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第八十九話 友達

ブックマークや感想をありがとうございます。


今、更新を忘れていたことに気づいて、慌てて更新です。


それでは、どうぞ!

「はるばる、ようこそお越しくださいました。竜王陛下、寵妃様」



 十人程の使用人に出迎えられ、急いできたのであろう青いドレスをまとった女性、ミミールにも出迎えられ、私達はナット領領主館を訪れていた。



「さぁ、こちらへ」


「っ、奥様、案内は私めどもの仕事ですぞ?」


「良いのよっ。今日は、わたくしが案内しますわ」


「……承知致しました」



 銀の長い髪に、緑の瞳を持つ大人しそうな雰囲気のミミールは、その見た目とは異なり、どうも活発な性格のようだった。



「ここは、代々のナット領主が残してきた貴重な調度品を飾る場所……でしたが、今はそれらは売り払って、孤児院の子供達の作品が並んでおりますわっ。これなんか、わたくしを描いたのだそうですわよっ。似ていますわよねっ」



 そこに描かれていたのは、かろうじて髪の色と目の色が一致しているだけの絵。しかし、それでも幸せそうに笑う彼女の顔に、嘘は見当たらない。見れば、珍妙な……ごほん、数々の力作達が、絵として、粘土として、木工作品として飾られている。それは、本来の領主館ではあり得ないものだったが、ここ、ナットにおいては、これが正しい姿のように思えてしまう。


 かつて案内されたことのある応接室へと通されると、そこは、やはり調度品がわりに力作達が並び、随分と雰囲気が異なっていた。席に着けばすかさず紅茶がミミール自らの手で用意される。



(そういえば、この国ではもてなす側の主が紅茶を淹れるのでしたね)



 私は、最近ようやく、ベラから六十点台をもらえるようになったところで、及第点にはまだ遠い。私がお茶会を主催する日は、まだまだ先になりそうだ。



「先の件につきましては、心より、感謝申し上げます。わたくし達を、ナットをお救いくださり、ありがとうございましたっ」



 紅茶に口をつけて、それを置けば、ミミールは深く、深く、頭を下げる。



「頭を上げよ。感謝するのであれば、お前達を受け入れてくれた領民にこそ、だ」


「それはもちろんでございます。しかしながら、竜王陛下にも、寵妃様にも、助けられたことは事実でございます。本当に、ありがとうございました」



 明るく活発な性格に見えた彼女は、真面目でもあるらしい。真剣に感謝を述べるその様は、とても好感が持てる。



「特にっ、寵妃様が仕掛けた罠のお話を聞いた時は、胸がすく思いでしたわっ。それに、あの男も引っ掛かったと思えば……ふ、ふふふふふっ」


(く、黒いオーラが出てます!?)



 あの男というのは、恐らく、前領主のことだろう。まぁ、自分達を売り払った男のことなので、憎くないなんてことはないだろうが、これは、かなり鬱憤が溜まっていたのだと思われる。



「寵妃様っ、本当に、感謝していますわっ」



 キラッキラとした目を向けられて、私は、つい先日のファンクラブの様相を思い出して身震いする。



(こ、これは、先手を打つべきですねっ)



 もし、彼女がファンクラブの存在を知れば、加入しかねない。これ以上、そんな集団が膨れ上がるのはごめんだとばかりに、私は口を開く。



「では、私と友達になってくださいませんか?」



 そう尋ねれば、ミミールはその瞳の輝きをさらに増して返事をする。



「もちろんですっ!」



 どうやら、私はこの国で、初めて友達を得たようだった。

さぁ、シェイラちゃん、初のお友達っ!


……ミミールさんがファンクラブに入る日は近そうですが……。


それでは、また!

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