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プレゼント

さあ、いよいよラストに向かって突き進みます

少し長めです

あっという間に秋が過ぎ去り、冬がやってきた

世間ではクリスマスが近づいて病院でもクリスマスの飾りをつけたり、院内にオルゴールの音が聞こえたりとクリスマスで賑わっている

けれど俺はあまりいい気分ではなかった

最近動きが鈍くなってきたのだ

室内のトイレとかは行けるけど、階段を登り降りはできない

そしてそれに比例するかのように検査も増えた

お陰で面会時間は削られ聖羅ともあまり会えない状況になっていた

この時期は末期のテストなどもあるから忙しいとは思う。それでも僅かに会える時間を検査に使われて、俺の機嫌がいいわけがなかった

 

「寒いから、仕方がないわね」

 

母さんはいつも通り答える

 

「最近薬の量が増えた」


俺がボソッと呟くと母さんは「そお?」と素っ気なく答える

 

「勉強し過ぎが原因じゃない?」


母さんが笑いながら答える

俺はムスッとしたまま変わらぬ天井を見ていた

 

「否定しないってことはそうなのね?駄目よ、無理しちゃ」

「指切りしたからな…」

「え?」

「何でもない」


俺はそう言って目を閉じた

ふと、読みかけの本があることを思い出す

最近流行りの転生ものだ

皆不慮の事故やら間違いやらで異世界に転生し、第二の人生を歩むというものだ

この場合、俺はどうなんだろう

俺も転生というのにあやかれるのだろうか……

 

「おば様、いますか?」

 

聖羅がいつものように顔を覗かせた


「あ、大樹くん、今日はいたんだ?」

 

何日振りかに会う聖羅

嬉しいという気持ちの半分に俺はモヤッとする

第一声が「おば様いますか?」って何だ

俺に会いに来てくれたんじゃないのか?

母さんをチラリと見ると「妬かない、妬かない」と笑っている

どうやら俺が不在の時に聖羅とちょこちょこ会っていたようだ

 

ズルい……


「聖羅ちゃん。あれからどう?うまくいった?」

「はい、何とか…。おば様のお陰で助かりました。私の母はこういうの苦手で……」

「いいのよ。気にしないで!おばさん、娘も欲しかったから嬉しかったわ!大樹が女の子だったらこうなのかなって!」

「あー、あー。男に生まれてすみませんでしたねー」


俺が皮肉っぽく言うと母さんのデコピンを食らう


「っ!」

「ほんっと、大樹は父さんと同じね!()って言ったでしょ?()って!」

「だからって、デコピンするなよ!」

「そうでもしないと目が覚めないでしょ?」


そう言って母さんは笑った

後ろを見ると聖羅も笑っている


「じゃあ、私帰るわ」

「「え?」」


俺と聖羅の声がハモった

そして、母さんは俺達を交互に見てニヤリと笑う


「邪魔物は退散しないとね!」

「お、おば様!邪魔何てことは!」

「いいの、いいの!今日はもう大樹の検査はないし、ゆっくりしていって頂戴!」


そう言って母さんはご機嫌よく出ていった


「ごめんね。親子の時間邪魔して……」

「そんなことないよ。母さんとは毎日会ってる」


俺はそういいながらゆっくりと身体を起こした

 

「大丈夫?無理しないで」

「ありがとう。でも皆心配し過ぎだよ」

 

俺が笑って見せると安心したのか聖羅は持っていた荷物を下ろした

 

「何それ?」

「これ?これはね、プレゼントだよ」

「プレゼント?」

「はい、ちょっと早いけど誕生日プレゼント&クリスマスプレゼント!」

 

そう言って紙袋から何やら包み紙を取り出した

まさかそんなものが出てくるとは思わず、嬉しいのに出てきた言葉は真逆となる


「12月に生まれると誕生日とクリスマスを一緒にされがちだよな」

「それ、言うと思った!渡す方は一つで楽なんだけどなあ」

「あのな、貰う方は損した気分なんだぞ?」

「言えてる」

 

そう言ってお互い笑いながら俺は包み紙を開けた


「!」

 

なんと、中から出てきてたのは白いうさぎのぬいぐるみだった

うさぎなのに何故か目が青い

何かのキャラクターだろうか?

俺はうさぎの耳を掴み、目の前にぶら下げてみた

女の子はこういうのが好きなのだろうと言うことはよくわかるが……

俺が複雑な目でうさぎを見ていると聖羅が声をあげる


「ごめん。間違えた!」

 

そう言ったが早いか、俺からぬいぐるみを取り上げ何事もなかったかのように俺の足に同じ包み紙を置く


「へへ、こっちがそうだよ」


今度は間違いなさそうなので俺は再び手を伸ばす

 

「そう言えば俺の誕生日よくわかったな?俺、言ったっけ?」

「へへ、おば様に教えて貰ったんだ〜」


一体いつの間に…

呆れつつも俺は重大な事に気がついた

 

聖羅の誕生日を俺は知らない

 

俺は包み紙を開ける手を止めて聖羅を見た

 

「聖羅は誕生日いつなんだ?クリスマスは無理でも誕生日は何か送りたい!」

「でも…」

「しゅ、出世払いで何とかする!」


それを聞いた途端に聖羅はクスクスと笑い始めた

 

「そんな顔しないで、心配しなくても今年の誕生日は私も大樹くんからプレゼント貰ってるから!」

「え?いつ?俺、何かあげたか?」

「それは、ひ・み・つ!それより早く中を見て!」

 

俺は急かされ納得はしていないものの、仕方がなく袋を開けた

中には少しほつれているが紺色のマフラーが入っていた

 

「どう……かな?初めてだし、ちょっと不恰好だけど、大樹くんに似合うと思って…」

「これ、どうしたんだ?」

「おば様に教えてもらったの。何か買うと大樹くん気を使うでしょ?だから――!」


聖羅が言い終わる前に俺は聖羅を引き寄せ抱きしめていた

嬉しくて嬉しくて、ただそれだけだった

 

「ありがとう、大事にする」

「うん……」


そう言うと聖羅の手もそっと俺の背中に回ってきた


トクン、トクン


心臓が打つ音が聞こえる

これはいつもの苦しい音ではなく、優しくて、いとおしくて、美しい音だった

そうか、心臓はこういう音もするのか…

俺がそう浸っていると

聖羅が俺の背中をトントンと叩いた

どうしたのかと思い離れると聖羅の顔が見たこともないくらい真っ赤になっていた


可愛い……


彼女を抱きしめたい。そう強く思った瞬間、現実に戻る

 

ちょっと待て。今、俺何してた?


俺は数秒前の記憶を引っ張ってくる

溢れる汗

聞こえる鼓動

俺は、魚が餌を食べるかのように口をパクパクさせながら聖羅を見た

しかし聖羅はそんな俺に気がつく様子はなく、両手で真っ赤な頬を押さえている

その顔が、表情が、全てがいとおしい


ああ、ダメだ。俺は聖羅がほしい


俺は心からそう思った

今なら言えるかもしれない

俺の気持ちを!

俺はもらったマフラーを首に巻いた

マフラーはとても暖かかった

 

「あの…さ、聖羅」


俺が声をかけると、一瞬ビクッと肩が揺れ、聖羅は不安そうに俺を見た

 

「やっぱり返品…っていえのは勘弁してほしいかも…」


何故そうなる…

俺は首を横に振る


「違う。これは返せって言われても、もう返さない」

「よかった!」


ああ、可愛い


「じゃあ、何を聞こうとしたの?」


聖羅に聞き返されて今度は俺がビクッとなる

さあ、言うんだ大樹(おれ)

俺は首に巻いたマフラーをぐっと握り締めた


「いや、その……、俺以外の男に、こういうの渡さないで欲しいなって……」

「え?」

 

聖羅は驚いている

言った俺も驚いていてるのでそんな顔で見ないでほしい

 

「あ…、いや、だから…、その……」

 

情けないことに、言葉が全く出てこない

俺は自分で思った以上にヘタレらしい

今更気がつきたくはなかったこんな一面……

そんなことを考えていると聖羅は真顔で迫ってきた

 

「お兄ちゃんとお父さんにはいい?」

「はい?」


俺は首を傾げた


「だから、そ・れ!」

 

聖羅が俺のマフラーを指す

 

「お兄ちゃんとお父さんの分も作っちゃったんだ。練習の練習で……」

「あ、ああ、ああ。」

 

俺はコクコクと壊れたおもちゃのように頷き、返事をした

 

「来年はもっと上手に作るね!」


聖羅は嬉しそうに笑う

俺も釣られて笑顔になる


ああ、今俺は幸せだ


心からそう思った


「夢だったら嫌だな」

「えー?どうしたの?変なこと言って」

「だって、幸せ過ぎると夢の可能性があるだろ?」


それを聞いた聖羅はキョトンとした後、クスクス笑い始めた

 

「なら、確認してあげる」

「どうやって?」

 

俺が尋ねると聖羅の手と顔が近づいていた

聖羅の手が俺の頬にそっと触れる

まさか…

まさか、キ――


「いてててっ!」

「うん、痛いってことは夢じゃないね!」

 

あははと笑う聖羅

俺はつねられた頬をさする

 

「いってえ…、急に何だよ……」

「昔から夢かどうかの確認はこうするって決まってるのよ!」

「だからって……」

 

期待させるなよ…と、俺は小声で呟いた

 

「何か言った?」

「いや、別に。聖羅の力は強いなって言ったんだよ」

「ええー?大樹くんが弱すぎるんだよ!」

「それ、病人に言う?」

「違う!そう言う弱いじゃなくて!」


慌てる聖羅を見て俺は笑う

 

「はははははは。わかってるって!」

「もう!大樹くんの意地悪っ!」

 

そんなやり取りをして笑った


この普通のやり取りが俺達二人にとって最後になると知らずに――

後3〜4話で完結となります!

もう少しお付き合い頂けると嬉しいです

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