第九十一話 訪れるモノ(アルム視点)
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さぁさぁっ、楽しい楽しい女子会が始まり……ませんなぁ。
それでは、どうぞ!
シェイラとナット領にちょっとした日帰りデートができると浮かれていたボクだったが、結果としては、予想に反してナット領の新たな領主、ミミール・ナットとシェイラが意気投合してしまい、置いてけぼりをくらうこととなる。しかし……。
(シェイラが、嬉しそうだ……)
そういえば、シェイラはまだこの国に、友と呼べるような存在は居なかったのだと思い至り、シェイラが友達ができてはしゃいでいる様子を止めようとは思えなくなっていた。だから、ミミールが泊まっていかないかと提案した時も、制限つきではあるものの、断ろうとは思えなかった。
(やはり、シェイラは笑っている方が良い)
ミミールと仲良く寝る前の女子会をやることになったと、戸惑いながら、それでもどこか嬉しそうに話すシェイラに、ボクは間違っていなかったのだと安堵する。
「そ、それでは、ちょっとミミールのところに行ってきますねっ」
頬を染め、そわそわとしながらミミールの元へと向かうシェイラ。その背中をボクは見送ろうとして――――。
「待ってくれないかなぁ?」
ゾワリと背筋が凍りつく感覚に、ボクとシェイラは同時に振り返る。
そこに居たのは、黒目黒髪の少年。あどけない顔立ちでニコニコと笑いながら佇む彼は、しかし、すさまじく禍々しい魔力を放っていた。そう、それは……。
「悪魔……」
間違えるはずがない。ここまで禍々しい魔力を、ただの人が持ちうるはずもないのだ。
(甘く、見ていた……)
そいつの存在は、どう考えても最悪でしかなかった。本能的に分かってしまったのだ。この悪魔は、ボクよりも強いと。そして、このままでは、ナット領ごと、ボク達はこいつに殺されると。
(この魔力だ。すぐに、屋敷の者も気づいて……皆殺しにされかねない)
今はまだ、余裕からか手を出してくる様子のない悪魔。しかし、事態がいつ、どうなるか全くの不明だ。
(せめてっ、シェイラだけでもっ)
「ん? あぁ、警戒してるのか。まぁ、無理ないかもなー。でも、安心してくれ。とりあえず今は何もする気はないからさ。あっ、でも、逃げようとしたら別だけどな?」
シェイラだけでも、転移で逃がそうと思っていたボクは、退路を絶たれて拳を握る。
(落ち着け。今は、相手の目的を聞き出さなければ……)
「何が、目的だ?」
そう問いかければ、悪魔はニヤリと笑った。
乱入者ありっ!
いやぁ、あの悪魔が登場しちゃいましたのですよっ。
それでは、また!




