第八十五話 二人の悪魔
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その報せが届いたのは、必然だったのだろう。
「バルファ商会の会長が口を割りました。召喚された悪魔は、全部で三体。目的は、それぞれで願ったため、不明とのことです」
アルムと一緒に、幸せなような、恥ずかしいような、何とも言えない甘い一時を、紅茶をお供にして過ごしていたところにもたらされた報告。
報告者であるギースを見れば、すまなさそうに頭を下げられる。
(もう、気にしていませんのに)
ギースに、悪魔に乗っ取られていた時の記憶はない。しかし、悪魔に乗っ取られてどんな行動をしたのかは、調べるなりなんなりしていたらしく、ギースは私を見る度に頭を下げるようになっていた。しかし、今はそれどころでもない。
「三体……位階は分かっているのか?」
「俺に取りついていた悪魔以外は不明です。ちなみに、あの悪魔は第二階級だったと」
「そうか」
「不明、というのは、彼らが口を割らない、ということですか?」
バルファ商会の会長、副会長、そして、彼らの妹がそれぞれ召喚主らしいことは判明したわけなのだが、その三人が、ギースの拷問に耐えられるとは到底思えない。そうなると、考えられるのは一つだけ。
「悪魔に、契約内容などを話せないよう、魔法を施されましたか」
その推測に、ギースは『そうです』と答える。それならば、いくら拷問を行おうとも意味はないのだろう。そして、ギースに憑いていた悪魔の情報のみが分かった原因は、悪魔が消滅し、魔法の効果が切れたからだと思われる。
「引き続き、魔法の解除に努めはしますが……正直、未知の魔法を使われているため、解除は難航しそうです」
「そうか」
難しい顔で考え込むアルム。その頭に、どんな考えが巡っているのかは分からないが、国を、そして私を守るための、最善を考えてくれている。
「未知の魔法、ですか……私が見てみるのは構いませんか?」
「護衛をつけた状態なら構わないが、どうするつもりだ?」
考え込んでいたアルムは、顔を上げて、私の目をしっかりと見てくる。
(っ、ま、まだ、恥ずかしいですね)
そっと視線を逸らしながらも、私は自分の考えを口にしてみる。
「わ、私の得意分野は、諜報です。潜入のために身を隠す手段も、情報を手にするためのピッキングや罠の解除も、また、相手を罠に嵌めたりすることもお手のものです」
もちろん、私がじきじきに出向いて情報収集することは少ない。しかし、それらの技術は、お姉様をも凌駕すると自負している。
「で、ですから、罠の解除には、呪いなどの解除も含まれるわけでして……少しは、力になれないかと」
尻すぼみになりながら言い切ると、チラリと見えたアルムは目を見開いていた。
「そう、なのか? しかし、シェイラ自身にかけられたあの魔法は……」
「あれは、そもそも魔法にかかったことに気づくのが遅れたため、自力で解ける段階を逸脱してしまいまして……そうでなければ、自力で解けたと思います」
ついでに言うなら、あの頃は精神的に不安定だったのも原因だろう。そうでなければ、魔法がかけられたことにすら気づかないなんて失態は犯さない。
「なら、護衛を連れて見てくると良い。もし、何もできなかったとしても、抱え込む必要はないからな?」
「はいっ! では、行って参ります!」
アルムの許可が下りたと分かった瞬間、私はそそくさと退出する。それが、アルムと一緒に居る気恥ずかしさから逃れたかったからなのか、アルムに頼られて嬉しかったからなのかは、自分でも分からない。
(必ず、解いてみせますっ!)
ただ、私は今、やる気に満ち溢れていたのだった。
シェイラちゃん、張り切りモードです。
うん、可愛い。
それでは、また!




