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アイテムボックス機能追加

彩芽の勇者補正は凄まじかった。

5分ぐらいイモムシの対処を任せていたところ「早く次の階層に行きたい」とボヤき始めてから僅か2分後には3階層へ続く階段を見つけた。


「よし!早く次の階層にいくよ!」

「引っ張るなって!」


彩芽に引っ張られ3階層に着くと、そこは1,2階層と変わらず洞窟のような構造だった。

しばらく慎重に歩いていると大型犬サイズのトカゲが遠くにいるのを見つけた。


「スライム、イモムシに続いてトカゲか。

統一感がないな」


そんな感想を口にしながら水球で牽制してトカゲに突っ込み炎纏の短剣で首を切り裂いた。


「ちょっと!1人で先走らないでよ!」


脊髄反射的に身体が動いてしまったので、彩芽が遅れて走ってきた。


「さっきの階層は彩芽に任せきりだったから、この階層は任せろ」

「……わかった。一撃で倒せるようだし任せるね。ただ、数が多かったら私も参戦するからね」

「ああ」


彩芽は少し考えたそぶりを見せ妥協してくれた。

そんな彩芽を横目で見ながらトカゲからドロップした鱗を触ると、鱗の情報が頭に流れてきた。


「はぁ?」


思わず呆れる。

なんだよ熱すると鉄よりも加工しやすくなる上に冷やすと強度が鋼以上になってアルミ並みの軽さの金属って……

しかも錆びることがないなんて……


「ドロップアイテムやばすぎない?」

「2階層の毛糸ですら技術革新しそうなレベルだもんね。ははっ」


彩芽に鱗を渡すと、俺と同じように呆れた顔になり乾いた笑い声を上げた。2階層のイモムシが落とす毛糸の塊、アレも凄い。

洗っても縮むこともないし、肌触りはカシミヤ以上に柔らかく滑らかで抜群の保温性を持ち、何故か分からないが静電気も起きない。


「これで商売が出来そうだけど、鞄とかに詰め込むと邪魔になりそうだし、一々ダンジョンから戻るのも手間だからなあ」

「そうだね。ゲームで良くあるアイテムボックスや容量無限の魔法の袋とかあれば良いのに」


どうにか持っていけないかと考えたが、たかが3階層のアイテムなんて直ぐに出回るだろうと結論付け無視することにした。

ポケットに入れるにしても動きが阻害されるのは危険だからな。

気を引き締め直して再びダンジョン探索に移る。


「おっ、次の階段だ」

「トカゲもいるね。寝てるけど」


体感1時間ほどトカゲを倒しながら進むと地下へ続く階段を発見した。

階段の前には門番のようにトカゲが3体寝ていた。


「起きる前にサクッとやるか」

「うん」


30分前から歩くだけだったのが苦痛となった彩芽も一緒にトカゲと戦っていたので、文字通り寝首を掻くなんて簡単だ。


「おっ」

「どうしたの?」


トカゲを倒すとレベルアップ特有の熱を身体で感じーーそれと同時にスマホが振動したせいで声が漏れた。


「いや、レベルアップと同時にスマホが振動したからタイミングに少し驚いてな。

大樹あたりからメールかな?」


そう言いながらスマホを見ると、何かのアプリの通知が来ていた。

ラ○ン以外のアプリは通知オフにしてるのに何でだろと思ったが、アプリの名前を見て納得した。


ーー

【ダン攻】からお知らせが届いてます

ーー


ダンジョン発生と同時にインストールされていた謎のアプリ。ダンジョンに挑戦するのも、このアプリが無いと不可能だし謎が多い。

不思議だなと思いながらアプリを開いた。


ーー

レベル10到達おめでとう!

【アイテムボックス】機能を解放したよ!

これからもダンジョン攻略を頑張ろう!

ーー


「は?」

「どうしたの?って!」


彩芽が背伸びをして俺のスマホを覗き込みーー俺の頭を叩いた。


「痛えな!何すんだよ!」

「レベル10って何!?私まだレベル6なんだよ!?ゲームみたくレベルは徐々に上がりにくくなるのになんでもう10もいってんの!?

1人で無理したんでしょ!」


うっ、キレてる。

何とかして宥めないと……


「ちょ、ちょっと待て!

見てみろよコレ!アイテムボックスだってよ!コレって、さっき話してたゲームで良くあるやつじゃないか!?」


そう言いながらスマホを動かしアイテムボックスを開く。


ーー

・メインメニュー

□□□□□

□□□□□

□□□□□

□□□□□

ーー


「ん?四角い枠しかないな?」


スクロールしてみても枠しかない。

数は丁度50か。

とりあえず枠を長押ししてみる。

するとメッセージボックスが出てきた。


ーー

現在左手で触れている水球の短剣を収納しますか?

【YES/NO】

ーー


俺は迷わずYESを選択した。

すると、水球の短剣が煙になって消えた。


「「おお!?」」


彩芽と共に驚きの声を上げる。

スマホの画面は左上の枠の中にデフォルメされた水球の短剣が映っている。

今度は水球の短剣がある左上の枠を長押しすると、再びメッセージボックスが出てきた。


ーー

水球の短剣を取り出しますか?

【YES/NO】

ーー


勿論、YESを選択。

ボフンと俺の目の前に煙が出たかと思うと、そこから水球の短剣が出現した。


「思っていたアイテムボックスと同じようだな」

「うん」

「とりあえず鱗3つはアイテムボックスに入れておこう」

「そうだね。うーん、こんな事なら毛糸も回収しときたかったね」

「確かにな」


鱗を3つ回収して一息。

ふぅ、当初の目的通り彩芽の怒りを収められたようだ。良かった。


「さて、丁度昼食の時間だから階層移動して家に帰ろう?」

「そうだな」

「こんなダンジョンの中じゃ、ちゃんと説教出来ないしね?」

「あぁって、んん?」

「聞こえなかった?

家に帰ったら説教よ?」


……全然怒りを収められていなかった。

こうして俺は4階層に続く階段を死刑前の囚人の気持ちで降りた。

彩芽の顔は妙に明るい笑顔だった。

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