。色々と聞きたいこと言いたいことがあるのは知ってるけど。

感覚的にもうすぐ俺はまた意識の底へ沈む。

多分、しばらくは身体の主導権も奪えないだろうな。

というわけで無茶しても助けられないから、そのつもりでな!弱腰で臆病な俺!」


「おい待てよ!

……はあっ、マジで消えやがった」


狂った俺が色々と早口で俺に語りかけ終わると本当に主導権を返してきた。

とりあえずオークキングのドロップアイテムを拾おうとオークキングが居た場所を見た。


「1階層のボススライムを倒した時と同じように階段もあるのか」


どういう原理か考えるだけ無駄だろうが、オークキングが居た場所には地下へと続く階段が出現していた。


「先にアイテムだな」


階段を後回しにしてアイテムを拾う。


「今回も短剣か。うっ」


いつものようにアイテムの情報が頭に入ってきた。

これはどうやら☆2の武器のようだ。

名前は硬化の短剣。

MPを流すと硬化する。

MPを1消費する毎に1分間、効果が持続する。自分の意思で解除可能。


「またしても☆2のくせに使えなさそうな……いや、待てよ?」


そういえば炎纏の短剣も全く似たような説明だったな。確か、MPを流すと炎を纏う。

MPを1消費する毎に1分間、効果が持続する。自分の意思で解除可能……だったか?

それに森を炎上させたアノ時の感覚。


「もしかして短剣以外にMPを流すことで、そこにも同じ効果を得られるのか?」


森を炎上させた時、感じたのは短剣を通して木へMPを流したようなものだった。


「嫌だけど、少し試してみるか。

うぐっ」


俺は硬化の短剣を右手で持ち、針を刺すような痛みを感じるが我慢して左手にMPを流した。

そして、その状態で恐る恐る左手に短剣を当てた。


「えっ?」


左手と短剣がぶつかると、カンという金属音が響いた。

左手は短剣の刃に触れたが無傷だ。


「なるほど、紛らわしい説明に騙されていたのか」


ただ刀身に炎を纏うだけだと思っていた炎纏の短剣が、実はMPさえ流せれば簡単に何でも燃やせる短剣ってことになるのかな?


「けど、硬化の短剣は微妙だな。

MPを流す痛みに耐えなら動けるのは俺には無理だ。というか身体が傷付かないとしても、同じぐらいの痛みを感じるなら意味がないだろ」


左手だけでも痛みで顔が引き攣るのに全身を常に硬化させようものなら痛みで意識を手放すね。

狂った俺は平気なように笑っていたが、アレは参考に出来ないな。


とりあえず硬化の短剣はポケットの中にでも入れておくか。

炎纏の短剣か水球の短剣が弾かれたりしてもポケットにいれておけばすぐに出せるからアイテムボックスに入れておくより良いだろう。


「さて、アイテムについての確認は終わったけど。この階段はどうしよう」


この階層に着いた瞬間、使った階段は消えてしまったから、放置してたら使う前に消えちゃうかもしれない。

そしたらまたオークキングとの戦いだ。


「今回は森を燃やすことで倒せたけど、この森って再生するのか?」


ダンジョンだから再生してそうなものだけど、水球の短剣で出来た水溜りが消えてなかったから判断に困るな。

森がなくても倒せるようになるためにオークでレベル上げするにしても時間がかかる。


「……階段を降りよう」


この階層、オーク自体はそこまで強くない。

攻撃力が高いけど、知能は低い。

槍を持ってるくせに槍を投擲武器としか見てないようなやつが多かったからな。


ボスにさえ気を付ければ、多分そこまで苦戦はしないだろう。

俺はそう判断して階段を降りてーー後悔した。


階段を降りた先、そこはモン○ンの闘技場のようなところだった。

しかし大砲やバリスタ、巨大な石を落とす罠なんてものはない。


そして闘技場の中心にはファンタジーの大定番ドラゴンが眠っていた。

ドラゴンといっても翼はないが、赤色の美しい光沢を持った鱗が全身を覆っており、みるからに強靭な身体だ。

身体を丸めて眠っているから正確な大きさは分からないけど、一戸建ての家ぐらいはある。


って!そんな観察してる場合じゃないだろ!

早く逃げよう!


後ろを振り返るがやはり階段は消えていた。

想定していたのでスマホを弄る。


ーー

・メインメニュー

名称:214番ダンジョン

危険度:☆2

階層:7

ダンジョンから脱出しますか?

【YES】

参加人数:1

ーー


当然イエスだ!


俺はスマホを強くタップするとメッセージボックスが現れた。


ーー

申し訳ございません。

階層ショートカット機能を利用した場合はボス部屋からの脱出は不可能です。

ーー


「んなっ!?」


なんでだよ!?つか階層ショートカットってなんだよ!?ここから出せよ!


俺はドラゴンを見て咄嗟に口に出しそうになった本音をグッと堪えた。


しかし、分かっていた。

本当は気付いていた。

気付いて知らないフリ、考えないようにしていた。

普通は階段がダンジョン内のどこかにあって、階層ボスなんて倒さなくても下の階層へ移動できる。

敵の強さもスライムからオークみたいに、そこまで急激に変わらない。


でもさ、不親切過ぎるよ。


こんなの死ぬ道しか残ってないじゃん。


俺は中心で寝ているドラゴンを見て絶望感に押し潰されて地面に膝をついた。

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