春、また君と
季節はぐるっと回ってきました
クリスマスとお正月が過ぎるとあっという間に春の風が吹き始めた
ポツポツと桜のつぼみが咲くのを鳥たちが今か今かと待っている
あれ以降急激に弱ってしまい、俺は完全に寝たきりになった
横を見ると点滴がポタポタと垂れている
今ではこれが俺の命綱だ
意識がはっきりしているのに、言葉がうまく出てこなくて話せない
けれど、聖羅と母さん達は変わらない態度で接してくれていた
「大樹くん、起きてる?」
出会って一年が立とうというのに、相変わらず顔をひょっこり出してから入ってくるスタイルに笑みが出た
俺はうまく返事ができなくて手を少しあげる
聖羅がこんなに早い時間に来るのは珍しい
何かあったのかとじっと顔を見ていると、聖羅はにっこりと笑ってゆっくりと口を動かした
「今日、終業式だったんだよ」
「ああ」
そうか…と続けたかったけれど、やっぱり声が続かなかった
「4月になったら高校二年生だよ。青春ど真ん中だね!」
聖羅は俺の顔を見て笑ってから視線を窓へ向ける
「覚えてる?初めて大樹くんと出会ったとき」
「ああ……」
忘れるわけがない
あの時の君との出会いが俺の生き方を変えてくれた
初めての感情にも出会えた
忘れろと言われても忘れるわけがない
「あの日、大樹くんと初めて会った日が私の誕生日だったの」
「!」
「誕生日にあんな出会い方をするなんて、中々ないよね」
確かに、頻繁にあっても困るだろう
俺だって困る
「私ね、大樹くんを親友を重ねてたの」
そんなこと、改めて言われなくても初めから知ってる
だから俺は黙って頷いた
「でも、大樹くんと親友が違う病気だってことくらい私もわかってた。わかってたけど、でも……」
そう言って聖羅は言葉を詰まらせる
そして俺の手を取り聖羅は自分の頬へと当てた
「大樹くん、約束しよう。次の私の誕生日に一緒に初めて会ったあの場所で桜を見よう?それが私のプレゼントがいい」
いきなり何を言うかと思ったらそんなことか
それよりも、前にもう一つの約束があるじゃないか
「バカ…」
「え?」
俺は声にならない声でゆっくりと唇を動かし始めた
「ゆび、きり……。服。み…る――」
たったそれだけ
たったそれだけの言葉を言うのにどのくらいかかったのだろう
それでも聖羅は言い終わるまで黙って聞いてくれた
「……、うん。そうだったね。ごめんね、何か急に約束したくなっちゃって……」
目元を少し赤くして聖羅は笑った
「あ……、した――」
「うん、明日も来るよ。その次も、そのまた次も。春休みだから、毎日顔出すよ。ずっとずっと来るよ」
それを聖羅から聞いて俺はとても満足だった
満たされるとはこういうことを言うのかもしれない
けれど欲は止まらない
死にたくない――
「当たり前だよ」
何も言ってないのに、聖羅は俺の心を読んだかのように答えた
それから聖羅は毎日のように通っては約束と言って、一つずつ約束が増えていった
枝の蕾が膨れている
春まで後少しだ
さあ、君と桜をまた見よう
節分、バレンタイン、ホワイトデーはどこいった!と突っ込みはなしでお願いします




