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嘘つき

さあ、いよいよです

最後までお付き合いください

神様とは無情なものだ

人が死を覚悟しているときには手を差し伸べず、生きようと足掻いた途端に迎えにくるらしい

 

俺は無宗教だけど、神様を恨んだ

彼女と出会わなければこんなこと思わなかった

彼女と出会わなければこんな気持ちにならなかった

彼女と出会わなければ生きたいと願わなかった

彼女と出会わなければ好きという言葉も知ることはなかった

彼女と出会わなければ両親の新しい一面を知ることもなかった

 

「大樹!」

「大樹!」

 

うっすら目を開けるとそこには母さんと父さんがいた

二人とも俺の手を握ってくれている

けれどその感触はあまり感じない

俺はまた目を閉じた

身体は重く、何かに引っ張られるようだ

このまま寝てしまったら、不思議な夢の続きでも見るのだろうか

 

「「大樹!」」

 

二人が同時に俺を呼ぶ

きっと心配しているんだろう

俺はまた重たい瞼を開ける


大丈夫。俺は大丈夫だから

 

そう二人に言いたいのに唇は少ししか動かない

 

「心臓マッサージ!急いで!!」


ガン、ガン

 

先生の声と何とも言えない音が頭に響いた

今俺は心臓マッサージをされてるのか?

感覚が全くわからない

 

ああ、きっと、これが「死」だ

 

「大樹!」

 

母さんが叫んだ

泣かないで、なんて格好いいことは言えない

きっと母さんや父さんは泣くだろう

そして聖羅も……

 

「せ……、ご…、め……」

 

聖羅に一言謝りいたくて力一杯唇を動かした

他にも母さんと父さんにもありがとうと言いたくて唇を動かそうとしたけれど動いている感覚がなかった


「大樹、大丈夫よ。聖羅ちゃんには伝えておくから!」


母さんが泣きながらそう言ったのが聞こえて俺は息を吐く事で返事をした

母さんには伝わった

それがただ、嬉しかった


俺は聖羅に沢山謝らなければならない

誕生日に桜を見るって約束したのに見れなくてごめん

元気になるって言ったのになれなくてごめん

メイド服を見れなくてごめん

次のクリスマス受け取れなくてごめん

他の沢山の約束を果たせなくてごめん

 

嘘つきでごめん


そんな事を思ったが謝ってばかりだと聖羅に怒られそうだと思った

君には謝罪よりも言うことがあった


君に会えて俺は幸せだった

ありがとう――



ピー……――


非情と言わんばかりの機械音が部屋に響き渡る

先生の悲しげな声と泣き叫ぶ母さん達の声が聞こえた


ああ、君は何も知らないままいつもの病室に来てどう思うだろう

怒るかな?

泣くかな?

できれば笑ってほしいって、そう思うのは俺だけだろうか

たった一年

たったそれだけの日々だったけど、楽しかった

本当に楽しかった

けれど、もっと伝えておけばよかった

この気持ちを…


神様は無情だ


大往生という言葉があるけれど、きっとそれは嘘だと俺は思う

人は死ぬ前に何かを必ず悔いるようになっている

願望を持ってしまうのだ

それが大きいことなのか、小さいことなのかはわからない

何故相思うのか、きっと次にまた生まれてくるためなんだろう……

次に君と会うとき、俺はまた君に恋をする

夢の中の俺のように……


そして俺の意識は完全になくなった――

お父さん最後の最後に登場しました


先生とは、主治医の先生のことです

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