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新しい日常

風邪を引きました

喉がいたいです…

「じゃーん!大樹くん。これが続きだよ〜」

 

元気な声が俺の病室に響いた

聖羅は俺のベッドに躊躇なくドサッと紙袋を置く

俺は体を起こし紙袋に手を伸ばした

中身はどうせ最後まで読めないからと読むのを諦めた漫画の続きだった

 

「うわ、すげえ……」

「へへっ、お兄ちゃんからくすねてきました!最新刊までバッチリよ!」

「大丈夫?それ……」

「大丈夫!私、妹だから!」

 

聖羅は自信満々にえっへん!と胸を張るのを見て俺は思わず笑った


あの日から聖羅は本当にちょこちょこ俺の所に顔を出し始めた

始めは戸惑ったけど、今では聖羅を見ないと落ち着かなくなってきた俺がいる

慣れとは恐ろしい

 

「親友の彼女は大丈夫なの?」

「うん、平気。こっちに来る前に顔だしたらゲームに夢中だったよ」

「またゲーム?いつもやってるって言ってないか?そんなに面白いソフトが出てるのか?」

「え…、あー…」

 

俺が聞くと聖羅は目線を外し、気まずそうな表情になる

俺の病室にはパソコンやテレビがない

あの日以降俺がそういった類いを全て拒否したからだ

その為、流行りものの情報等は他人に頼るしかない

でも不自由とは感じないので欲しいとは今も思わない

しかし、聖羅の親友はいつもゲームをしていると聞く

せっかく聖羅が来ているのにゲームばかりしているとは、余程面白いゲームなのだろう

そう思いながら聖羅を見ていた為だろうか、聖羅は少し頬を赤らめながら口を開いた

 

「乙女ゲーム……」

「え、何?音のゲーム?」

「違う!お・と・め!乙女ゲーム!」


オトメゲーム?

いや、乙女ゲームか?

何だそれは?

俺は聞いたこともないゲームに首を傾げた

 

「知らないの?」

「うん、知らない」

 

聖羅は「そっかー…」と考え込んでしまった

俺にどう説明するかを模索しているんだろう

 

「乙女だから、多分女の子がするゲームだよな?でも何で聖羅が顔を赤くするんだ?」

「それは…、その…」

「聖羅はしないの?」

「え?」

「その乙女ゲームっていうの」

「無理!私には無理無理!」

 

再び顔を真っ赤にして、手を前に出し無理!と手を振る

そんな聖羅を見て後で母さんにでも聞いてみようと思った


「他人に聞いちゃだめだからね?」


心を読まれた


俺は誤魔化すように話を変えることにした

ベッドの横の引き出しから少し分厚い本を取り出してページをパラパラとめくる

タイトルは『優しい中学生総合問題集』だ

 

「え?もうここまで解いたの?」

「聖羅が来るまで暇だから…」

「すごい!大樹くんすごいね!」

 

それはまるで幼稚園児を褒める先生のようだが俺は嬉しく思う

 

「聖羅が来るようになって自分の学力の無さが恥ずかしくて……」

 

そう、俺の頭は小学五年生のあの時からほぼ止まっていた

だから聖羅が学校の話、特に勉強関係の話をしてくれても全くわからないのだ

読めない漢字も沢山あった

だから恥を承知で聖羅に頼み込み、勉強を見てもらっているのだ

けれど、こんなことで褒められて調子に乗ってしまうあたり、やっぱり自分の精神年齢は幼いと自覚する


「大樹くんって天才肌だよね。すぐ覚えちゃうんだもん」

「そうかな……」

 

ほら、またこんな台詞だけで心が踊ってしまう

しばらくお互いに勉強に集中した後、聖羅が口を開いた

 

「あのね、しばらく来れなくなるから……」

「え?何で?」

「テストなの」

「テスト?」

「そ、ちょっと勉強に集中しないといけない期間なの」

 

中学生以降は大きな小学生とは違って定期的に大きなテスト期間が設けてあり、学んだ事の評価をされるらしい

しかし、高校生の場合はそのテストで悪い点数(通称赤点)を取ると補講というものが発生する

授業とは別に放課後を使って勉強をしないといけないらしい

つまり、それに引っ掛かると病院にくる時間が極端に減ってしまうということだ

 

「なら、我慢しないとな」

「ごめんね。あっちにはちょこちょこ顔を出すからどうしてもの時は声かけて……」

「……」


あっちとは聖羅の親友の病室の事である

彼女の所へ行くなら俺の所にも来てほしいと思うのは我が儘だろうか?

いや、これが八年の親友と一ヶ月程の友達の差だ

勝敗は勝負する前からわかっている

それでも少し不機嫌になるくらいは許してほしい

 

「だって、大樹くんの所にくると楽しくて、つい時間を忘れちゃうから……」


その一言だけで不機嫌な気分がすっ飛んだ

可愛いと思う女の子にそう言われて、心が踊らない男がいるだろうか

いや、そんな男はいない

 

「俺、たまに聖羅が小悪魔に見える時がある…」

「え?何?」


首を傾げる聖羅がまた可愛くて俺は突っ伏した

見てられない…

 

「終わったら大樹君お気に入りのデラックススーパーバーガーを買ってきてあげるから機嫌直して!」

 

どうやら聖羅は俺が突っ伏した理由が機嫌が悪くなったからと思ったらしい

違うと言おうと思いつつも、デラックススーパーバーガーは欲しい…

さて、どうしよう

 

「ついでに炭酸ジュースとポテトもつける!」

「いいよ。我慢する」

 

ダメだ、口元が笑ってしまう

でも、聖羅は気がついていないようで、やった!とガッツポーズをしている


「じゃあ、それまで体調崩さないでね。看護師さんには私から話しておくよ!」

「あらあら、相変わらず聖羅ちゃんは元気ね」

「母さん!」

「こんにちは、お邪魔してます」

 

聖羅は席を立ち母さんにお辞儀をした

 

「そんな堅苦しくしないで。聖羅ちゃんのお陰でこんな楽しそうな大樹を見れるんですもの」

 

そう言って花瓶の花を変え始める

 

「じゃあ私親友のとこへ行くから」

「あら、気を使わなくていいのよ?」

「いえ、そろそろ行かないと怒られるので」

 

聖羅はへへっと笑う

 

「また帰るときに寄るね」

「ああ、待ってる」

 

そう返すと聖羅は部屋から出ていった

それを見て母さんはニヤニヤしながら俺に近づく


「『ああ、待ってる』ですって?いつの間にそんなに大人になっちゃったのかしら?」

「何だよ。別におかしくないだろ」

「あらあら照れちゃって。鼻の下伸びてるわよ?」

「なっ!?」

 

俺は声をあげた

鼻の下は伸びていない

断じて伸びていない!

 

「いいわね〜。青春だわ」

「母さん、それ違…」

「聖羅ちゃんは愛嬌があって可愛いし、いい子だし、母さん安心した!」

「だから、違うって」

「あ、父さんにも今度教えとかなきゃ!」


俺は頭を押さえる

母さんは夢中になると周りが見えなくなるのが弱点だ

今も呑気に「赤飯炊かなくちゃ」とか言い始めた

これはまずい


「母さんが思ってる事とは違うから!」

「そうなの?」


母さんはやっとこっちを見た

 

「聖羅がここに来ているのは、この病院に俺と同じ病気で入院してる親友がいるからなんだよ。彼女はその子と俺を重ねてほっとけないだけなんだ」

「同じ病気?」

「俺と違って持病らしいけどね。もう八年入院してるんだって…」

「八年……」

「だから、俺は――」

「だから好きになっちゃったんでしょ?」

「……、は?」

「何て運命的な出会いなの!素敵じゃない!母さん感激よ!」

「……」

 

聖羅と出会って気がついた事がもう一つある

俺の母はこんなに感情豊かで思い込みが激しい人だったと……

 

俺は母さんを説得するのを諦めて参考書を開いた

母さんにとやかく言われたからじゃない

少しでも彼女に追いつきたい

ただそれだけだ

これで半分くらい進みました

次から少し進展?します

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