表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

もう1人の狂った俺

本日は昼と夜に1回ずつ更新します。

第1話はグロ的な意味などで少し胸くそ悪いかもしれないです……

気張れ!気張るんだ俺!

仲間達はもう倒れた。

後はアイツの力が溜まるのを耐えれば!


襲いかかってくる無数の魔法をしっかりと目で見て、次を予測し、意識が続く限り躱して注意を引くために攻撃も忘れない。

こんな化け物を倒せるチャンスなんて後にも先にも今、このタイミングしかない。

へばっているわけにはいかない。


「溜まったわ!離れて!」

「わかった!」


声の指示に従い、俺はその場をバックステップで大きく離れた。


「喰らえ!」


眩い青い閃光が化け物を包み込み、化け物の身体を徐々に削っていくが……


「はあっはあっ。またアイツか」


俺の名前は黒宮(くろみや)(はじめ)

諸々の事情で3LDKの一軒家で一人暮らしをしている高校2年生だ!

物心ついた頃から、俺は何度も同じ夢を見る。

そして毎回、敵を倒して終わっているはずなのに何故か冷や汗が出て動悸が激しくなる。

それは夢の続きに、削れていく怪物が復活するといったバッドエンドが待っているとか、そんな理由ではない。


この夢は俺の中にいる、もう1人の俺が意識を乗っ取って好き勝手に行動している夢だからだ。


おっと、待ってくれ。

何こいつ変なやつだとか厨二病患者とか、そんな風に思うんじゃない。

俺はそういうのとは違うんだ。

2年前ぐらいから本当にもう1人の人格がいるんだ!

今、証拠を見せよう!


「なっ!狂った俺?」


・・・・・・


「はぁ、やっぱり無視か。

メタ的なナレーションを付けても無反応か」


俺はいつも狂った俺にアクションをしているが、狂った俺は反応してくれない。

勝手に身体を動かしたり、ファンタジーな夢のラスボス戦だけ体験させたり困ったやつだ!


「と、もうこんな時間か」


時計を見ると6時45分を示していた。

もう1人の俺へのアプローチはここまでにしておき朝食を作りにキッチンへ向かう。

料理といっても朝食は味噌汁と卵焼きを作って、ウインナーを焼くぐらいだけどな。


2人分の朝食を完成させ、リビングに持っていくとテレビを見ている幼馴染がいた。


「おはよ。もういたんだな」

「ううん、さっき来たとこだよ」


幼馴染ーー彩芽(あやめ)はテレビのリモコンを持ちながら食卓の椅子に座った。


「じゃあ、頂きます」

「頂きます」


彩芽と共に朝食を摂る。

2年前から始まった習慣だ。

2年前のアノ事件から、俺と同じで親族を失くした彩芽は寝る時と風呂や着替えの時以外は基本的に俺の家で生活している。


おっと、同棲なんかじゃないぞ?

親もいない状況で男女2人きりだと、そう見えなくもないが、俺と彩芽は未成年だし!

そもそも家が隣同士で物心つく前から一緒だったから兄妹みたいなもん……

と、何を言い訳してるんだ?


うーん、起きたてにやったメタ的なナレーションが尾を引いてるな。もしかしたら、もう1人の俺が気に入って思考を誘導しているのかもな。


そんな事を考えながら食事をしていると、テレビから慌てたような声が聞こえ意識が向かった。


「今入ってきたニュースです!またも、悲惨な事件が起きてしまいました!

今回は我が国、日本で起きました!」


テレビ画面には「止まらない悲劇!迫るカウントダウン!一体何が起こるのか!?」と右上にテロップが出ている。

このテロップは俺と彩芽の親族を奪ったアノ事件から使われるようになったものだ。

俺は、より意識をテレビに集中させる。

丁度ヘリコプターで上空から事件現場を中継していた。


「事件現場はB県T市T町です!恐らく被害者数はT町の人口そのまま約2万3000人と予想されます!そして見えますでしょうか!?

上空から地上を見ますとナスカの地上絵のような鳥の絵と『ついに本日、日本時間14時にダンジョンオープン』と被害者達の血でーー」

「そーい!」


ブチッという音と共にテレビが消された。

思わず彩芽を睨んでしまう。


「あっ消すなよ!」

「こんなに可愛い幼馴染と一緒に食卓を囲んでいるのにテレビなんかに夢中にならないの!というか朝からスプラッタなもの見せないで!」

「はっ!自分で可愛いなんて良く言えるな?

鏡見たこと無いのか?大体テレビを付けたのは彩芽だろ?ニュースの続きを見せろよ!」

「ふふっ知らないの?私、男子の中で好きな人ランキング堂々の2位なんだよ?

それを不細工扱いなんて……眼科にいったら?

それとテレビは絶対見せないからね!」


絶対にテレビを見させない気だコイツ。

……こうなった彩芽を説得しても意味がない。仕方ない、ニュースは後でネットで調べよう。

それにしても彩芽は2位でドヤ顔を作っているが1位が圧倒的すぎて2位以降は団子なのを知らないのか?


「って、なんでランキング結果を知ってるんだよ!?アレは男子同士で極秘に調査して発表されたものだぞ!」

「さて、なんででしょう?男子ランキング4位のハジメ君には分からないかなあ」

「あっ?なんだよ男子ランキングって!」

「さあ、なんでしょう?ほら!早く食べないと、ご飯冷めちゃうよ!」

「くっ!」


なんだか釈然としないが温かいごはんは正義だ。黙って朝食を食べた。

互いにほぼ同じタイミングで食べ終わると彩芽が食器を洗いに向かったのでスマホで事件について情報収集を始めた。


2年ほど前から世界各国で起きている無差別大量殺人事件。1度の事件で最低でも5000人、最高で10万人もの人間が被害にあっており、確認されているだけでも約3500万人が殺された。

そして先程も心の中で少し漏らしたが俺と彩芽の親は、この事件に巻き込まれて死んだ。


この事件にはいくつかの共通点がある。

1つ目が巨大な動物の絵と「ダンジョンオープンまで残り○日!」というメッセージを死体の血で大きく書かれている点。


2つ目は犯行現場にあった全ての監視カメラに犯人と思しき2人組が何もないところから【突然】現れ、瞬きするほどの時間が過ぎると監視カメラが何故か壊れている点。

このことからカメラに映っている2人組は重要参考人として世界中で指名手配され、空港などでの審査は厳しさが増した。

しかし、未だ存在を発見すら出来ていないことから事件の犯人は神や悪魔、超常現象であるという説や2人組の映像はトリックで組織犯罪説の2つが対立している。


そして3つ目の共通点だが……


「やっぱりあったのか」


ダンジョンでの注意事項や豆知識、ゲームでいうトピックスが書かれた謎の結晶板が犯行現場の中心に落ちてる点だ。

結晶板は様々な研究機関で調査、実験されたが地球では未発見の物質、あるいは地球上には存在しない物質で生成されているらしい。


そんな今回の謎結晶板には「ダンジョン内外構わず故意に直接、人を殺すと身体が常に赤く発光してしまうぞ!」と書かれていたようだ。


「故意に直接……ねぇ。

MPKとかはオッケーてことか?

なんてな」


馬鹿馬鹿しい。

大量殺人鬼の戯言を信じてるのか?

ダンジョンなんてものが本当に現れると心の何処かで思っているのか?

こんなの見る必要がないスマホを消せ。


しかし、頭で考えてることとは別に指先は勝手に動き過去のトピックスをまとめているサイトを開き何度も何度も忘れないように見直しをしてしまう。

もう1人の俺、狂ってしまった俺のせいだ。


もうやめてくれよ。

こんな事しても何の役にも立たないよ。

狂った俺。お前は何がしたいんだ?

俺はもう暗唱ができるぞ?

だから、もう見なくていいだろ!

やめてくれよ!

家族を思い出して悲しいだけだ!


どれだけ頭の命令で止めようとしても身体の主導権を奪った狂った俺には勝てない。

俺は涙が出そうになるほど、悔しい思いをしながら両親の仇が残したメッセージをひたすら黙読する。


「食器洗い終わり!

あれ?まだ制服に着替えてないの?

あ!またスマホ見てる!

もう!ゲームばかりしてないで、早く着替えなさい!学校遅れるよ!」


食器洗いを終えた彩芽が俺に話しかけてきたので注意が向き、振り返る。

狂った俺は外部からのアクション、というより彩芽が何か気を引くと身体の主導権を俺に戻す。

今回も主導権を戻してくれたようで内心ホッとしながら彩芽に返事をする。


「お前は俺のオカンか」

「母親代理です!早く着替える!」

「はいはい、わかったよ」


彩芽、ありがとう。

口には出さないが凄く感謝してるよ。

お前がいないと身体の主導権どころか、心まで狂った俺に支配されて俺は居なくなってしまうんじゃないかって不安になる。


狂った俺について何度も打ち明けようと思った。

けど、そんな事は絶対にしない。

お前には絶対にこの事を悟らせない。

何故かって?

悲しませたくないからだよ。

彩芽は俺に残された唯一の光だからさ。


……って!恥ずかし!?

なんだよ俺!いくら心の中だとは言え、くさすぎるぞ!


俺は顔を赤くしながら制服に着替え、彩芽と共に学校へ向かった。

顔色は何とか着替え中に元に戻せた。

評価や感想、誤字脱字報告、募集してます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ