聖羅のいない日々
寒い!!
あれから三週間、聖羅は一切顔を出さなかった
看護師さんの話では彼女の親友の所にも顔を出していないらしく、皆心配していると言っているそうだ
聖羅がこんなに長い間訪れない事は今までなかったらしい
けれど、それを俺に言われても
困るわけで……
「最近聖羅ちゃん来ないわね。大樹、何か理由知ってる?」
母さんが花瓶の花を替えながら俺に聞いてきた
俺はベッドに横になったまま本をめくる
「彼氏が出来て時間がないんだろ」
他の人には知らないとか、適当に言ってきたがそろそろ面倒臭くなってきた
母さんになら本当の事を言っても構わないだろう
そう思って俺は素っ気なく答えた
これで聖羅のことを俺に聞いてくるのをやめてほしい
俺よりも彼女の親友に聞いてくれ!
「彼氏!?聖羅ちゃん彼氏ができたの?!どんな子?」
「知らねーよ」
だから、俺に聞くな!
俺は母さんに言った事を後悔した
やっぱり言うべきではなかった
その証拠に母さんはニヤニヤしながら椅子に腰かけた
これは今から根掘り葉掘り聞く気満々だろう
「それで大樹は拗ねてるわけね?失恋のせいで最近食欲がないわけだ?」
「はあ?拗ねてねーし!告白もしてないのに失恋とか言うな!」
「あ、やっと認めた!やっぱり大樹は聖羅が好きだったのね!」
「う・る・さ・い!大きなお世話だ」
「お似合いだと思ったんだけどな〜、あなたたち」
「本を読む邪魔するなら帰れよ」
「そーんな事言って、その本は聖羅ちゃんから借りたものでしょ?」
「!」
俺は読みかけのページにしおりを挟み本を閉じた
ダメだ
こんな状況じゃ集中できない
俺は身体を起こす
「母さんが何を言いたいかは知らないけど、いくら待っても聖羅は来ないよ」
「どうして?」
「もう二度と来るなって俺言ったから…」
「あんた、聖羅ちゃんにそんな事を言ったの?」
「だって聖羅にはお試しであれ彼氏が出来たんだぞ?それなのに男のお見舞いに来てたらいい気分しないじゃねーか!俺も、その彼氏も!」
それにそいつと見舞いなどに現れたら俺は発狂する自信がある
未練がましいとはよく言ったものだ
母さんは呆れたように俺を見ている
「お試しねえ…」
「何だよ」
「別に。母さんは聖羅ちゃんがそんな事をする子じゃないと思うなあ」
「……」
「大樹も二度と来るなって本気で言ったわけじゃないんでしょ?」
「……」
「もっと素直になりなさい。じゃないと後悔するわよ」
そう言って俺の頭を優しく撫でる
「五年前のあの日、後二年って聞かされて母さん達本当に悲しかった。つらかった」
「何だよ急に…」
そんな事、知っていると言わんばかりの顔をしていると、母さんは突然俺を抱きしめた
「いいから、黙って聞きなさい。母さん達はね、それを聞いた事よりも大樹、貴方が全てを諦めた方がつらかったのよ」
「!」
「聖羅ちゃんに会うまでの五年間。貴方は生きてくれた。それはとても嬉しい事だった。でもね、貴方の中には何もなかった。本当にそこにいるだけだったの」
「母さん?」
母さんの顔を見ると泣いていた
あの日のように……
でも、何かが違う。そんな気がした
「大樹、貴方は今、ちゃんと生きてる。ちゃんと生きてるのよ!」
まるでそれは母さん自身にも言い聞かせるようだった
「母さん、大丈夫だよ。俺は大丈夫だから……」
「大樹……」
今、わかった
皆が俺に聖羅の事を聞いてくる理由が……
俺がまたあの日のようにならないように、空っぽにならないように気にしてくれていたのだ
俺にとって聖羅は「生きる」をくれた
彼女との出会いが俺の生き方を変えた
諦める生き方じゃない
諦めないという生き方だ
聖羅に会いたい
来るなと俺から言ってて勝手な事だとは思う
だけど会いたい
俺の時間が止まらないうちに……
聖羅を途中で出すはずが、出せなくなりました




