第九十話 初めての
ブックマークや感想をありがとうございます。
今回、シェイラちゃん、ちょっぴり喜んでますよ。
それでは、どうぞ!
(そういえば……利害関係なしに友達を作るのは初めてですね)
レイリン王国では、いかにして情報網を築き上げ、それを有効活用するかに重きを置いていたため、友人関係もそれに基づいたものだった。必然的に、そこにあるのは上辺だけの笑み。『友達』と言いながら、少しでもつまずけば、それを笑って切り捨ててくるような人達ばかり。私は、家の地位が高いこともあり、どちらかというと媚びられる側ではあったが、それでも、お姉様の失踪の際に、私の『友達』は全員離れた。
(彼女は、そういった者とは違う、のでしょうね)
趣味や、このナット領のこと、王都のお勧めの店の話なんかを展開してくる彼女には、こちらを笑ってやろうなんていう魂胆はまるで見えない。恐らく、彼女は私にとって、初めて、純粋に『友達』と言える人となる。
(ふふっ、何だか嬉しいですね)
本当の友達ができるというのは、こんなにも嬉しいものだったのかと思いながら、私は充実した時間を過ごした。
「シェイラ、ぜひっ、今日は泊まっていってくださいっ! 娘のナナも喜びますわっ」
「それは……」
母親であるミミールのミニチュア版にしか見えない姿のナナとも仲良くなり、遊び倒した一日。本音を言うのであれば、私ももっと色々と話をしたい。そう思うのだが、悪魔のことを考えると、迂闊な行動は取れない。
そっとアルムの方を窺えば、アルムは眉間にシワを寄せている。
(やっぱり、無理ですよね……)
私が残れば、必然的にアルムも残ることとなる。そうすれば、公務も遅れるわけで、忙しいアルムを束縛することはできない。
(残念だけど、また次の機会にしてもらいましょう)
そうして、断りを入れるために口を開きかけると、その前にアルムが話し出す。
「すまないが、事情があってボク達は今、離れるわけにはいかない。明日の朝一番には帰らなくてはならないが、それでも良いか?」
てっきり、断りを入れるのだと思っていた私は、そんなアルムの言葉に目をしばたたかせる。
「もちろんですっ! ふふっ、そうですよねっ。離れたくないってことですよねっ。うふふふっ、シェイラっ、詳しい話は後でみっちり聞かせてもらいますわよっ」
何か勘違いしてくれたミミールの言葉に、なぜか、背筋が寒くなる。
(これ……この前のお姉様達と同じ……?)
また、根掘り葉掘り聞かれるのではないかという予感に、私は早まったと思うものの、時、既に遅し。すぐに、晩餐の用意もできるといって案内してくれるミミールに、私は声をかけることはできなかった。
いやぁ、シェイラちゃん、初の純粋なお友達にウキウキワクワク……で、根掘り葉掘りの恐怖が再び!?
それでは、また!




