第八十六話 拷問?
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今回は……ある意味恐怖の回。
それでは、どうぞ!
「うーん、何とかなりそうですね」
護衛を引き連れてバルファ商会の副会長とその妹を見た私は、彼らにかけられている魔法を見て、そう判断する。ちなみに、本人達は猿轡をされ、ちょっとやそっとでは動きそうにない石造りの椅子にがっちりと固定されている状態だ。
「時間はかかりますが、さっさと終わらせてしまいましょう。あなたは、アルムに報告をお願いします。私は、魔法を解いてから戻ると」
「ハッ!」
五人もつけられた護衛のうちの一人にそう告げると、彼はすぐに報告へと走る。
「さて、やりますか」
久々に、手応えのありそうな魔法を相手に、私は少しワクワクしながら解除していく。
「ふむふむ、これはこう通さないと自爆しますね。あっ、こっちに触れたら発狂ですか。むむっ、手が込んでいます」
拘束された副会長に近づいて魔法を解いているのだが、その副会長はどんどん顔を青ざめさせていく。
「あらら、激痛が走る罠もありますね。……ん? いえ、違いますね。ここは通らないと解除できそうにありません」
直後、副会長の凄まじい悲鳴が響き渡るが、私としては対象が動かないでいてくれればそれで良い。例え、私についてきていた護衛達が顔を引きつらせていようと関係ない。
「んー、こっちはくすぐったくなるのと……反対は痒くなるの……どちらかは確実に通らなきゃですね。さて、どちらが良いか……」
「んーっ! んんーっ!!」
激痛から解放された副会長が何かを呻いているものの、私はどちらがより安全かしか考えていない。
「……笑い死んでもらっては困りますし、痒い方でいきましょう」
その後、副会長は激しく痙攣したり、ブルブル震えたり、ボロボロと涙を流して何かを懇願していたりしていたらしいが、私はとにかく魔法の解除に集中していてそちらへ意識を配る余裕などなかった。そして……。
「よしっ、終わりました! 解除完了です!」
そう言って顔を上げると、そこには白目を剥いて痙攣する副会長が居た。後ろを振り返れば、護衛達はなぜか、一歩引いた距離で、直立不動の体勢を必死にとろうとしながら震えている。
「? どうしましたか?」
「「「「「いえっ、何でもありませんっ!!!」」」」」
青い顔で声を張り上げる彼らに疑問を抱きながらも、私の視線は次の対象へと移る。
「では、続けて彼女のほうも解除してしまいましょう」
「んぅぅぅうっ!!」
まだ何もしていないにもかかわらず、悲鳴を上げる彼女に首をかしげながら、私はその前にと、護衛の方へと向き直る。
「そうでした。アルムに解除ができたことを伝えてきてくださいませんか?」
「「「「「はいっ!」」」」」
その途端、護衛達は全員が動こうとして……互いにそれに気づき、顔を見合わせる。
「「「「「ジャンケンポンッ、アイコデショッ、アイコデショッ、アイコデショッ」」」」」
そして、突然始まったじゃんけん大会。一つの歓声と四つの嘆きの声が響いたところで、私は、もう一つの魔法の解除に取りかかるのだった。
いやぁ、シェイラちゃん、容赦ないですねぇ。
そして、護衛の方々、ビビり過ぎ(笑)
それでは、また!




