再会
タイトルから予想がついてしまうという話…
ドクン
聖羅が来なくなって1ヶ月が立とうとしていた
ここ数日心臓が強く鳴るこ事が多くなった
俺は新しい参考書を開いたまま膝の上に置く
こういう時は一度落ち着いて深呼吸をするのが一番いいと自分で学んだ
俺は胸に手を当て深く息を吸い込み、吐くを数回繰り返す
そのうち鼓動はゆっくりと収まっていき、安堵した
「こんな姿、見せられないな……」
苦笑いをしながら呟くとドアが開く音がした
まだ、検診には早いし、母さんの来る時間でもない
一体、誰だ?
「大樹くん!」
「のわああっ!?」
ひょっこっと現れたその顔に俺は驚いて参考書を落とす
心臓はまたバクバクいっている
大丈夫。これは驚いただけだ
「なっなっ……」
「来ちゃった」
へへっと笑う彼女は1ヶ月前と差ほど変わらない
久しぶりの顔に俺も釣られて笑いそうになるが、釣られてる場合じゃない
「何しに来たんだよ。初彼氏でも連れて自慢しにきたのか?」
「もう!だから違うってば!」
「どうだか…」
「文化祭、終わったんだ。後テストも……」
「ふーん……」
俺は興味なさそうにベッドから降りて、落ちた参考書を拾う
勿論その際もできるだけ聖羅の顔を視界に入れないようにした
素直に慣れない自分が悲しい
「だから、怒らないでよ」
「怒ってないって、言ってるだろ!」
俺がベッドに戻り顔を上げると目の前に聖羅の顔があった
驚いて距離を取ろうとするけれど、顔をガシッと掴まれる
思ったより聖羅の力は強くて俺は驚く
「っ!」
「逃げないで!こうでもしないと、大樹くん話聞いてくれないでしょ!」
「わかった、聞く。だから離れろ!そして手を離せ!」
俺は顔から聖羅の手を離し距離を取る
久しぶりに見る彼女
変わらない彼女
やっと会えた彼女
嬉しい筈なのに素直に喜べないのは、聖羅がお試しで男と付き合ってるからだ
「始めに言っとくけど、私橘くんとは付き合ってないからね!」
そう言って聖羅は椅子を持ってきてドスンと座る
「何だよ。もう別れたのか?」
「それ以前の問題よ。付き合ってすらないんだから!」
「だって、お試しで付き合うって…」
俺がそう言うと聖羅は待ってましたと言わんばかりに口を開く
「言われただけですー!私は付き合う何て言ってませんー!」
「でも、悩んでたじゃないか」
「当然でしょ!どうお断りすればいいか悩んでたんだから!」
「はあ?」
俺はすっとんきょうな声を上げた
それを見た聖羅が腕を組み、やっぱり聞いてなかったんだと怒り始める
「あの時、私大樹くんに聞いてたんだよ?橘くんにお試しで付き合って言われたけど、やっぱりそういう対象に見れないし、彼を好きになるとは思えない。だからどうすれば男の子って諦めてくれるかなって……」
「……」
俺はそれを聞いて固まるしかない
だって全く聞いた覚えがなかったからだ
「私、ショックだったんだからね!いきなり大樹くんに橘くんと付き合えばいい!とか、二度と来るな!とか言われて…」
聖羅は口をへの字にして膨れている
「でもあの時聖羅赤くなってたじゃないか!俺はてっきり橘の事を意識してるんだと……」
「あれは、ちょっと違うことで…、でも橘くんの事じゃないし……」
また顔を赤くしてゴニョゴニョと言う聖羅に俺はイラッとする
「それで?俺の所に何で来るんだよ。二度と来るなって言っただろ」
そう言って俺は参考書に目を移した
違う、本当はそんな事を言いたくない
今だって会えて嬉しいのに、素直に言えない
横目でチラリと聖羅を見るとプルプル肩が震えている
ヤバイ、言い過ぎた!
『もっと素直になりなさい。じゃないと後悔するわよ』
母さんの言葉が頭を過る
けれど俺はどうしたらいいのかわからない
「聖羅、俺…」
「嫌だからね!」
「!」
顔を上げた聖羅が涙を流しながら怒っていた
「来るなって言われても私、ここに来るから!」
「聖羅?」
「私、誰かと付き合うより、大樹くんと一緒にいる方がずーっと、楽しい!一緒にいるなら大樹くんとがいい!」
「!」
今のは聞き間違いじゃない
はっきりと聞こえた
今までずっとモヤモヤしていた気持ちがストンと落ちていく
そして妙に胸がむず痒い
「聖羅、それって告白?」
俺が聞き返すと聖羅は自分の言った事を理解したんだろう。顔をトマトのように真っ赤にして、ワタワタと慌て出した
「ち、違うよ。誤解しないで!親友は元々含んでるの!だから、親友と大樹くん、二人のことなの!」
俺は慌てる聖羅を見て笑う
ああ、君がいなかったこの1ヶ月。俺はこんなにも笑ったりはしなかった
楽しいと思えなかった
でも、君の一言でこんなにも胸が熱くなる
こんなにも幸せになる
俺はもう、君なしでは生きられない
「婆さん達が聖羅を天使ちゃんってあだ名をつけた理由がわかった気がするよ」
俺がそう言うと聖羅は「そのあだ名では呼ばないで!」と顔を赤くしたまま怒った
このままでは俺は聖羅を怒らせるだけだろう
でも素直にこの気持ちを言えそうにもない
俺は思った以上に面倒臭い性格らしい
「聖羅、俺はこんなだけどこれからも来てくれる?」
「!」
聖羅は驚いたような顔をして俺を見た
そして、イタズラを思い付いたような表情になる
「んー、そうね。駅前のバーガー屋さん期間限定スペシャルダブルバーガーで手を打ってあげようかな」
それを聞いて俺は吹き出した
聖羅も笑いを堪えている
「よし、ならば炭酸ジュースとポテトもつける!」
「よし!乗った!」
そして俺達は大声で笑った
ちょうどそこへ見舞いに来た母さんが何事だと驚きながら入ってきた
母さんは聖羅を見て飛び付いき、期間限定スペシャルダブルバーガーの話をすると外出できない俺の代わりに買いに行ってくれた
代金は俺の出世払いだとしっかり領収書を渡され、俺達はまた笑った
大樹の母さんが目立ってしまって登場してませんが、大樹の父さんも、ちゃんと別のときにお見舞いしてくれてます




